お金と投資をもっと身近に
facebook twitter
米大手金融機関はなぜ嫌われるのか?
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

米大手金融機関はなぜ嫌われるのか?

2010/1/18
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
facebook twitter メールで送る 印刷

「ゴールドマンの従業員、優先対象者よりも先にH1N1ワクチン接種」
「ゴールドマンのハイチ義援金、ボーナス支給額の2万分の1」
「ゴールドマンのCEO、自らの仕事を『神の仕事』と発言」
アメリカ国民の米大手金融機関に対する怒りはとどまるところを知りません。上記のような、ゴールドマンからすれば反論の余地が十分にあるようなニュースが連日ヘッドラインに並ぶ有様です。このような国民の不満を和らげるためでしょう。今年中間選挙を控えたオバマ政権は先週末、米大手金融機関、特にゴールドマンやモルガンスタンレーなど大手証券会社に標的を絞った「金融危機責任料」の導入を発表しました。

おことわりしておきたいのですが、私はゴールドマンには沢山知人がいます。その全員がビジネスにおいても、人間的にも極めて優れた人達です。絶対に優先対象者よりも先にワクチンを受けるような人達ではないし、恐らくハイチの地震後は真っ先に個人で義援金を送っていると思います。むしろ当の従業員でさえ、金融危機後に起こっている一連の問題については経営陣に対して批判を抱いているのです。そしてその批判は当然のものだと思います。

アメリカというのは恐らく、世界一資本主義が徹底している国でしょう。リスクを覚悟で成功を手にした者にはご褒美が与えられ、失敗してしまった者は退場を余儀なくされます(但し一旦退場した者にもチャンスは与えられます)。アメリカ国民はずっとこのルールを当然の如く受け入れてきて、だからこそ「アメリカン・ドリーム」を探求し続けられているのです。

しかし金融危機を前後して、このルールを破ってしまった会社があります。それが米大手金融機関、とりわけ証券会社でした。それは2008年9月15日のリーマン破綻後数日のどさくさの中起こりました。翌月初のニューヨーク・タイムズ紙によるとゴールドマンやモルガンスタンレーのCEOは財務省とFRBに助けを請いに行ったといいます。その結果、取引相手であった保険会社AIGを政府が救済した事によって兆円単位の損失を免れ、空売り規制によって株価の下落を止めてもらい、あっという間に銀行持ち株会社への移行を認められる事によって銀行同様の流動性を確保し、預金保険公社が保証する債券の発行を許され、公的資金注入によって過小資本の問題を一時的に解決し、「100年に一度の金融危機」を乗り越える事ができたのです。

アメリカ国民は一部の人を除き、大手証券会社の「儲け過ぎ」に怒っているのではないのです。その証拠に金融危機がぼっ発する前、リスクを覚悟で成功を手にしている時は、むしろ尊敬の目で見られていたはずです。問題は、リスクが裏目に出て、本来は退場しなければならない所、卑怯な手を使ってルール違反をしてしまった事なのです。アメリカの人はアンフェアな事を非常に嫌います。大手証券会社に批判が集中している理由は正にこの「ルール違反」なのです。当事者が「儲け過ぎ」を妬んでいると考えていたら、いつまでたってもアメリカ国民の怒りが収まる事はないでしょう。

資本主義というのは富を得た者がどんどん有利になってしまいがちのシステムです。乗り遅れた者が立場を逆転しようとしても、今回の金融危機のような出来事がなければ極めて困難です。大手証券会社のCEOは議会証言で「我々が救済されていなければ金融システムは崩壊し、国民の生活はもっと悪くなっていたはずだ」といった内容の発言をしています。しかし恐らく多くのアメリカ国民は、「我々の生活は悪くなったかもしれないが、ルールに則って立場が逆転する事の方が重要」と考えている事だと思います。根本から考え方が異なっているのです。

失業率が10%に上る中、恐らくその失業者がこれまで払ってきた税金を含めた公的資金で大手証券会社が救済され、そして一年も経たないうちに巨額のボーナス支給を再開したのには私も驚きました。そもそも「得た保険料をボーナス払いに回してしまって、災害が起きた時には支払う保険金(資本)がなかった」のが問題なのですから、今後は反省して、ボーナス払いを止めて資本を増強するものだと思っていました。少なくとも、アメリカ国民の怒りが収まるまでは……巨額のボーナス支給を再開し、今後も過小資本を継続するのだったら、全く反省がないと言わざるを得ません。

国民の怒りはオバマ大統領の支持率低下にもつながり、目玉であった医療保険改革が難航する一つの要因にもなっています。中間選挙を控えて大手金融機関に対する風当たりはますます強まっていく事でしょう。実際、アメリカの主要株価指数は先週、15カ月ぶりの高値を付けましたが、実は大手金融機関の株価は既に昨年8月から横ばい推移が続いています。以前、当コラムでも「米国株の天底形成には6カ月かかる」事をご紹介しましたが、そろそろそのタイミングにも差し掛かっているのです。

(2010年1月16日記)

【この記事に対するアンケート回答はこちらから】

トウシルのオススメ記事

▲トウシルトップページへ

 

つみたてNISA
人気記事ランキングTOP

 

このレポートについてご意見・ご感想をお聞かせください米大手金融機関はなぜ嫌われるのか?

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。

記事についてのアンケート回答確認

米大手金融機関はなぜ嫌われるのか?

今回のレポートはいかがでしたか?
コメント

 

 
フレッシャーズ

 
タイムトリップ
 

 

 
メールマガジン

直近1日の記事を配信します

配信:平日毎営業日配信
祝日・GW・夏季/冬季休暇 を除く

公式SNS

タイムリーな情報を
ゲットできます

配信:記事配信時 随時
facebookおよびTwitterには一部配信しない記事もあります

TOP
×
トウシル メールマガジン および SNSについて
メールマガジン 申込み

トウシルメールマガジンではレポートやコンテンツ等、直近1日の記事をお知らせします。
本メールは配信希望のお客様に平日毎日お届けしております。
リアルタイムでの情報取得は、公式SNS(facebook、twitter)もあわせてご利用ください。

  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。
メールマガジン サンプル
メールマガジンサンプル
  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。