昨年、国内外で記録的な高値をつけた金相場に、引き続き注目が集まっている。世界的に蔓延する新型コロナウイルス、環境問題、米ドルを始めとした通貨の価値希薄化懸念…。様々な要因が金相場を取り巻くなか、個人投資家はどのように金に投資をしていくべきなのか。2021年2月17日、豊島逸夫事務所の豊島逸夫氏、三菱UFJ信託銀行で金ETF“金の果実”を担当する林恒氏、楽天証券経済研究所の吉田哲が対談を行った。
対談日2021年2月17日
対談のポイント
1.米10年債の利回り上昇。金利を生まない金はどう動く?
2.1.9兆ドルの追加経済対策、2兆ドルの財政出動で数十年ぶりのインフレ懸念!?
3.インフレのヘッジ(保険)としての金が存在感を増す
4.物価上昇は金価格を押し上げる要因になる
5.金価格は年末にかけて2,000ドルを突破する?
6.ドバイ・インド・中国で衰えない金の実需
7.金の下値の目途は、金鉱山の生産コストである1,200ドル
8.個人投資家にも手がけやすい金のETF(金の果実 証券コード:1540)
1.米10年債の利回り上昇。金利を生まない金はどう動く?
吉田:昨年夏、国内の金価格は40年ぶりの高値を更新し、NY金は2,000ドルを超えて史上最高値を更新しました。現在、NY金は1,800ドル前後と少し調整している状況です。豊島さんは、今後の金マーケットはどのように動くとお考えですか?
豊島氏:金は、金利を生まないというデメリットがあります。しかし、アメリカの実質金利がマイナスのいま、金利を生まない金の方がまだ高いという声もあるんです。これまではデメリットであったものが、ひっくり返ったということですよね。
米国の10年債利回り(名目金利)は1.4%台まで上がってきましたが、インフレ(物価上昇)を考慮した実質金利は、まだマイナスです。金利で資産を増やすのは難しい状況ですから、マネーが金やリスク資産に流れ込む状況は続いていると思います。
林氏:投資に慣れていない個人投資家は名目金利を鵜呑みにしてしまいがちですが、名目金利から物価上昇率を差し引いた実質金利を見ないと、本当のマーケット状況は把握できないということですね。
2.1.9兆ドルの追加経済対策、2兆ドルの財政出動で数十年ぶりのインフレ懸念!?
林氏:ちなみに米国の10年債利回りが上がっているのは、どういう理由だと思われますか?
豊島氏:アメリカの政策金利はFRB(米連邦準備制度理事会)がゼロに抑え込んでいます。ただ、10年債利回りは、FRBではなく市場が決めるんですよ。市場はインフレを予想しているんですよね。アメリカのマクロ経済指標が良くなっている上に、バイデン氏は1.9兆ドルの追加経済対策に加えて、クリーンエネルギーに2兆ドルの財政出動を行うと言っています。
仮に今年後半あたりにコロナが収まったとすると、今まで自粛などで抑圧されてきた需要が一気に出てくる可能性があります。さらに、1.9兆ドルや2兆ドルといったマネーもばらまかれます。そうなるとインフレの懸念もあるのでは?ということで、10年債利回りが上がってきているのではないかと思います。
3.インフレのヘッジ(保険)としての金が存在感を増す
豊島氏:こういう大きな流れのなかで、「インフレヘッジとしての金」が意識されてくる可能性は大いにあると思いますよ。実はインフレヘッジなどと話すのは30年ぶりくらいなんです。若い世代には「インフレ」と「インフラ」と間違える人もいるくらい、「インフレ」は遠い過去になっているんです。
吉田:僕はいま43歳なのですが、景気がいい時期の体験がないんですよね。僕の両親はバブルのときに、毎年社員旅行で海外に行っていましたが(笑)
豊島氏:「インフレ」と「インフラ」を混同する若い人達に金の話をすると、「金の価格が下がるとしたら、どこまで下がるか」という質問が1番多いんです。金でひと儲けなんていうことは、あまり考えていないんですよ。
これはジェネレーション(世代)の差ですよね。20代後半、30代の人が、老後を考えてマネーの勉強を始めている。その中で金のETFも選択肢として考えられているんだと思います。
4.物価上昇は金価格を押し上げる要因になる
吉田:金利が上がってくると、金価格はどう動くとお考えですか?
