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日本にとって本当のリスク:円安
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

日本にとって本当のリスク:円安

2011/11/11
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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先月、テレビ東京「MプラスEx」に出演させていただく機会がありました。滅多にお邪魔できない番組でもあり、中長期的観点から今後の投資についてお話させていただいたつもりです。番組の時間枠に入りきらなかった内容も含めて、以下ご紹介したいと思います。

アメリカ経済は大まかに見ると10年の景気サイクルで動いています。一番分かりやすいのは非農業部門雇用者数の増減で見た雇用情勢です。当然の事ながら景気の良い時は雇用が増加し、景気の悪い時は雇用が減少します。アメリカの雇用情勢はこの上下動を約10年のサイクルで繰り返しているのが分かります。

アメリカ経済が10年サイクルで上下する中、概ねその半分(5年)は景気の拡大期であり、残り半分は景気の収縮期です。歴史的にアメリカは景気の悪い時には金利を引き下げて=ドルを下落させて景気を浮揚させる傾向があります。なので、これまでドル・円は一度下落を始めると概ね5年間は下落し続ける傾向があります。これまで講演等で、「トレーディングされる分には構わないが、寝る前にはドル売り・円買いポジションを残す事」「この間は為替介入などなっても効果は無い」と度々申し上げてきたのはこのためです。

これは単なるサイクルだけではなく、日本とアメリカで中央銀行の使命が異なる事からも説明が付きます。日本銀行はその使命として「物価の安定」(※下落ではない)が課されていますが、アメリカの中央銀行であるFRBには「物価の安定」に加えて「雇用の最大化」が課せられています。景気の悪い時に金利を下げたり、ドルを供給したりして雇用を回復させようとするのは中央銀行の義務でもあるのです。アメリカの雇用情勢が悪い時にドル・円が下落するのは、両国の中央銀行の使命の違いを考えれば当然とも言えます。

さて最近再び円高・ドル安がニュースを賑わせていますが、私は来年の今頃もまだ円高で騒いでいるような事はないと思っています。むしろ円安が始まっている可能性の方が高いでしょう。というのは2007年7月に始まった円高・ドル安は既に4年3ヶ月続いており、既に終盤に差し掛かっていると言えるからです。また信じられない事に、これだけ景気が悪い時に日本では増税が予定されています。これは日本の景気にとって大きなマイナスになるでしょう。一方でアメリカの雇用情勢は厳しい状況が続いているものの徐々に改善の兆しも見えてきています。もちろんこの先70円台前半をトライするような場面は十分有り得るでしょうが、その後はドル高・円安方向の可能性の方が高いと考えています。

このような中、日本に居る人はこれまでの投資スタンスを今一度考え直す必要があると思います。というのは、日本は資源に恵まれない国であり、本当のリスクは円安にあるからです。例えばドル・円が80円から120円に上昇すると、これまで80円で買えた物が120円でしか買えないという状態になります。日本は生活必需品(食品・エネルギー等)の多くを輸入に頼っているため、ある意味、円高よりも深刻なリスクと言えます。このリスクをヘッジするには、資産の一部を円以外で保有して購買力を確保しておく必要があります。現在のような、既に終盤に差し掛かっていると見られる円高局面は、むしろそのようなアクションを起こすチャンスとも言えます。

私はその投資先として、アメリカ株はその有力候補だと考えています。アメリカの主要株価指数であるS&P500指数は、1999年以来大きな上下動を繰り返してきたものの、結局は当時と同じ1200近辺です。そして株価収益率を見ると当時の30倍弱に対して、今は12倍にまで低下しています。さらにこの間の円高を勘案すると、日本の投資家にとっては更に割安になっているという見方も出来ます。

ただ割安だからと言ってすぐに上昇する訳ではなく、長期で考える事が必要です。というのは、割安にはアメリカの高齢化と税制が関係していると見られるからです。アメリカでは59.5歳から無税で退職積立金を引き出す事ができます。アメリカの人は金融資産の役40%を株式で運用しており、しかもベビーブーマーの退職時期に入ってきている事から、この世代による株売り圧力の影響は無視できません。実際、ここ10数年の株価収益率の低下と、退職世代の人口増加との関係には強い相関関係が見られます。

この退職世代の人口増加はまだ数年続くので、株価収益率の低下もまだ数年続く可能性が高いという事になります。しかしその後低下は止まります。即ちアメリカ株式投資において注意しなければならないのは、昔のように、短期間で株価収益率が大きくなって株価が上昇するというような事を期待してはいけないという事、そして市場全体の株価収益率低下を補って余りあるような好業績企業に投資するべき、という事です。

そのような観点から注目すべきセクターは、第一に好業績で割安が目立ってきているハイテクセクター、第二に欧州危機による懸念から、中長期的観点から見れば恐らく売られ過ぎの領域に入っていると見られる金融セクターだと見ています。中長期観点からこのようなセクターへの投資は、円安とも相俟って、良好なリターンをもたらしてくれると考えています。

(2011年10月24日テレビ東京「MプラスEx」より)

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