コロナ禍のリモートワークで時間もできたので、今年、株式投資を始めた人も多いだろう。しかし、個人投資家で実際に儲けている人はたったの1割、ともいわれる。どうして投資初心者は株式投資で今一つ儲けることができないのか? トウシルの人気著者で、株式投資の実力を上げるための新書『お金偏差値30からの株式投資』を上梓した足立武志さんとともに、投資初心者が陥りやすい株式投資の罠について考えてみた。

株式投資で実際に儲けている人がたった1割といわれるわけ

「株に投資している個人投資家で実際に儲かっている人は1割程度と、よくいわれます。どれぐらいの人が儲かるかはその時の相場状況によっても変わりますが、『個人投資家は株式投資で損している』というのが如実に示されているのが、信用評価損益率というデータです」(足立さん)。

 この信用評価損益率とは、株を信用取引で買った投資家の全体としての損益率がどうなっているかを毎週示したもの。信用取引を利用して株を買うのは多くの場合、個人投資家であるため、個人投資家の損益事情を反映した数字ともいわれる。

「信用評価損益率は通常マイナス(=含み損の状態)で推移しています。これは信用取引を行う投資家の多くが、信用取引の建玉が利益になれば早めに決済してしまう半面、含み損が生じた建玉は損切りせずに我慢して持ち続けてしまうためです」と足立さん。

 コロナショックで株価が大暴落した3月には、信用評価損益率がマイナス30%まで悪化。その後、日経平均株価は大きくリバウンドして11月にはバブル後最高値をつけるまで上昇したが、損益率は一度も0%まで回復することなく、マイナス10%以下で推移している。

 個人投資家がいかに儲かっていないかを示す一つのデータといっていいだろう。

「塩漬け」ではなく「損切り」、「逆張り」ではなく「順張り」を心がける

 では、どうすれば、株式投資で大半の人のように含み損を抱えるのではなく、しっかり利益を上げることができるのか?

 株本累計20万部の大ヒット著者であり、自らも株式投資で大成功している足立さんは株式投資で着実に利益を上げる極意は「損切り」「順張り」「成長株投資」にあると語る。

「個人投資家で儲かっている人が1割しかいない、その理由は多くの個人投資家が少し儲かったら利益はすぐに確定してしまうのに、株を買って損失が出ても損切りができず、含み損を抱えた塩漬け株を抱え込んでしまうからです。さらに一般の買物と同じように『株価が割安なものを安い、お買い得』といって買う傾向も強いと思います。すなわち『塩漬け』『逆張り』『割安株投資』の3つが、初心者が躓きやすい株式投資の罠といえるでしょう」と足立さん。

 では、それを防ぐためにはどうすればいいのか?

「まずは損切りですね。自分の予想と反して株価が下がったら、どんなに悔しくても損失を確定して、さらに大きな損失、回復不可能なほどのダメージを受けないように心がけることが成功への第一歩です。下がっている株を安いからそのうち上がるだろうといって逆張りするのも禁物です。株式投資で儲けるためには、株価が実際に上がらないと話になりません。つまり、上がっている株を上がっているときだけ保有するという順張り、トレンドフォローの考えをしっかり身に付ける必要があります」と足立さんは語る。

 たとえば、図は医師向けに医療情報専用サイトを運営するエムスリーの株価。3月のコロナショックで暴落したあと、11月までに4.2倍も上昇している。

出所:楽天証券Market SpeedⅡ

「こういった株を上昇が続いている間だけ保有し、移動平均線などを基準に下げに転じたらいったん売却して、再び上昇モード入りしたら買い直す、という手法が私は、含み損を抱えず、株で効率よく利益を上げるコツだと思っています」

「億り人」達成には「バブルに乗る」「成長株投資」が大切

 そんな足立さんは、株式投資の世界では夢のゴールとされる「億り人」になるために必要な条件は次の4つだという。

(1)タネ銭を増やす
(2)バブルを徹底活用する
(3)配当収入より値上がり益を重視する
(4)割安株より成長株を選ぶ

「投資でお金を増やすためにはタネ銭が多いに越したことはありません。さらに株式投資には、お金を増やしやすい時期とそうでない時期があるのです。2020年のコロナショック以降は、コロナのせいで社会が大きく代わり、リモートワークや巣ごもり消費関連の上場企業の株価がバブル的に上昇しました。そういったバブルの初動段階にうまく乗ることも株で1億円の資産を築くためには必要です。さらに、株式投資で大きく儲けるためには、やはり、配当収入や株主優待といった定期的にもらえる収入よりも、株価そのものが2倍、3倍と大きく値上がりする必要があります。そのためには、業績に比べて株価が割安な株よりも、毎年増収増益が続き、投資家からも注目されている成長企業の株を買うほうが大きな利益を狙いやすいのです」と足立さん。

 たとえば、毎年売上や利益が20%ずつ増加している企業の場合、1×1.2×1.2…とその20%成長が4年続くと、売上高も利益も2倍以上に増える。売上や利益が2倍に増えれば株式市場が同じ状態なら、株価も2倍になってもおかしくない。その企業の売上がもっと大きく伸びそうだ、という投資家の期待が強い場合、株価は「未来を先取りする性質」があるため、2倍以上に上昇する可能性も高い。これが増収増益の続く成長株に投資する醍醐味なのだ。

「冒頭で紹介されたエムスリーなどが顕著な例ですが、企業が成長を続けていて、投資家の期待感が高まり、しかも株式相場がバブルの状況になれば、成長株は期待先行で株価が10倍高することもあります。そうした成長企業の株価上昇に順張りでついていくのが、もっとも効率よく株で資産形成する近道といえるのです」

 株式投資でしっかりお金を増やせる人になるためには努力と経験が必要。株式投資で勝ち抜くための実践的な金融リテラシーを知り、投資格差の上層部を目指そう。

▼お話を伺った方

足立武志(あだち たけし)さん

足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー
株式会社マネーガーディアン代表取締役

 個人投資家の「困った!」を解決する公認会計士。1975年神奈川県生まれ。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として個人投資家向けに有用かつ実践的な知識・情報をコラム、セミナー、書籍、ブログ等で提供。トウシルのコラム「知って納得!株式投資で負けないための実践的基礎知識」の連載は実に11年、570回に達する。『株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書 改訂版』『株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書』(ダイヤモンド社)など、株式投資本の著書10冊超、累計発行部数は20万部超。ベストセラー株式投資本の著者としても、多くの投資家の支持を集めている。

公認会計士足立武志ブログ

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