豊島氏:金は金利を生みませんから、金利が上がってくると、市場の初期反応は「金は売りだ」となりますよね。ただそのあとは、冷静になって、「(インフレ懸念が生じている中)資産が目減りするのか、しないのか」という基準で考えるようになります。
今年考えられるシナリオでいくと、金利が上昇し、ドル高になり、その結果、金は初期反応では売られるかもしれません。ただ、先ほどの話のとおり、「物価上昇を考えると、実質金利はむしろまだマイナスだ」ということに気づくのではないかと思っています。
林氏:そうなると、金利ゼロの金でもマイナスよりはまだマシだと判断され、買いに転じるということですね。
豊島氏:金はインフレに強いとか、資産が目減りしないというイメージが強いので、インフレを心配する時代になれば、金は役割を発揮すると思いますよ。
1970年代にオイルショックがあったとき、金価格は4倍になったんです。この実例から金はインフレに強いと言われているのですが、コロナ禍でその再現となる可能性が出てきているのではないかと思っています。
林氏:日経平均も3万円を超えて、株式市場は高騰を続けていますよね。(2月17日時点)
豊島氏:「コロナなのに、なぜ株価は上がっているのか?」という質問を受けることも多いのですが、「日銀などの中央銀行がこれだけお金をばらまいているからです」と答えると、納得されますよね。
吉田:投資をやっていない方にとっては、日経平均3万円超えも実感はないですよね。
豊島氏:そういう人に「年金の半分は株で運用されているんですよ」という話をすると、急に実感するんですよね。そうなると他人事じゃなくなるんです。
5.金価格は年末にかけて2,000ドルを突破する?
吉田:このような背景を考慮すると、インフレヘッジとしてやはり金は買われるということでしょうか?
豊島氏:そうですね。金利上昇で最初は売られても、その後はインフレ懸念が金価格を押し上げて、7月から12月くらいには2,000ドルを再突破するのではと思っています。
林氏:最高値をつけた2020年8月から金価格は10%ほど下落していますが、ここからまた上昇局面を迎えそうということですね。
豊島氏:実はインドなどでは、金の現物買いが増えてきているんです。インドでは婚礼のときに、日本円で20万円相当ほど、父が娘に金を持参金として持たせます。インドのお父さんたちは、金価格が下がると買いに行く。そういう素人の感覚は馬鹿にしてはいけないと思うんです。こういう人が安いから買うっていう感覚は強いですよね。
6.ドバイ・インド・中国で衰えない金の実需
豊島氏:あと、ドバイはいろんな人が集まる国際都市ですが、「シティ ・オブ・ ゴールド」がスローガンになってるくらい、ドバイの人は金が好きなんです。女性の黒い民族衣装の下は、金の装飾品だらけなんですよ。これまで、金価格が高値だったり、ロックダウンで抑えられたりして縮小していた需要が、今後爆発するのではないかと思います。
吉田:中国やインドの方も金(ゴールド)がお好きですよね。
豊島氏:中国は1994年にハイパーインフレを体験しているので、基本的に人民元を信用していません。価値が変わらないものは金だと思っているのです。金が1,600ドルとか1,700ドルまで下がってきたら、みんな列を作って買いますよ。
一時1,100ドルを割って、1.050ドルまで下がったときは、上海やムンバイで金を買いたい人が列をつくって、整理券が配られたくらいなのです。この時は、そこが底値になって、金価格は1,200ドルまで跳ね上がりました。
林氏:安くなったところでは、実需で買いが入るということですね。
豊島氏:今年1-3月は買いのタイミングになるかもしれません。金は2,000ドルを突破すると、リサイクルからの供給が増えて売られる可能性があります。ギリシャショックで金が値上がりした2011年あたりは、金のリサイクルが年間1,600トンや1,700トンに増えたんです。
ただ、昨今はリサイクルで売られても、それ以上に金ETF(上場投資信託)の需要が増えて、買いが入るようになりました。金ETFの登場は間違いなく金の価格を引き上げたと思います。この状況は金に対して追い風になっていると思います。
