この12月末、私は中長期的に見ても、短期的に見ても米国株投資の大きなチャンスと考えています。

まず中長期的観点からですが、通常、株式投資に好環境なのは大きく以下の3点を満たしている時だと思っています。
第一に市場が怖がっている時。これについては異論の余地は無いと思います。2012年12月31日をもって、ここ10年近く続いてきたブッシュ減税が失効します。加えて去年、アメリカの債務が法定上限に達した際に超党派で合意された強制歳出削減が発動する、いわゆる「財政の崖」からアメリカ経済が転げ落ち始めるまであと4日しかありません。市場を怖がらせるには十分の材料でしょう。
第二に、中央銀行が緩和姿勢である時です。これについても異論の余地はないでしょう。FRBは世界に先駆けて真っ先に量的金融緩和に踏み切ったほか、金融危機時から株式相場が2倍になっても全く手を緩める気配はありません。「住宅市場が回復して、元に戻らない事が十分確認できるまで」と、歴史的にも極めて株式相場に優しい政策を貫いてくれています。
第三に、株式のバリュエーションが低い事です。アメリカの主要株式指数であるS&P500指数採用企業で見ると、2013年予想ベースの株価収益倍率は13倍台に過ぎず、配当利回りは2.25%と、少なくとも過去50年間では初めて10年物国債の利回りを上回っています。

株式というのは永久証券ですから、本来長期的観点から投資するべきものだと思っています。しかし市場には流動性を供給してくれる短期の投資家もたくさん参加しています。そして相場はそれら短期投資家のモメンタムによって大きく上下するわけですが、中長期の観点から投資を始めるにあたっては、少なくとも上記の3点をクリアしている現在、大きな損失を被る事はないでしょう。

そしてこの12月末、このような中長期的観点に加えて、短期的観点からも米国株投資のチャンスとなっている要因がいくつか挙げられます。

第一に、1月効果です。アメリカで個人所得税の会計年度は12月末に終了しますが、それまでに含み損を確定すれば3000ドルまでは通常所得から控除できるほか、キャピタルゲインと相殺できる事から、含み益が出ている銘柄に対しても、含み損が出ている銘柄に対しても、年末までに売り圧力が膨らみやすい傾向があります。しかし年が明ければ一転、そのような売り圧力が退きます。

第二に、オバマ再選と共に、来年から特に富裕層に対してはキャピタルゲイン税率上昇が確実になった事で、今年中に低税率のメリットを享受しようという動きが出ていると見られます。実際、今年アメリカの株式相場が調整局面に入ったのは9月半ば以降ですが、これはロムニー氏に致命傷となった「47%失言」が明らかになったタイミングです。投資家のキャピタルゲイン上昇に備えた動きは、既にそこから始まっていたと見て良いでしょう。しかしこのような売り圧力も、年が明ければ消失します。

第三に、財政の崖問題です。年末まであと4日となっている今になってもまだ解決の糸口が見えないのは確かに不安材料ですが、逆に1月29日の一般教書演説までにまだ何の合意もなされていないというのは考え難いと思います。やはり現在市場のコンセンサスとなっている1月初旬~中旬の暫定合意というのは妥当なラインであり、これだけ市場が怖がっている以上、合意は株式相場上昇の大きなカタリストになるでしょう。また現在、前面には出てきていませんが、交渉が進むに従って両党とも支持している法人税減税が具体化し、株式相場のサポート要因になると考えられます。

このように中長期的要因も短期的要因も米国株投資の好機である事を示唆している中、それではどのような銘柄に注目すれば良いのでしょうか?

まず、よりキャピタルゲインの低税率のメリットを受けているのはこれまでの株価上昇率が大きかった銘柄。一方、配当税率はキャピタルゲイン税率よりも高くなる可能性があるので除外。また負債比率の大きい企業は、もともと支払利息の損金算入で既にメリットを受けているため、相対的に法人税引き下げのメリットは小さい。このような考えのもと、S&P500指数採用銘柄の中から、ここ数年間の株価上昇率が大きく、配当利回りが低く、負債比率が低い、という条件でスクリーニングした結果、抽出されたのが以下の銘柄群です(時価総額の大きい順)。

  • アップル(AAPL)
  • ビザ(V)
  • マスターカード(MA)
  • スターバックス(SBUX)
  • CFインダストリーズ(CF)
  • ダラーツリー(DLTR)

さてどうなるか?

皆様、良いお年をお迎え下さい!

(2012年12月27日記)