※この記事は2018年3月23日に掲載されたものです。

 

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第2章 資本主義に飲み込まれるか、味方にするか?

<第2話>1ドルを60万ドルに変えた、資本主義


「でも、資本主義を学ぶと、どうして長期投資で成功する確率が高くなるんですか?」

 コミュニケーションというのは難しい。お互いの立ち位置が2階と5階だといくら言葉を交わしたところで伝わらないことがある。そこは先生も当然、隆一がいる2階に降りる方法がわかっている。

 先生は席を立ち、壁に貼ってあるグラフの近くで「ちょっとこのグラフを見てください」と隆一に声をかける。隆一も席を立ち、そのグラフの近くにいった。

■1ドルは、200年でいくらになった?

出所:『株式投資第4版』(ジェレミー・シーゲル/日経BP出版)
※実質トータルリターン

「先生、何ですかこのグラフ、株のチャートのように見えますけど」

「これは約200年前の1801年に当時の1ドルを株式、債券、金、現金にそれぞれ投資をしたら、200年後にいくらになっているかというグラフです」

「先生、この一番上の折れ線グラフ、株式は1ドルが60万ドルになったと書いてあるんですけど。60万倍なんて、こんなことあり得ないですよね」

 隆一は<あり得ない>と何度も呟いた。

「このグラフを最初に見た人はほぼ全員あなたと同じ反応をします。ただ、これが長期投資の成果であり、1ドルが年利7%で200年経つと60万ドルになるのです。そして、このお金がお金を産む、もう少し正確にいうと<資本が資本を産む>のが資本主義の考え方です。」

「そういうことですか、よくお金持ちはさらにお金持ちになると言われるのは、こういうことなんですね」

 隆一は妻が「お金持ちになって、一度ぐらい新宿の伊勢丹で値札を見ずに洋服を買ってみたい」と言っていたのを思い出した。

「そう、この資本主義のロジックを理解すればするほど、お金持ちになる確率は高まるのです」

 先生が強調すると隆一の目が急に輝き出した。今、この瞬間、彼のやる気スイッチが入ったことは、誰の目からもわかったはずだ。

 小学生に勉強をすることの大切さをとうとうと伝えるより、試験でいい点数を取ったらニンテンドースイッチを買ってあげるというニンジンをぶら下げたほうがいいときもある。勉強の意味は後からわかるものだ。