7.金の下値の目途は、金鉱山の生産コストである1,200ドル
吉田:足元、金価格は最高値から少し下落して1,800ドル前後です。株式投資をやっている人が戸惑うのが、1,800ドルが高いのか安いのか、バリュエーションがわからないところなんですよね。
豊島氏:わかりやすい下値の目途は、金鉱山の生産コストですね。金価格が1,200ドルを下回ると多くの金鉱山で赤字になりますから、これが下値目途になると思います。
一方で高値は、日米の中央銀行の資産規模、どれだけお金をばらまいたか、で決まります。ばらまくほど将来的にそこの通貨の価値が希薄化し、その反動として金が買われます。ドル、ユーロ、円はいくらでも刷れますが、金は刷れないですよね。
いまFRBの資産規模は7兆ドルくらいで、今後9兆ドルから10兆ドルに膨らむとも言われています。そうなるとさらに金価格は高値を追うことになるでしょうね。おそらく、FRBが量的緩和を打ち切るという宣言をしたときの価格が、最高値になるのではないかと思います。
林氏:量的緩和でドルの価値が希薄化しても、金は希薄化しないということですよね。
8.個人投資家にも手がけやすい金のETF(金の果実 証券コード:1540)
吉田:ここまでお話を伺うと、やはり今後も金価格は上昇を続けそうですね。個人投資家の方にもぜひ、金のETF(金の果実 証券コード:1540)を活用して、資産に金を組み込んでいただきたいです。今であれば1口5,000円台ですから、まだ買いやすい価格なのではないかと思います。
豊島氏:金ETFは個人投資家でも手が届く額で金に投資できるという意味で、新しい投資家に合う商品だと思いますね。これからも金ETFには新規参入者が増えていくと思いますよ。アメリカが既にそうなりつつあるので、日本も同じ動きになると思います。
林氏:コロナ禍で変化を遂げるマーケットのなかで資産を守るという意味でも、少しでも多くの個人投資家の方に、金のETF(金の果実 証券コード:1540)に興味を持っていただけたら嬉しいですね。
「金の果実シリーズ」4銘柄
「金の果実」シリーズは、国内の商品先物取引市場における貴金属価格に連動するように作られたETF(上場投資信託)です。株式と同じ取引方法、手数料で投資が可能なため、例えば「貴金属の価格に連動する株式」と考えていただければわかりやすいかと思います。
銘柄 コード |
銘柄名 【愛称】 |
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1540 |
純金上場信託 (現物国内保管型) 【金の果実】 指標価格は、国内の商品先物取引市場における金1グラムあたりの先物価格から評価した、金地金1グラムの現在の理論価格です。 |
1541 |
純プラチナ上場信託(現物国内保管型) 【プラチナの果実】 指標価格は、国内の商品先物取引市場におけるプラチナ1グラムあたりの先物価格から評価した、プラチナ地金1グラムの現在の理論価格です。 |
1542 |
純銀上場信託(現物国内保管型) 【銀の果実】 指標価格は、国内の商品先物取引市場における銀1グラムあたりの先物価格から評価した、銀地金100グラムの現在の理論価格です。 |
1543 |
純パラジウム上場信託(現物国内保管型) 【パラジウムの果実】 指標価格は、国内の商品先物取引市場におけるパラジウム1グラムあたりの先物価格から評価した、パラジウム地金10グラムの現在の理論価格です。 |
【ご注意】
上記4銘柄の「金の果実ETF」については、信託財産である貴金属地金は国内で保管され、一定口数以上で、国内での貴金属現物との転換(交換)が可能となっております。なお、弊社では貴金属現物への転換(交換)は対応しておりませんので、転換(交換)をご希望なさる場合は、指定転換販売会社(証券会社)への移管が必要となります。詳細につきましては、指定転換販売会社(証券会社)までお問い合わせをお願いいたします。