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2010年後半に向けての米国経済・株式相場の見通し(1)
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

2010年後半に向けての米国経済・株式相場の見通し(1)

2010/7/20
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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先日の東京・大阪でのセミナーには非常に多くの方にお越しいただき有難うございました。セミナー後、今年は他の沢山の方が抽選に漏れ、お越しになれなかったと伺いました。そこでお越しになれなかった方のために、数回にわたって講演の要点を記したいと思いますので、参考にしていただければと思います。

最初に皆さんに認識いただかなければならないのは、大きな視点で申し上げると、世界経済は先進国を中心に、いまだ資産デフレの真っ只中にあるという現実です。そしてアメリカの場合、それは既に2000年から始まっていて、今も継続中だという事です。実際、世界的に株価は年初来マイナスの国が殆どです。ここで今一度、この2000年から始まっている資産デフレの流れを振り返ってみたいと思います。

スライド:資産デフレの流れ

2000年3月 ITバブルピーク
2001年9月 同時多発テロ
2002年7月 不正会計問題
2003年3月 イラク戦争、住宅バブルの始まり
2006年8月 住宅バブルピーク
2007年7月 金融危機の始まり
2008年9月 リーマンショック

2000年3月から2002年10月にかけて、ナスダック総合指数は79%下落しました。アメリカの株式市場でこれほどの大暴落があったのは、1929年以来の事です。他にも同時多発テロ、不正会計問題、イラク戦争など、アメリカ経済に次々と襲いかかるショックを和らげるため、当時のブッシュ大統領は持ち家促進策を積極的に推進しました。同時に日本が大量のドル買い・円売り介入を実施(私には愚策としか思えませんでしたが)、そのドルで中国も一緒になって米国債を大量購入したものだから、「景気は回復しているのに長期金利が上昇しない」という現象が起こり、住宅バブルに発展していったのです。

ご存知の通り、株式の投資家というのは、もともとリスクを覚悟していて、殆どの人は借金で株式投資をする事はありません。従って資産バブルが株式だけの時はまだマシでした。しかし資産バブルが住宅となると話は違います。住宅は銀行貸出の担保をなり得るし、アメリカでは住宅保有者の約70%が住宅ローンを借りています。従って住宅バブルが崩壊すると、金融機関の不良債権問題が深刻化する。金融機関が貸し出せなくなると経済全体が弱ってしまうという、悪循環に陥ってしまうのです。

ここで資産バブル崩壊の中でも、特に2007年7月以降住宅バブル崩壊に伴って起こってきた出来事をクローズアップして振り返ってみたいと思います。レバレッジの高い(自己資本に対して借入れの大きい)順番に破綻の危機が訪れていた事がご覧いただけます。

スライド:バブル崩壊の順序、倍率はレバレッジ

100倍 モノライン(金融保証会社) 2007年末~危機到来
50-60倍 政府系住宅金融機関 2008年9月初実質破綻
30-40倍 証券会社 リーマン2008年9月中破綻
10-20倍 銀行 2008年10月~危機到来、自動車大手 2009年5-6月破綻

銀行という公的インフラは潰すわけにいかない、という事でさすがに10-20倍になったところで政府が救済に乗り出しました。しかし普通に考えれば、リスクが民間の金融機関から政府にシフトしただけで、もともとの資産デフレが収まらない限り、問題が解決するはずはありません。唯一問題が解決するのは、政府に財政の余裕がたっぷりある時でしょうが、世界中で財政の余裕がたっぷりある国など殆どありません。当然、今度は政府部門のリスクが顕在化するはずで、それが今年に入ってクローズアップされてきている、ギリシャ問題やソブリン・リスクです。

その資産デフレ、これまでどのように株式相場に反映されているかをご覧いただきたいと思います。アメリカの主要株式指数であるS&P500指数で見てみると、資産デフレというのは、緩やかな長期にわたる右肩下がりのトレンドとして表れています。これに対して、いわゆる「リーマンショック」というのはかなり急激な短期の株価下落として表れています。重要なのは、この資産デフレがもたらしている緩やかな長期の右肩下がりのトレンドと、「リーマンショック」による短期の株価急落は、性質が全く違う、という事です。というのは「リーマンショック」というのは「大き過ぎて潰せない、の前提が崩れたショック」ですから、「大き過ぎてもやっぱり潰さない」という事になれば、相場は元に戻るはずです(2009年3月、米財務省は大手19行は守ると宣言)。即ち、この分はV字型に戻るはずでした。ちょうど一年前の、この両国国技館での講演で「ダウは11,000ドルを目指す」(当時ダウは8,100ドル)と申し上げ、その通りになりましたが、このように考えていたので自然な成り行きだったと思います(このように、私はいつも弱気な訳ではありませんので念の為)。一方で注意しなければならないのは、この「リーマンショック」とは別の、資産デフレの長く緩やかに続く右肩下がりのトレンドは、今も継続中だという事です。

リーマンショック後、アメリカ政府はありとあらゆる対策を打ちましたが、その殆どが問題を先送りするだけの政策でした(当コラム2009年4月以降参照)。金融機関に対する時価会計凍結の緊急措置、すぐに財政支出を要しない「保証」の乱発、住宅ローン保有者に対する条件変更プログラム(半年以内に半数以上が債務再不履行)等々。アメリカの金融システムが麻痺している状況で、資産デフレまで解決するような余裕が無かったのは理解できます。しかしその分、資産デフレがもたらす長期にわたる緩やかな右肩下がりのトレンドが再び表れるのは時間の問題でした。「リーマンショック後」のV字は、ダウで見て、2008年9月12日リーマンショック前夜の11,400ドルに対して、今年4月26日に11,300ドルまで回復した事で「完了」です。という事は、ここからは資産デフレがもたらす緩やかな右肩下がりが再開するはずです。資産デフレが続く限りは……

(2010年7月15日記、次号に続く)

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