政府系住宅金融機関、ファニーメイ(FNM)とフレディーマック(FRE)のビジネスをご存じない方もいらっしゃると思いますので、一度おさらいをしておきたいと思います。政府系住宅金融機関のビジネスは大きく分けて2つ、ヘッジファンドとモノライン(債券保証)です。

第一にヘッジファンドの部分から。これら2社は市場から資金を調達したお金で住宅ローン担保証券に投資しています。ただ一つルールがあって、自己資本比率は2.5%以上ないといけないと定められています。例えば貴方が25万円持っていたとします。市場から最大975万円借りてきて、1000万円分の住宅ローン担保証券に投資しても良いという事です。ちなみに我々が運用しているヘッジファンドにおいては自己資本比率は66.7%(上記の例だと667万円)以上なければならない事になっています。即ち、平均的なヘッジファンドの、さらに数十分の一しか自己資本がないという、極めてリスクの高いビジネスなのです。保有証券の価値が2.5%下落するだけで債務超過に陥ってしまう事になります。

この状態で、さらに住宅ローン担保証券の保有を増やしたかったとします。例えば市場からさらに100万円調達してきて、その資金で住宅ローン担保証券を購入したとします。資産1100万円、負債1075万円、自己資本25万円になります。ところが自己資本を資産で割るとその比率は2.27%となり、法定自己資本比率2.5%を下回ってしまいます。そこで2.5%を下回らないよう、何か他のビジネスで利益を生んで自己資本を増加させなければなりません。普通の銀行であれば、投資信託の販売手数料とか、振込、ATM手数料で利益を上げる事ができますが、政府系住宅金融機関にはそのようなビジネスはありません。そこで第二のビジネスによって利益を補充しなければならないのです。

これが第二のモノラインの部分です。政府系住宅金融機関は民間で取引される住宅ローン担保証券を保証する事によって保証料を得ています。これは住宅ローンの質が高い事以外は サブプライム問題の本命は?:モノライン(3) (2007年12月26日)など、当コラムでも度々ご紹介してきたモノラインと同じビジネスです。住宅ローン担保証券の債務不履行が発生すれば、その支払いを肩代わりしなければなりません。住宅ローンの債務不履行が急上昇しているこのご時世に、です。

例えばファニーメイの例で示しますと、10年前、第一(ヘッジファンド)のビジネスが4800億ドルに対して第二(モノライン)のビジネスが6300億ドルでした。それが今は第一が7500億ドルに対して第二が2兆3000億ドルです。住宅ローン担保証券の保有が増加する中、それでも法定自己資本比率2.5%を維持しなければならないので、どんどん保証業務を増やしていかざるを得なかったという事でしょう。住宅の平均価格が15%下落し、債務不履行が急上昇する中、たった480億ドルの自己資本で2兆3000億ドル分の保証をしなければならないという状態になってしまっています。

今日、もう一社のフレディーマックの決算が発表されました。証券取引委員会に提出された報告書の中で、まだ実現していない保有証券の含み損が343億ドルあると記載されています。フレディーマックの自己資本は371億ドルなので、普通の銀行と同様に時価会計を採用すれば、法定自己資本(287億ドル)を大幅に下回ります。普通に考えれば、いつドクターストップがかかってもおかしくない状況にあるという事です。