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米財務・金融当局が「麻薬」に手を出した理由
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

米財務・金融当局が「麻薬」に手を出した理由

2008/9/22
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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先週に続き、今週もアメリカ金融市場にとっては歴史に残る一週間となりました。リーマンブラザーズの破綻はすぐに世界最大手の保険会社AIGの危機につながり、週末にかけては米証券取引委員会(SEC)が金融株799銘柄の空売り禁止を発表するに至りました。現在の金融市場を巡る環境はかなり異常な状態である事は確かです。しかしそれを何とか阻止しようと米財務・金融当局は「モラルハザード」と「空売り規制」という、2つの「麻薬」に手を出す事になってしまいました。

リーマンブラザーズの破綻が現実的になってきた9月初め、私が一番気になっていたのはCDS(クレジット・デフォルト・スワップ:倒産保険のようなもの)市場への影響でした。現在62兆ドルと言われる規模にまでCDS市場が拡大してから、初めて経験する大型金融機関の破綻です。リーマンCDSの売り手はもちろん、CDS市場全体の5%を取引していたリーマンがCDS取引を履行できないとなると、取引相手(カウンターパーティ)の連鎖倒産や巨額損失につながる可能性があったからです。リスクはもはやクレジットではなく、カウンターパーティ・リスクに発展しつつあったのです。

案の定、危機はすぐにCDS市場の大きなプレイヤーであったAIGに飛び火しました。今週水曜日までにCDS取引に関わる追加証拠金170億ドルを収めなければ破綻、という危機に追いやられました。今週月曜日時点でAIGと当局との話し合いは決裂していたようですが、火曜日になって突然再開、結局連銀が850億ドルに上る融資に応じる形で決着となりました。今年3月の証券会社ベアスターンズ破綻以降、あれだけ次の救済はない、モラルハザードを避ける、納税者の負担を最小限にとどめる、と強調してきた割には疑問の残る決着だったと言わざるを得ません。

さらに米証券取引委員会(SEC)は今後最長30日間、金融株799銘柄の空売り禁止という措置を取ってしまいました。空売り規制は直接需給に変化を与える事によって「一回だけの」価格変化をもたらす効果があります。しかし中長期的には流動性の減少という、市場に致命的な悪影響をもたらします。市場資本主義を尊重するアメリカがここまでやってしまった理由は何なのでしょうか?確かに前日、マケイン共和党大統領候補に「私が大統領になったらコックスSEC委員長をクビにする」と明言された事も大きかったのでしょう。しかし、私はもっと大きな理由があるような気がしてなりません。

一度は流れたAIG救済に関する会合は火曜日突然再開されました。SECが空売り規制を発表したのは平日の夜中です。しかも、いずれも市場資本主義を掲げるアメリカにとって中長期的には致命傷となる可能性のある「モラルハザード」と「空売り規制」です。普通に考えれば、それを犠牲にしてまで実施しなければならない、我々には知らされていない、何かとんでもない大きな危機が潜んでいたという事ではないでしょうか。実際18日は、これまで優良と考えられていた某大手金融機関が流動性危機に陥ったと聞いています。

「モラルハザード」と「空売り規制」という麻薬に手を付けてしまったアメリカの金融市場。空売り規制が期限を迎えると見られる10月半ば以降に正念場が訪れる可能性が高まっているように見えます。

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