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「5月に売ってどこかに行く」かどうかの判断
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

「5月に売ってどこかに行く」かどうかの判断

2017/4/14
ウォール街に「5月に売ってどこかへ行け」という格言があるのはご存知かと思います。アメリカでは納税者の殆どが確定申告をしますが、その作成過程で、非課税で退職金勘定に積み立てられる金額が決まります。
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ウォール街に「5月に売ってどこかへ行け」という格言があるのはご存知かと思います。アメリカでは納税者の殆どが確定申告をしますが、その作成過程で、非課税で退職金勘定に積み立てられる金額が決まります。そして今年はその提出期限が4月18日となっています。アメリカの人は退職金勘定の多くの部分を株式で運用するので、この時期から株式市場に資金が流入しやすくなる=需給が引き締まって株式相場が上昇しやすくなる、という訳です。この傾向は歴史的なデータからも明らかで、過去50年間でS&P500指数の月別上昇率を取ってみると、4月の上昇率が一番高くなっています。

ただこれは確定申告時期という季節要因によって出来た需給の歪みであり、ファンダメンタルズを反映したものではありません。5月に入ってもこの要因はある程度残るものの、この要因が剥落すると相場は調整局面に入る可能性が高くなります。この傾向も歴史的なデータから裏付けられていて、過去50年間で6月から9月にかけては、年間で最もパフォーマンスの悪い時期となっています。もちろん年によってはこのような需給を打ち消すような好材料や悪材料が出て、過去の平均通りにならないこともあります。ですので実際の相場予測に適用するにあたっては、絶対ではないけれども無視できない、程度に考えておくのが良いと思います。

そこで問題は、今年はどうなるのか、ということです。今年は3月末までにS&P500指数は既に5.5%の上昇となっています。これは年率に換算すると24%近い上昇率となります。大統領選挙の結果判明からだと10.4%上昇していますが、これも年率に換算すると25%近い上昇率となります。実は私はこの、やや速い上昇ペースを心地良いものとはとらえていません。というのは下記の通り過去50年間で、大統領選挙で勝利した初年度(11月から翌年10月)にS&P500指数が20%上昇して、4年後に勝った大統領(または同党の候補)はいないのです。

  • 1988年 ブッシュ(父)22.0%上昇 1992年敗北
  • 1996年 クリントン29.7%上昇 2000年敗北
  • 2012年 オバマ24.4%上昇 2016年敗北

これは感覚的にも分かりやすいと思います。人々の記憶はそれほど長続きするものではないので、政権としては4年後の選挙に勝とうと思えば、就任から3~4年目に景気や株価を持ち上げていきたいはずです。上記の確定申告という季節要因によって需給が歪むのと同じで、初年度から過剰な期待によって景気や株価が持ち上げられると、後になって息切れするのは目に見えているからです。実際、最近の大統領選挙で現職(または同党の候補)が負けた年は全て、S&P500指数の上昇率は10%以下にとどまっています。

  • 1992年 ブッシュ(父) 6.7%上昇
  • 2000年 クリントン 4.9%上昇
  • 2008年 ブッシュ 37.5%下落
  • 2016年 オバマ 2.3%上昇

私は、トランプ政権の経済関係閣僚は史上最高のメンバーだと思っているので、当然このような傾向も熟知していると思います。そして恐らく、これまでの速い株式上昇ペースを心地良いものと思っておらず、出来れば抑え気味に行きたい、そしてそのような方針を取っていくのではないかと考えています。具体的には、市場の期待が高くなり過ぎたら抑え、好材料のペースが速くなったと見れば遅らせ、更には目下の好景気や株価上昇という「糊しろ」があるうちに、悪材料を出しておこうという考えも視野に入ってくるのではないかと思います。穿った見方をすれば、オバマケア見直しが先送りになったり、税制改革が遅れたり、軍事的に強硬姿勢を取るというのも、その一環と考えることもできます。

4月第3週から本格化する米1-3月期決算はおよそ5年ぶりの高い増益率になる見通しです。確定申告期限という需給要因や、決算というファンダメルズ要因はいずれも株式相場のサポート材料です。もし4月、これらサポート材料に支えられて、この3月までと同様の速い上昇ペースが続くのであれば、私は「5月に売ってどこかへ行く」のが賢明だと考えています。というのはトランプ政権としては上記理由から、何らかの形で市場の過度な期待は抑えたいはずで、現状では株価が上がれば上がるほどその動機は強まっていくと考えられるからです。

一方で、これまでの季節的傾向に反し、4月や5月が調整色の強い展開となるようであれば、年後半に向けて再び期待が持てるので「5月に売ってどこかへ行く」のはもったいない、ということになります。4月相場は調整から始まっているので6月から早々と夏休み入りできる可能性は低そうですが、今後1-3月期決算があまりに良いものになり、それに市場が素直に反応していくようだと、今年に関しては「5月に売ってどこかに行く」ことも考え始めないといけなくなるでしょう。但しユナイテッド航空以外で。

(2017年4月13日記)

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