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格付けの不思議
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

格付けの不思議

2010/6/4
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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約1年前、一連の金融危機の原因を探るため、アメリカ議会は金融危機調査委員会を設置する事を決めました。そして今日、その調査の一環として、格付け会社ムーディーズのCEOと著名投資家のウォーレン・バフェット氏が、格付け会社の役割についての質問を受けるため公聴会に召喚されました。

以前このコラムでも書かせていただきましたが、そもそも今回の住宅バブルの始まりは2003-4年以降の日本や中国による米国債の大量購入だったと思います。日本や中国が大量に米国債を購入するものだから、必要以上に長期金利が低下する。リスクを取れない多くの機関投資家は、トリプルAの中でも少しでも利回りの良い債券を求める。このニーズを満たすために開発されたのが住宅ローン証券等から組成されたCDO(債務担保証券)です。 トリプルAなのに国債よりも利回りが高いという事で飛ぶように売れ、売れるのでさらに組成、という循環に陥っていったのです(「トリプルA債券、実はジャンク債」参照)。いくらでも貸したいというものだから過剰な貸出が起こり、住宅価格が上昇していったというバブルの典型です。

この過程では様々な業者がこの構図に入っていましたが、既にバブル崩壊の過程で、その多くが何らかの形で責任を負わされました。多くの住宅ローン業者が破綻に追いやられ、モノライン(金融保証会社)も破綻スレスレの状態になりました。ベアスターンズ、リーマン、政府系住宅金融機関など、証券会社や銀行もその度合いに応じて責任を取らされました。その中でまだ十分責任を取っていないと見られているのが、直接・間接的に公的救済を受けた大手金融機関と格付け会社でしょう。格付け会社が最高格付けであるトリプルAを付与するというのは、投資家に信用を供与していたのと同義です。その意味では銀行等が行っていた貸出と何ら変わりはありません。そのくせ貸出が焦げ付いたからといって、これまで大した責任を取る必要がなかったわけです。

格付け会社の言い分は明らかです。「自分達は債券に対する意見を述べているだけだ」。一方で、利益相反の疑いが濃厚な状況証拠はかなり残っています。第一に、格付け料を支払うのは債券を発行する企業であり、投資家ではありません。格付け会社にとってのお客さんは発行体であり、そもそも発行体に不利となる厳しい格付けをするのは難しい立場にあります。第二に、格付け会社は民間企業であり、利潤の最大化という大きな目的があります。特に格付け料が社債の何倍もするCDOのような商品の格付けに力を入れるインセンティブは十分にあったと思われます。恐らく投資家がこのような格付け会社の利益相反を法的に立証していくのはかなり難しいでしょう。しかし上記の状況証拠からするとビジネスを優先するあまり、多かれ少なかれ格付けが甘くなっていたのは明らかだと思います。

それはその後トリプルAを付与された多くのCDOが比較的短期間の間に格下げになっていった事実からも推測できます。また近年起こってきた事を思い出してみて下さい。もともとモノラインもトリプルAを付与されていましたし、2008年9月に実質破綻した政府系住宅金融機関もAIGもトリプルAでした。このような事象が続いた事で、世界の投資家は既に、格付けはアテにしてはいけないものだと十分過ぎるほど学習していなければならないはずです。

にも拘わらず、欧州でギリシャ国債が格下げされて、それにいちいち市場が大きくショックを受けるのは一体何なのでしょうか?スペイン国債に至っては既にシングルA以下の市場価格で取引されているにも拘わらず、格付け会社フィッチがトリプルAからダブルAに下げただけで、欧州のみならず米国株式まで急落するのは一体何なのでしょうか?答えは、ここ数年の出来事から学習していない、格付けを盲信している投資家が、まだまだ驚くほど多いからだとしか考えられません。

金融危機調査委員会や証券取引委員会が今後、格付け会社の責任を法的にどう問えるのかは分かりません。また今後格付け会社に対する監督・規制を強化しようとしても、格付け会社が民間企業である限り、利益相反を完全に排除する事は不可能でしょう。結局の所格付けを巡る最大の問題は、格付けを盲信している投資家が、この世の中には多過ぎるという事だと思います。この状況が改善されない限り、将来予想される、アメリカ国債がトリプルAを失う時のショックは計り知れないものとなりかねません。

(2010年6月2日記)

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