男女比率、少数民族、地域格差、平均世帯人数…

 14.1億人におけるその他、私が注目した動態を見ていきたいと思います。

 まず男女比較です。今回の調査を経て、男女の比率は51.24%:48.76%となりました。女性100人に対し、男性が105.1人という比率です。2010年時は男性が105.2人でしたから、ほとんど変わっていません。私自身中国の方々と付き合う中で感じますが、中国では、特に農村部や保守的な家庭において、男の子の誕生を強く望む傾向が見られるようです。

 ちなみに、2015年国勢調査によれば、日本では、総人口1億2,709万人のうち、男性が6,184万人、女性が6,525万人となり、女性100人に対し、男性が94.8人と、性別、比率から見ても、中国とちょうど真逆のような構造になっています。

 また、最近、新疆ウイグル自治区における人権問題といった文脈でも注目される、漢族と少数民族の関係について、漢族の全人口に占める割合が91.11%、少数民族が占める割合が8.89%となり、後者の比率が0.4%アップ。この10年で、漢族、少数民族の人口はそれぞれ4.93%、10.26%増えたとのこと。ちなみに、1982年の段階では、漢族の割合は93.32%でした。

 中国共産党は、少数民族の割合が増えていることを根拠に、民族の共存や融和を図り、多様性を重んじていると宣伝したいのでしょうが、西側諸国を中心に問題視している少数民族の信仰や人権に対する抑圧というのは、別次元の問題です。

 次に、地域別の動態について、2000年から2010年の間、中国では32の省・自治区・直轄市のうち、4つの省で人口が減りました。貴州省(49万人減)、重慶市(166万人減)、四川省(193万人減)、湖北省(227万人減)で、中西、内陸部に集中しています。それが、2010年から2020年の間では、6つの省・自治区で、人口が減る結果となりました。甘粛省(55万人減)、内モンゴル自治区(65万人減)、山西省(79万人減)、遼寧省(115万人減)、吉林省(377万人減)、黒竜江省(646万人減)です。

 直近で、人口減が最も激しいのが東北3省である現状は一目瞭然です。その前の10年では、この3省の人口が増えていた経緯を考えれば、なおさら深刻だといえるでしょう。2020年、東北3省の総人口は9,851万人ですが、この10年で1,100万人以上が減少したことになります。

 私自身、遼寧省の省都・瀋陽市で1年間仕事、生活をしたことがありますが、東北地方の都市インフラ、教育レベル、都市化率などは全国でも高いレベルを誇る一方、国が過剰生産能力の解消や緑化政策の推進などを掲げるなか、重工業などに依拠する形で発達してきた東北の産業は打撃を受けてきました。

 家庭では、政府機関や国有企業に就職することを良しとする考え方が支配的で、若者が率先して起業するような文化や雰囲気にも乏しいです。市場の活気や流動性に欠け、しかも冬は気温がマイナス20度、30度程度まで下がるという厳しい気候環境もあります。

 瀋陽で生活をしながら、「ここには人材の流出を促すすべての条件がそろっている」とすら感じたほどです。私は当時遼寧大学で国際関係を教えていたのですが、優秀だと感じた学生の多くが、北京、上海、南京、福建省、広東省などの大学院へ進学し、そこでの奮起を誓っていたように見受けられました。

 私は9年前に『脱・中国論:日本人が中国とうまく付き合うための56のテーゼ』(日経BP
社)
という本を出版したことがありますが、特にマーケットと付き合う上で、「中国」という目的語は禁物だと思っています。

 中国と一言で言っても、地域間ではギャップがあり、一括りにしてしまうのは判断を見誤る恐れがあります。遼寧省と広東省では気候も、人々の考え方も、商習慣も、そして首都・北京との関係性もかなり異なるのです。

 この意味で、東北3省で人口が激減している、その過程で、若い人材が南に向かっているという現象は、マーケットの動向を捉える上でも参考になるものです。

 ちなみに、東北3省において、65歳以上が占める割合は16.4%(2010年から7.3%増)と、全国平均(13.5%、4.7%増)よりもあからさまに高いことが分かります。

 もう一つ、私が注目したのが、平均世帯人数です。中国では現在、14.1億人の総人口に対し、約4.9億戸の世帯数があります。そして、平均世帯人数は2.62人で、2010年の3.10人から0.48人も減っています。2000年時は3.44人、1990年時は3.96人でした。世帯内の数が減っていけば、当然人々の、衣食住を含めた生活環境にも影響が生じるでしょう。例えば、住宅や家電といった分野へのニーズなどが挙げられます。