信用取引を駆使して「大膨張」を実現した

──その後、信用取引を始めるわけですが、何かきっかけがあったのですか。

 投資を始めてもうすぐ2年という頃、アーネストワン(現・飯田グループホールディングス子会社)という新興不動産デベロッパーの株を購入しました。当時、不動産業界は人気がなく、この銘柄も業績がいいのに割安でした。たしかPERは4倍くらいだったと思います。それで、今がチャンスだと考え、300万円投資したんです。その頃は元本の200万円が倍に増えていましたから、全資産の75%を注ぎ込んだわけです。

──思惑通り、株価は上がっていった?

 はい、予想を超える勢いでした。ただ、その一方で、ほかの新興デベロッパーにも目がいくようになったんです。アーネストワンに負けず劣らず伸びている企業がけっこうあったので。

──でも、いろいろな会社に投資するには資金が足りなかったと。

 そういうことです。もちろん、アーネストワンの株をいくらか売ってほかの銘柄を買うという手段もありました。でも、アーネストワンもまだまだ上がるという自信がありましたから、それはちょっともったいない。で、これはもう信用取引を始めるしかないと考えたわけです。

──なるほど。

 信用取引だと自己資金の約3倍の投資ができます。その頃、資産は500万円ほどに膨らんでいましたから、信用を使えば最大1500万円分運用することが可能でした。それでアーネストワンの株を持ったまま、やはり飛ぶ鳥を落とす勢いで伸びていたフージャースコーポレーション、日本エスコン、ファースト住建といった不動産会社の株を購入したわけです。

──そこからDAIBOUCHOU(大膨張)が始まったわけですね。

 当時、持っていた銘柄の大半が最安値に対して10倍、20倍まで高騰しましたからね。結果、信用取引を始めてから1年で資産は1億円に達しました。その後、不動産流動化関連銘柄も購入するようになり、資産は2億4000万円まで増えました。まあ、その直後に大暴落が起き、一瞬にして9,000万円まで減らしてしまうわけですが。

──2004年の5月ですね。

 今、振り返ると株価が上がりすぎた反動だと思うのですが、何の前触れもなく、突然暴落したんです。

「カードローンで200万円必要だったので、各カード会社を行脚して手元資金を調達した」というDAIBOUCHOUさん。お人柄からか、飄々と語っていたが、当時の心境たるや…。想像するとゾワゾワする。

──追い証(信用取引で損を出したときに保証金を追加すること)が発生した?

 はい、初めて経験なので、さすがに焦りました。ただ、危険なので本当はやりたくないのですが、万が一の場合はカードキャッシングで現金を用意しようと考えていたんです。信用取引を行う限り、追い証を求められる可能性はあるわけですから。だから、どうしていいかわからず、おろおろするようなことはありませんでした。そのときはカードキャッシングの手続きを済ませ、何とか急場をしのぎました。

──それでも1億5,000万円の損失があった?

 もし追証が間に合わなかったら、その程度では済まなかったでしょうから、自分ではぎりぎりセーフという感じでした。9,000万円残ったのは大きかったですね。