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リーマン破綻1周年
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

リーマン破綻1周年

2009/9/15
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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リーマン・ブラザーズが破綻してから今日で丁度1年となります。皆さんの生活にとって経済は非常に重要な要素だと思いますが、リーマン・ショックが実体経済に影響を及ぼし始めたのは少なくとも数ヵ月経ってからだったと思います。経済の先行きを占う上で、金融が如何に重要であるかを証明する出来事だったのではないでしょうか。

リーマン・ショックは一言で言えば、「大き過ぎて潰せない、という前提が崩れたショック」だと思います。その証拠に、リーマン破綻後、AIG、大手証券会社、ワコビア、シティ、バンカメと、大きな金融機関に限って連鎖倒産の危機にさらされました。約6ヵ月後、財務省が大手19行を対象としたストレステストを実施し、実質的に「大き過ぎる銀行は潰さない」という姿勢を表明したので、3月に一旦このショックは峠を越したのです。

リーマン破綻からしばらく経って、「アメリカの行き過ぎた市場主義が原因」という意見が出てくるようになりました。私は逆だと思います。何故なら純粋な市場主義の下では、企業のリスクは自己責任であり、「大き過ぎて潰せない」という概念は存在しません。大きな金融機関が政府が救うだろうという、市場主義を歪める期待が根付いてしまっていたからこそ、ショックとなって返ってきたのです。ですのでリーマン・ショックは正に、市場主義が徹底していなかったからこそ起こった問題だという認識が必要だと思います。

それでは今後、このような事態を防ぐにはどのようにすれば良いのでしょうか? 私は大きく2つあると思います。第一に、「大き過ぎて潰せない」金融機関を作らない事です。場合によっては大きくなり過ぎた金融機関を解体し、もしもの場合の影響を最小限に留められるようにすべきです。しかし、現在アメリカは逆の方向に向かっています。即ち、破綻する中小金融機関を大手金融機関が次々と吸収する動きとなっており、マグマが更に巨大化しつつあるように見えます。

第二に、資本を充実させる事です。資本を充実させれば、個別の金融機関の破綻はあっても、それが連鎖するのを防ぐ事ができます。我々の分析では、今後発生する不良債権とそれに伴う損失処理の必要額を考えれば、現在の自己資本規制を8%から15%や20%に引き上げても足りないくらいではないかと思います。しかしこの点についても現在、アメリカは逆の方向に向かってしまっています。大手金融機関の間では資本を充実させるどころか、公的資金を返済、巨額のボーナス支給を再開する動きが強まっています。議会を中心に、金融機関の報酬を規制する動きがありますが、私はそれよりも、今後発生が予想される不良債権額に鑑み、思い切って自己資本比率を引上げさせるべきだと思います。現在の大手金融機関の状況では、これによって結果的に公的資金を返済したり、ボーナスを支給したりする余裕は無くなる筈です。

リーマン・ショック後、ほぼ全ての大手金融機関が政府によって救済され学んだ筈が、殆ど反省もなく、徐々に元の木阿弥に戻りつつあります。このような状態では、「次の危機を待つのみ」という状態は続く事になるでしょう。但し大手19行を守るという前提の下なので、次の危機はリーマン・ショックとは異なる形態を取ると見られます。即ち大手19行に危機が発生した場合は、自ずから議会の承認が必要な巨額の公的資金の注入が必要となります。しかし大手金融機関が上記のような態度で、アメリカの一般国民、ないし議会が公的資金の拠出を承認するでしょうか? 現時点では可能性はほぼ皆無だと思います。その時金融市場はどうなるか…? TARP(不良資産救済プログラム)が当初否決され、ダウが777ドル下落した去年の9月末が思い出されます。

リーマン・ショックは非常に大きな痛みを伴いました。しかし、市場が送ってきたこのようなメッセージをアメリカは謙虚に受け止めなければならないのです。即ち、世界の国々がいくらでも国債を買ってくれ、それによってアメリカ国民がいくらでもお金を借りられる時代は終わったのです。市場はアメリカが、債務を適正水準に戻す事を求めているのです。家計は債務が適正水準に戻るまで消費も投資も増やす事はできません。企業は債務が適正水準に戻るまで雇用を増やす事はできないのです。ウォール街を含め、アメリカが市場のメッセージを謙虚に受け止め、将来に生かす事ができるようになるまで、市場は次々とメッセージを送り続けてくる事になるでしょう。

(2009年9月14日記)

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