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日本脱出政策
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

日本脱出政策

2011/7/22
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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これは7月9日大阪での楽天証券12周年記念セミナーでお話させていただいた内容の一部です。

「リスクを取る事の大切さ」についてお話させていただきたいと思います。2008年9月に起こったリーマンショック、何故あんな世界経済を一気に冷え込ませる大問題に発展したかはご存知でしょうか? リーマンが破綻した直後、世界最大の保険会社AIGがすぐに危機に陥りました。AIGは生命保険や損害保険に加え、金融の保険とも言えるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の売り手となっていたのです。要するに、A証券やB銀行が債務不履行を起こすと、巨額の保険金を支払わないといけない立場にあったのです。AIGが危機に陥ると色んな人や会社が加入している保険が支払われなくなるかもしれない、このような連想がパニックに発展したのです。

皆さんはどうして保険に加入するのでしょうか? 一家の大黒柱が亡くなった時家族が困らないように、自動車事故を起こしてしまっても賠償できるように、地震に見舞われても生活を再建できるように、要するに様々なリスクから身を守るためだと思います。月々保険料を支払って保険に加入する事によってそのようなリスクをヘッジしているのです。しかしもし、その保険会社が万一の時にも保険金を支払えない、と分かったらどうなるでしょう。皆さんは一家の大黒柱が亡くなった時に備えて、自動車事故の賠償に備えて、地震に備えて、大金を貯めておく必要に迫られます。すると消費や投資に回せたはずのお金を貯蓄に回さざるを得なくなります。もし世界中で皆が同じような行動を取ったら貯蓄率が上昇、世界経済は一気にリセッション入りしてしまいます。これがリーマンショックが一気に世界経済を冷え込ませた要因です。逆に言えば、それらのリスクを一手に引き受けていた主体というのは、経済の成長において、極めて重要な役割を果たしていたという事です。

このような事が起こった時、どのような政策が取られるべきなのでしょうか? これだけ世界中でリスク回避傾向が顕著となり貯蓄率が上昇する中、それでも消費や投資をしてくれる人を優遇しなければなりません。民間の消費や投資だけで足りないならば、代わりに政府がその役割を果たすべきなのです。そしてアメリカ政府はその通りの政策を実行しました。2009年2月に成立したオバマ景気対策においては減税と共に公共投資を中心とする大規模な財政支出が決定されました。さらにアメリカの中央銀行FRBは実質的に現金(貯蓄)の価値を低下させるQE1、QE2(第一弾、第二弾量的金融緩和)によって貯蓄率上昇を防ぐ努力をしてきたのです。アメリカは100年に一度と言われる金融危機に対して、極めて妥当で当然の対応をする事によってこの危機を乗り越えてきたと言えます。

一方、日本の場合はどうでしょう? 東北の大地震は日本にとって100年に一度では済まないくらいの危機です。地震は原発、電力不足、食料汚染問題等に発展、政治の不安定とも相俟って、既に多くの外資系企業が海外に拠点を移す措置を取っています。もしかしたら又地震が起こるかもしれない、その時に備えておかなければならない、という考えから、本来消費や投資に回すはずだったお金を貯蓄に回している人も多いでしょう。去年でさえ就職内定率が60%台だったのに、企業を取り巻く先行き不透明感から、今年就職活動をしないといけない大学生はさらに苦労を強いられている事と思います。本来、それでも日本に残って大学生を採用してくれる企業、そしてこのようなリスクを覚悟の上で日本に投資してくれる企業を優遇すべき所、つい先日まで日本政府は法人税減税を見送る方針を固めていたのです。

アメリカの中央銀行FRBのような緩和策を取ることもないので、円高が進行するのは当然、まるで現金(貯蓄)保有を優遇しているような金融政策です。その上財政面からは消費税増税。これでは貯蓄優遇政策=反景気対策としか言いようがありません。

このような一連の日本の経済政策の共通項は「日本脱出政策」だという事です。世界でダントツトップの実効法人税率33.5%を誇る日本で、さらにビジネスを営む事が難しくなる中、円が史上最高値となれば、当然企業は海外に拠点を移すでしょうし、逆に海外企業が日本に拠点を持ってくる事はなくなるでしょう。日本で消費が不利となり、しかも円高となれば当然、日本製品よりも海外製品を購入する事になるでしょうし、反対に日本製品は売れにくくなるでしょう。先月、ニューヨーク郊外に日本から「不動産購入ツアー」が訪れました。日本に愛想を尽かした投資資金も海外に流出して始めているのかもしれません。

リスクが高まっている時は、リスクを取る主体を優遇しなければ、経済は回っていきません。だからこそ、好むと好まざるとに拘わらず、世界のあちこちでリスクを取る主体を優遇する措置が取られているのです。復興増税は正に、このように世界では常識のメカニズムが理解されていない真逆の政策としか言いようがありません。増税して増収を狙っているつもりが、実は納税する主体は既に日本を脱出した後だった、となってしまってからでは遅いのです。

(2011年7月20日記)

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