株式投資に慣れている人は「空売り」を活用しよう

──まつのすけさんはいろいろなイベント投資をやっているわけですよね。それら1つ1つについては追ってお伺いしますが、日経平均株価の季節変動を利用した投資法について、もう少しお聞かせください。これは投資ビギナーにもオススメしますか?

 はい、もちろんです。たぶん日経平均株価に連動する投資信託などを持っている方の多くは、長期保有を前提としていると思います。でも、資産の一部については、半年ごとに買ったり売ったりするのも1つの方法ではないかと。

気になる値動きやピンとくる時期があれば、まずはエクセルにデータを打ち込んで、仮説を丹念に検証。無駄に終わった仮説も多々あるそうだが、仮説がズバリ当たって新法則が見つかるときも!
「今も複数の仮説を検証中です」

──そうしたほうが絶対にトクですか?

 いえ、絶対とは言えません。先ほども言ったように、過去18年間では2.75倍に増えましたが、これからも同じように増えるとは限りません。というのも、11月から4月は相場がいいと言っても、論理的根拠があるわけではないんです。なぜなのかは誰も説明することができない。この18年間に限って、たまたまそういう年が多かっただけかもしれません。だから、例えば全資産をこれに充てたりするのはリスクが大きい。でも、何分の1かならやってみる価値があると思います。

──でも、考えてみたら、もしこの投資法が「絶対」なら日本中の投資家がマネをしますよね。誰もが11月に買って4月に売るようになる(笑)。そうなったらこの投資法自体、成り立たないわけで、そういう意味では「絶対」でないからこそ、価値があると言えるんでしょうね。

 おっしゃる通りです。みんな根拠がはっきりしないことはやりたがらないものなんです。いくら過去のデータが示していても確信が得られないと躊躇してしまう。そういう人が抱きがちな心理的抵抗を乗り越えて稼ごうというのがイベント投資です。

──そういえば相場の悪い5月から10月はじっとしていたほうがよいとのことですが、この間、空売り(信用取引などを利用し、保有していない株を借りて売ること。株価が下がると予想できるときに「空売り」し、実際に株価が下落したところで買い戻すと利益を得られる)にトライするのもアリなのでは?

 季節特性ではその間日経平均は下がる傾向にあるので、空売りで利益を狙うという選択肢もあります。具体的には信用取引でETF(上場投資信託)などを信用売りする、先物取引でショートポジションを構築してロールオーバーするといった方法があります。ただし、金融政策、選挙、世界経済などで好材料が出た場合は季節特性を打ち破るので、リスク管理は重要です。また、保有株に対してヘッジをかける趣旨でショートを活用することもできます。インデックスに対して優位性がある売買手法を確立させれば、ロング・ショートによって相場動向に左右されずにリターンを得られるようになります。

──11月から4月までは保有し、5月から10月までは空売りをしたらかなり増やすことができそうですね。

 これも過去18年間で試算してみたのですが、なんと4.5倍に増えるという結果になりました。注意点としては、年によってバラつきがあり、11月~4月が軟調な年、5月~10月が堅調な年もある点です。したがって、必ず勝つというわけではありません。季節特性と同じパターンの値動きをしている年は強気になって投資金額を増やすといったポジション調整に使うのもいいでしょう。信用取引となるとビギナーの方にはちょっとハードルが高いかもしれませんが、ロング・ショートはいろんな場面で使えるので、いずれ経験を積んだらトライも検討してほしいですね。

──では、次回はこれ以外のイベント投資について伺います。

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