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ギリシャ問題は2008年アメリカのデジャ・ヴ
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

ギリシャ問題は2008年アメリカのデジャ・ヴ

2010/5/6
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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政府というオオカミ少年は、市場を甘く見過ぎている~2008年3月の証券会社ベアースターンズ実質破綻後、私は次々と政府が出してくる声明や対策を見る度にそう感じていたのを思い出します。アメリカの資産を代表する住宅の価格は既に2006年8月以降下落の一途を辿っており、レバレッジ(自己資本に対する借入比率)の高い順番に危機が訪れるのは明らかでした。これは流動性の危機ではありません。自己資本が毀損、又は債務超過に陥っているのですから、問題を解決しようと思ったら資本を注入するしかないのです。流動性を供給してその場だけしのいでも、資産価格の下落が続く限り、いずれまた危機が到来するはずです。しかし政府は大袈裟に見える声明と流動性供給で、何度も市場を沈静化する事に腐心していたのでした。

2008年7月、政府系住宅金融機関に危機が訪れた際にアメリカ政府が金融支援を表明しましたが、結局2カ月後に実質破綻。ベアスターンズ実質破綻後、証券会社に対してあらゆる証券を担保に流動性が供給されるようになりましたが、結局同じく9月にリーマン破綻に至りました。流動性供給が効かないのは当然です。問題は流動性だったのではなくて、資産価格の下落によって自己資本が毀損していたからです。その証拠に、アメリカの金融危機が回復に向かい始めたのは2008年末にかけて次々と大手銀行に公的資金を注入、そして2009年3月、実質的に財務省が大手19行の自己資本を保証する声明を行ったのがきっかけでした。市場は口先の声明や流動性供給だけで騙されるものではありません。実際に資本を投入して、そして今後も必要に応じて投入されると確認できて初めて沈静化するものなのです。

最近のギリシャに対するEUの対応を見ていると、まさしく2008年アメリカのデジャ・ヴを見ているようです。EUやIMFは当初450億ユーロの金融支援で市場を落ち着かせようとしたものの、到底足りない事を市場に見透かされ、結局約3倍に増額する事になりました。そして金融支援が決定すればあたかもそれで問題が解決したかのように、声明を発表。直後こそポジティブな反応が見られましたが、市場はそんなに甘いものではありません。何故なら、ギリシャの根本的な問題が流動性ではない事を市場は知っているからです。

ギリシャのような事態は、ユーロ発足当時から指摘されていた問題です。加盟国が危機に陥った際にどうするか、問題のない時にこそしっかり話し合って、政治的に枠組みを形成しておくべきだったのです。しかしユーロは見切り発車、これまで問題が顕在化しなかったのは単にラッキーだっただけです。これは正に、アメリカで政府系住宅金融機関が危機に陥った時にどうするかを決めずに放置し、住宅価格が上昇し続けてきた約35年がたまたまラッキーだったというのと同じです。解決策を決めないまま問題が顕在化したので、これまでラッキーだった分のツケを払わないといけない、今はそういう状況です。

今年、次々と国債の満期が到来するギリシャにとって、取り急ぎ流動性も問題の一つでしょう。しかし根本的に、何故流動性が問題になるような信用不安が起きているかというと、民間企業で自己資本に相当する、財政に健全化の見通しが立たないからです。ギリシャで学校の先生や病院の看護婦、空港の職員がストライキに入っている最近の映像を見れば、とても金融支援だけでこの問題が乗り切れるとは思えません。究極的には金融支援ではなく、資本を注入するような事をやらないと市場は落ち着かないのではないでしょうか。しかし当然の事ながら、ユーロ加盟国から、ギリシャという他国に対して資本を注入するようなコンセンサスが得られるわけはありません。そもそもユーロ発足当時から、そのような義務はないのですから。むしろユーロというシステム自体の弱点を突く形で「次のギリシャ」に飛び火する可能性の方が高いのではないでしょうか。

このような問題が起こった時に典型的なのは、第一に、政府は口先で市場にメッセージを発し問題を沈静化させようとします。第二に、出来るだけ金(財政)のかからない解決策を模索します。今回のギリシャのケースでは当初発表された450億ユーロの金融支援がこれに当たります。第三に、市場にそれだと不十分と見透かされ、大幅増額を余儀なくされます。アメリカで政府系住宅金融機関が実質破綻する2カ月前、ポールソン前財務長官はこう発言しました。「(政府が)バズーカ砲(巨額の金融支援)を持っている事を市場が知れば、結局はバズーカ砲を使わなくて済むものだ」。しかし2008年アメリカの場合、結局第四は公的資金注入でした。

厄介なのはこの間、政府というオオカミ少年によって、あたかも問題が解決したかと市場が錯覚させられる場面が何度も訪れる事です。このような時に必要なのは、根本的な問題が解決したか、しっかり見極める事なのです。その点でギリシャ問題は、正に2008年アメリカのデジャ・ヴを見ているようです。

(2010年5月4日記)

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