気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、人間活動と温室効果ガス排出量の増加および気温の上昇の因果関係は「明白」としています。特に輸送セクターは、人間活動によるグローバルの温室効果ガス排出量において、発電に次いで2番目に大きな割合を占めています。

 輸送関連の排出量を減らすには、電気自動車(EV)、特にゼロエミッション技術を使用したバッテリー式電気自動車(BEV)などの大掛かりな導入が鍵となります。

急拡大するEVの市場シェア

 各国政府や企業による気候変動関連の排出量削減目標達成に向けた取り組みを背景に、EVの導入が加速しています。グローバルでは、2021年のEV販売台数は650万台と、年間自動車総販売台数の9%弱となっています。

 ガソリンなどを燃料に用いる内燃機関(ICE)車に比べてEVのシェアは依然として小さいですが、2020年のEV販売台数330万台、2019年の230万台から見ると、2021年は飛躍的な伸びを記録しました。2022年1月のEV販売台数は2021年1月比で、中国では122%増、米国では94%増など、勢いは衰えを見せていません。

 2030年までにEVの普及率は36%に達し、1.4兆ドルのビジネスチャンスになると業界では予測しています。こうした予測の裏付けとなっているのが、EV普及に向け積極さを増す政策動向です。

 135カ国以上が経済全体でのネットゼロエミッション(温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いて合計を実質的にゼロにする)目標を掲げており、その多くが2050年またはそれ以前に達成を目指しています。

 さらに、20カ国以上が今後20年以内に自動車の電動化率100%の販売目標を掲げています。ノルウェーの目標は最も野心的で、2025年までにゼロエミッション車販売100%を目指すとしています。

バッテリー式電気自動車が乗用車のEV販売を席巻

 2021年のEV販売台数のうち、ハイブリッドEVが約28%、水素燃料電池自動車(FCEV)が1%未満である一方で、バッテリー式電気自動車が71%を占めており、乗用車のEVでは明らかにBEVが選ばれていることがわかります。

 2022年3月時点で、全世界では数百車種のBEVが販売されています。さらに、いくつかのOEM(相手先商標製品製造会社)はBEVの提供を大幅に増やすことを計画しており、今後10年間で100をはるかに超える新車種が市場に投入される予定です。

 例えば2022年3月に、起亜自動車は2023年から年間2車種以上のBEVを発売すると発表しました。また、現代自動車は2030年までにBEVを17車種導入する計画を発表しています。