「一年間に870ドルの利益をもたらす投資対象に貴方はいくら払いますか?この投資対象を保有し続ける限り、利益は今後年間平均約6-7%づつ増加していきます。但しこの利益は年によって上下する可能性があります。」
なかなか難しい問題だとは思います。年間6-7%づつ増加していくといっても、ある年はマイナスになったり、ある年は10%以上増加する事もあって、国債のように利益が保証されているわけではありません。利益の保証が最重要課題である人にとってはこのような投資対象は問題外かもしれません。しかし長期的に投資を考えられる方は、利益が年間平均約6-7%づつ増加してくれるのだったら短期的な利益の上下は我慢できる、という事になるでしょう。

世界中のあらゆる投資家が集まって、上記の問いに対して出している答えが今日のダウの終値、8,175ドルなのです。世界のトップレベルの競争力を誇る企業30社が集まり、870ドルの利益を出す投資対象に対して8,175ドルの値段が付いている。これが高いか安いかと言われれば、私には「極端に安い」という答えしか思い浮かびません。

アメリカの主要株価指数であるダウがこの状態ですから、個別銘柄ではさらに安い銘柄がぞろぞろころがっています。下記は我々が運用しているファンドで実際に投資している銘柄の例です。

  • 銘柄1. 保有現金一株当たり10ドル、負債ゼロ、予想一株利益1.5ドル、株価12ドル
  • 銘柄2. 保有現金一株当たり14ドル、負債ゼロ、一株キャッシュフロー7ドル、株価25ドル
  • 銘柄3. 一株利益2ドル、5年平均予想成長率20%、株価31ドル

10月は信用不安がクライマックスに達する形でダウは今日までで25%下落しています。一カ月もたたないうちにダウがこれだけ下落するのは極めて珍しい事です。投資信託や年金、ファンド等が更なる下落を防ぐため、追加証拠金を満たす為等の理由で現金化を余儀なくされているという、報道通りの事が起こっているのは事実でしょう。またこれまでの経験にない事が起こった事で投資家心理として、特に人間の感情の部分がいつもになく前面に出てきて、合理的でない行動、即ち「下がっているから売る」を後押ししているという面もあると思います。

しかし株式というのは単なる相場商品と違い、価値(バリュエーション)というものがあります。冒頭のように、XXXドル利益を生み出す投資対象にいくら支払いますか、という問題です。感情が前面に出てきて、「5,000ドル以上ビタ一文払わない」というのも一つの答えかもしれません。また価値とは関係なく、追加証拠金要求で、8,175ドルでも売らないといけないファンド等もあるでしょう。個人ベースでは、来月に迫った出費の予定があり、価格に関わりなく、株式は売却しなければならない、という人もいるでしょう。しかしこれらは長期的なリスクを取れない性質の資金であり、そもそも株式のような永久証券の投資向けの資金ではありません。

市場はまだまだ不安定な状態が続いています。しかし公的資金注入、銀行間取引の保証、連銀によるCP買取の開始、国際協調など、株式市場を取り巻く環境は一時よりもかなり改善している事は間違いありません。ファンダメンタルズやバリュエーションが改善していて、需給が悪化を続けているという現在の状況で、長期的にリスクを取れる投資家が圧倒的な有利に立てるのは当然の事だと思います。