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逆コナンドラムの襲来
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

逆コナンドラムの襲来

2010/1/28
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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リーマン・ショックが実態経済に悪影響を及ぼし始めた時、日本の政治家を中心に、「アメリカ発の金融危機」という言葉が頻繁に使われていました。「アメリカ発の」という部分が強調され、あたかも日本の為政者には全く責任がないかのように聞こえたのは私だけでしょうか。アメリカの大手証券会社であるリーマンの破綻という、分かりやすいイベントが引き金になったのは確かだと思います。しかしそもそもリーマン破綻に至った経緯を見る限り、むしろ日本は今回の危機に至る過程で大きな役割を果たしていたと考えています。

2005年2月、グリーンスパンFRB議長は議会証言の中で、「(2004年6月以降)FF金利を1.50%も引上げているのに、長期金利が低下しているのは謎(コナンドラム)だ」と発言しました。この証言の中で「コナンドラム」という言葉が使われたのは一回だけでしたが、たちまち金融界で広く使われるに至りました。

2000年から2003年のアメリカ経済というのは、次から次に襲ってくる逆風に立ち向かわなければならない時期でした。2000年に「ドットコム」バブル崩壊、2001年に同時多発テロ、2002年は不正会計問題、2003年イラク攻撃開始と、不透明感要因ばかり。FRBはこのような不透明要因を相殺するため、FF金利を1%にまで引き下げていたのです。2004年になって景気回復軌道が確かなものになり始め、FRBは順次金利を引上げていきました。にもかかわらず長期金利が上がらない、このような中で飛び出したのが上記「コナンドラム」発言です。

NY債券市場に携わっていた人なら衆知の事実ですが、当時は日本と中国が大量に米国債を購入している時期でした。これによって長期金利が上がらなくなっていた事は2005年9月のFRBペーパーにも記されています。何の事はない、「コナンドラム」の解は、日本や中国による米国債の大量購入だったのです。

アメリカというのは歴史的に、景気が悪くなれば長期金利が低下、それによって住宅投資が刺激され、結果的に不況を抜け出し、逆に景気が良い時は長期金利が上昇して住宅投資が抑制され、バブル発生を防いできた国です。しかしグリーンスパン前FRB議長がコナンドラムと呼ぶほど、2004年以降は珍しい状況が起こってしまったのです。即ち景気が上向いているのに長期金利が上昇せず、従って住宅投資が抑制されずバブルが発生する……そしてその長期金利が上昇しない一つの要因が、30兆円とも40兆円とも言われる日本の為替介入(為替介入は愚策(2009年11月30日)参照)によってできたドル資金による大量の米国債購入だったのです。

景気が良いのに長期金利が上昇しないので、アメリカ人は喜んで住宅や自動車を購入する。日本政府の米国債購入が結果的にアメリカ国内でその何倍もの信用創造につながり、住宅ローン会社や銀行、証券会社、モノライン、自動車産業などのバブルを形成していったのでしょう(ちなみに私は当時、日本の巨額為替介入はアメリカの住宅バブルを生むと、数回にわたってテレビ東京の番組で警告していた事を申し添えておきます)。

金融市場では判断を誤った者に損失が発生するのがルールです。住宅ローン会社や銀行、証券会社、モノラインには大きな損失が発生しましたし、リーマンをはじめとした金融機関、GM等など数々の会社が破綻に追いやられました。愚策である為替介入によって日本が20兆円以上の損失を被っているのも当然の結果でしょう。問題はこれから何が起こるか、です。

私は「逆コナンドラム」が起こると考えています。即ち、景気が悪くなっても長期金利が下がらない、従って住宅投資が刺激されない、という状態です。何故長期金利が下がりにくくなるか、それは米国債の質がこれまでとは異なったものになっており、それによってこれまでのような米国債の買い手が見付からないだろうからです。

アメリカの巨大住宅金融機関であるファニーメイとフレディーマックは2008年9月をもって国の管理下に置かれる事になりました。アメリカ政府は当初、両社に対して上限2000億ドルまでの資本注入を表明していましたが、それでは足りないと見込んだのでしょう。2009年末(こっそりと)この上限を撤廃しました。実質的に、今後アメリカ政府(延いては米国債)は住宅値下がりに伴う損失を無制限に負担すると言っているようなものです。このようなリスクを感じ取っての事でしょう。2004年には発行される米国債のほぼ100%を購入していた外国人が、2009年9月末時点では31%しか購入しなくなっているのです。

それでもまだ長期金利が低位安定しているのは、2009年3月以降、FRBが米国債と住宅ローンを初めとする証券化証券を大量に購入しているからでしょう。しかしFRBによる米国債の購入は2009年10月末で終了しましたし、今日のFOMC(連邦公開市場委員会)後の声明で、住宅ローン等証券の購入が予定通り3月末で終了する事が確認されました。先週末、株式相場は年初来マイナスに転じました。景気が悪くなってもそれに伴って長期金利が低下しない、従って金融システムの最大の担保である住宅市場が低迷する、「逆コナンドラム」のリスクを、市場が既に織り込み始めているように見えます。

堀古 英司
Horiko Capital Management LLC

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