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山中教授のノーベル賞受賞と「競争」
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

山中教授のノーベル賞受賞と「競争」

2012/10/23
山中教授のノーベル賞受賞、本当に嬉しいですね! 2年ほど前のNHKスペシャルだったと思いますが、山中教授がインタビューの中で次のように述べておられたのを覚えています。
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山中教授のノーベル賞受賞、本当に嬉しいですね! 2年ほど前のNHKスペシャルだったと思いますが、山中教授がインタビューの中で次のように述べておられたのを覚えています。
「数年前であれば、マラソンに例えるなら我々の研究ははるか後続を引き離していた。しかし今は、振り返ればすぐの所に競争相手が追い上げている状況。競争は我々にとってストレスではあるが、この研究が実用に移され、一刻も早く患者の方々が救われるようになるために必要だ。」

競争というのは多くの人にとってストレスです。競争を通じて勝つ者もいれば、負ける者も出てきます。人間というのは本来、リスクを回避したい(Risk Adverse)という性質を持っていますから、かなりの確率で勝つ事が分かっていない限り、出来れば競争は避けたいというのが人情でしょう。しかし好むと好まざるとに拘わらず、世界は資本主義を中心に動いていて、リスクを取った者、競争を勝ち抜いた者にご褒美が与えられる仕組みになっているのです。

アメリカで金融危機が深刻化した時、資本主義の終焉を予言したり、期待する論調をよく見たり聞いたりする機会がありました。しかしそれでもまだ何故、世界は今も資本主義を中心に動いているのか? それは人間が本来ストレスを回避したいという性質を持つ中、資本主義は競争を生み出すのに最も有効なシステムであるからでしょう。では何故、人間は競争をしなければならないのか。上記、山中教授がとても分かりやすい例で説明して下さっている通りです。

私は毎年、1月下旬の火曜日夜に行われる大統領の一般教書演説をとても楽しみにしています。昨年の一般教書演説でオバマ大統領は「競争」(Compete, Competition, Race)という言葉を20回以上使用、翌日の主要紙の一面には“U.S. Must Compete”(アメリカは競争しなければならない)という見出しがズラリと並びました。「競争」という言葉を多用していたものの、国民の潜在能力に訴える事によって必要以上にストレスを感じさせないよう、上手く工夫がなされている演説でした。

アメリカだけではありません。ヨーロッパも昨年のユーロ圏サミットにおいて「競争合意」の成立を目指しています。アジア新興国の工業が日本の水準にどんどん迫りつつある状況は最近始まった話ではありません。好むと好まざるにかかわらず、意識しているしていないに拘わらず、我々は常に世界との競争にさらされていると言っても過言ではないでしょう。

上記の山中教授の他にも、日本が誇れるものの多くは、厳しい競争にさらされている人や企業ばかりです。イチロー選手をはじめとする日本人メジャーリーガーやサッカー日本代表は日々戦いの連続ですし、トヨタや本田、キヤノンなど、長年厳しい国際競争にさらされている企業は時価総額でも上位を占めています。金融当局が欧米並みの対応をしてくれていたら、これら企業は世界でもっと有利に競争を勝ち抜いている事でしょう。また私は日本人の勤勉さや日本料理の美味しさは世界でもトップレベルだと思いますので、今後ますます世界での評価が高まっていくと考えています。

資産デフレが金融危機につながり、財政危機へと発展するのは古今東西見られるパターンです。むしろ景気回復という出口に向けて、必ず通らなければならないトンネルとも言えるでしょう。そして同時に、この時期にクローズアップされるのが格差の問題です。しかし所得を再分配する事が財政危機の解決になるでしょうか? 財政を再建しようと思えば、リスクを取って、競争に勝ち抜いて、経済を成長させてくれる人を優遇して、少しづつでも全体のパイが大きくなりやすい環境を整えるべきではないでしょうか?外交を有利に進めようと思えば、防衛を強化しようと思えば、セーフティネットを充実させようと思えば、失業者を減らそうと思えば、全体のパイが大きくなる環境を整える事が先決ではないでしょうか?

現在、世界各国が同じような問題を抱えていますが、近々その政治的対応が決まる局面がやってきます。アメリカは2週間後、大統領選挙でその答えを出そうとしていますし、日本でも「近いうちに」問われる事になっています。「ストレスは伴ってもいい」「環境を整えてくれるだけでいい」このような選択が出来るかどうかによって、トンネルを抜け出せる時期は大きく変わってくるでしょう。

(2012年10月22日記)

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