THE S&P 500 MARKET: 2020年6月
米国では、新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者数が47,000人超と過去最多に増加しました。国内の感染者数は260万人を超え(世界の感染者数は1,050万人)、死者数も12万7,000人を上回っています(同51万1,000人)。
米国内でのウイルス封じ込めの進捗状況は依然として州によってばらつきがあり、その成果もはっきりしていないものの、感染状況が最初に深刻化しその後感染の震源地となったニューヨーク市は、経済を再開させました。
一方で、アリゾナ州、カリフォルニア州、フロリダ州、テキサス州では感染者数と入院患者数の急増が報告され、フロリダ州やテキサス州などは再び経済活動を制限したほか、制限措置の再導入を検討する州も散見されています(こうした対応は極めて政治的な問題となっています)。各州で感染再拡大の兆候が確認される中、ニューヨーク州(コネチカット州とニュージャージー州も同様)は、「ホットスポット」とされる16州からの訪問者に対して、14日間の自主隔離を求めると発表しました(以前にニューヨーク州からの訪問者に対して一部の州が設けた措置と同様の対応)。
米国以外では、EUが14カ国(および恐らく中国も)に対し一般旅行客の域内への渡航を解禁すると発表しました。ただし、米国は感染者数が増加中であることを理由に、渡航制限の解除には至りませんでした。コロナウイルスに関して重要なことは、まだ何も分かっていないということです。感染状況に対する体系的な見方は、科学的というよりも一段と政治的なものになっています。
そして、市場は、いずれ治療薬を含む治療方法やワクチンといった対策が見出されることで経済は回復すると信じています。こうした景気回復に向けて、前述の通り、早い段階で感染が拡大した地域では状況が改善してきました。しかしながら、当初それほど感染が深刻化しなかった地域では悪化し始めており、いまだ対応に追われている最中です。
最終的には経済が再開される(そして株価は期待によって決まる)との判断から、市場は上昇基調に転じました。終値での最高値(2020年2月19日)から直近安値(3月23日)まで33.9%下落した後、市場は38.6%上昇し(3月23日から年初来で若干上昇となった6月8日までは44.5%の上昇)、年初来でも大いに許容範囲といえる4.04%の下落まで戻しました(終値では高値から8.44%の下落)。第1四半期の騰落率は20.00%の下落でしたが、第2四半期は19.95%の上昇となりました。
現時点での主な懸念事項は、市場が景気の回復を先取りし過ぎているのではないか(2020年予想PERは28.4倍、2021年予想PERは19.2倍)、一段と長い回復期間を織り込む必要があるのか、ということです。約70%の企業が2020年第2四半期の業績発表(すでに予想利益は半減されており、さらなる悪化が見込まれています)を行う7月には、この点に関する最新の情報が明らかになると同時に、下半期の業績予想が何らかの手掛かりを与えてくれるでしょう(市場にとって重要な情報です)。
そして、7月の業績予想よりもさらに先の材料を欲している投資家に対しては、8月に再び激しい中傷合戦となる政治が新聞各紙のトップ記事になるはずです。シェイクスピア流に言えば「2つの名家」である共和・民主の両党が、大統領候補を正式に指名し、政党綱領が示され、長く暑い夏となりそうです。