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金融は経済の先行指標
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

金融は経済の先行指標

2010/4/12
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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私はしばしば経済関連のメディアに出演させていただく事がありますが、エコノミストでも経済評論家でもなく、本来専門は金融です。ただ、メディア関連の方からは金融を映像や音声にして伝えるのは非常に難しいとよく聞きます。従って経済番組と言っても、自ずから内容は産業中心になってしまうのだそうです。

例えば2009年の5-6月、GMやクライスラーが破綻して、日本でも大騒ぎになりました。しかしGMやクライスラーの破綻については、既に前年2008年7月大阪での楽天証券講演会で申し上げていた通り、金融市場の状況を見る限り時間の問題と考えていました。我々にとっては、リーマンは証券取引委員会に決算資料を提出した2008年4月時点で、既に粉飾もどきの決算処理が明らかでしたし、政府系住宅金融機関も財務的には破綻秒読みという感じでした。従って2008年後半にかけて金融システムが傷む可能性は高く、金融依存度の極めて高いGMやクライスラーの破綻も時間の問題だろうと申し上げたのでした。なので、それから10カ月も経って実際にGMとクライスラーが破綻に至り、世の中が大騒ぎになっているのはかえって不思議な感じがしたのを覚えています。

また、例えばアメリカで金融危機が始まった2007年7月以降のマネーサプライ(M1)の伸びを見ていると、2009年末までに中国は60%近く、アメリカもイギリスも20%以上、ユーロ圏も20%近く増やしてきています。一方で日本はというとほぼ0%。これでは円高が進行したり、不況や失業が日本に輸出されてきてしまうのは当たり前です。実際その間、日米のM1伸び率の差は約24%で、これはドル・円の下落率約23%にほぼ一致しています。金融の動向を見ていれば、一定期間後、日本経済にどのような影響が出るかは明らかであったはずです。

最近では2009年3月以降FRBが実施してきた長期国債や住宅ローン証券等の買取は極めて効果的でした。短期金利をいくら下げても長期金利が付いてきてくれない状況に業を煮やし、長期金利を無理矢理下げる非伝統的手段に打って出たのです。オバマ景気対策とのタイミングも良く、ここまでの景気回復を演出する原動力になってきた事は確かでしょう。

それではこの先の経済を占う、現在の金融の状況はどうでしょうか? FRBが発表する直近の貸出金額を見てみると、実はアメリカの銀行は2009年末までは、ほぼ2008年9月のリーマンショック直前と同水準の貸出規模を保ってきた事が分かります。しかしそれが今年に入って、消費者ローン、ビジネスローン、住宅ローン、商業不動産ローンなど、ほぼ全ての項目で貸出が減少してきているのです。とりわけ顕著なのはそれまで好調であった消費者ローン、住宅ローン、商業不動産ローンの減少です。
金融危機直後は実行する余裕のなかったバランスシート調整が、アメリカのほぼ全ての主体で始まっている事は中長期的には必要で、健全な事でしょう。しかし経済に対する影響を考えれば痛みなしとはいかないはずです。折しも昨年10月の長期国債に続き、先月末をもってFRBによる住宅ローン証券等の買取も終了したばかりです。

当面短期金利はほぼゼロに据え置かれるでしょうから、短期金利連動で借りて投資できる、例えば商品市場や株式市場に短期性の資金が流入しやすい状況は続くでしょう。しかし住宅ローンや商業不動産ローン、企業の設備投資資金など中長期性の資金は、いざという時すぐに返せる性質のものではありません。株式市場でも、長期金利が4%台に乗せてくると、バリュエーションの観点から中長期性の資金は入りにくくなってくるはずです。それでなくとも今年に入って減少している貸出は、ここに来て上昇を始めた長期金利の上昇によってさらに抑制される事になるでしょう。そして現在のこのような金融の状況は、将来の経済状況の先行指標になっているはずです。

(2010年4月8日記)

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