※この記事は2018年5月21日に掲載されたものです。
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第3章 バブル崩壊は、投資タイミングのヒントになるか?
<第4話>予想する投資、しない投資。わたしができそうなこと
「でも先生、バブルで株価が高騰したら、そこで売っておけば儲かるわけですよね。なんとか、そろそろバブルが弾けそうだと、事前にわかる方法はないのですか?」
隆一はしつこく、先生なんだからそれぐらいわかるはずだろうと言いたげだ。
「私の部屋に水晶玉がありますか? 元FRB(米連邦準備制度理事会)議長のグリーンスパン氏もバブルは『何かのきっかけ』で弾けると言いましたが、いつ、何が、きっかけになるかは、事前には分からないとハッキリ言っています。いろいろ研究されていますが、あくまで市場参加者の行動予測なので、たとえAIが進歩しても、せいぜい『予想確率』が示される程度でしょうね」
「でも、先生、予想でも何か高い確率で分かれば、それをもとに行動すれば儲かるんじゃないか、と思うのです」
隆一は食い下がる。先生はひと呼吸置いてから、話し始めた。
「予想に頼りすぎた投資は、おすすめできませんね。むろん、『こうすれば高い確率で儲かる』という類いの説を書いた本はたくさんあります。でも、予想はあくまで予想です。「予想」は反対から読んだら「嘘よ(うそよ)」になります。仮に計算上90%の確率で儲かると示されても、自分が残りの10%に当たってしまい、大きな損を出したら意味がありません。たとえば、株価が上昇を続けているからと9回連続して10万円儲かっても、最後の1回で暴落に遭遇して100万円損したら、結局、トータルではマイナスです。それより、他の人がババ抜きをいつ止めるか、は事前にはわからない、と考えて慎重に行動する方が大きな損を抱えずにすみます。リスクに備えるとは、そういうことです」
「先生、そんなものですか。何か、ドカーンと大きく儲ける夢がないというか・・・」
夢から覚めたような目で隆一が訴えた。