THE S&P 500 MARKET: 2020年10月

 10月は不思議の国の物語が続きました。9月の下落(マイナス3.92%)から反転上昇してリターンは3.04%に達し、11セクターすべてが上昇と、3月23日の安値からの回復軌道に戻っていました ―― それがハロウィンの週に入ると、もらったはずのお菓子は消え、市場はいたずらをされてしまいました。

 下落の第一の原因(やり玉)に上がったのは、景気対策第4弾という名のキャンディが「突然」取り上げられたことです。議会では、追加の景気刺激策が合意しないまま、議員が選挙遊説のためにワシントンを離れてしまいました。大統領選を前に両党が対立し法案が成立しなかったと非難する声もありましたが、市場が“今すぐに”キャンディを貰えると信じ切ったこと(妄信?)に問題があるというのが、筆者を含めた大方の見解です。

 下落のきっかけに関しては、シェークスピアの「どっちもどっち」という言葉が的を得ていると思いますが、ウォール街が政局の不透明感に支配される中、急速な相場転換が全体的な下落につながり(1週間で5.64%下落)、10月のリターンは2.77%の下落となりました。決算発表を終えた企業の85.2%が予想(29.9%の下方修正後)を上回る中、個別銘柄は依然として決算発表の結果を基に取引されていましたが、それでも市場全体に安心感を与えることはできませんでした。恐らく、そのうちの1社か2社でもフォワードガイダンスを示していたなら…とは言うものの、分かっているなら発表したでしょうが。

 一方、米国では新型コロナウイルスの感染拡大が続き、7日移動平均ベースでみた1日当たりの新規感染者数は過去最多を更新しました。さらに悪いことに、欧州では経済活動が再停止し、外出禁止や全国的なロックダウンが実施され、これが感謝祭を前に海を越え(かつての植民地へ)広がるとの観測もみられました。この段階で、アジアだけはウイルスをある程度コントロールできているようでしたが(実際、ニュージーランドは封じ込めに成功したとして注目されているようです)、それさえ懸念されていました。

 2カ月連続での下落となった10月ですが、結局のところ年初来では1.12%の上昇と(コロナ前の2月19日の高値かからは3.43%下落、9月2日の終値での高値からでは8.68%下落)、経済情勢を踏まえると、依然として良好であり、回復への楽観論を示していました。11月に関しては、筆者を始め話を聞いた市場参加者のほぼ全員が恐らく、大統領選が終わり結果が判明する中、市場は大幅に変動するとの見方に票を投じます。ウォール街はこうしていずれ不透明感が薄れ、先行きが明らかになり(良い方向でも悪い方向でも、あるいはその両方であろうと)、人々や企業経営者は何とかそれに合わせて前進して行くことを期待しています。

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