売り時バッチリで総利益2.5億円!

 J氏が購入したファンドの一つ、米ブラックロック社が運用を行い、設定が1998年7月というロングセラー商品【ブラックロックのUSベーシック・バリュ・オープン】について解説します。ファンドの目的は、「主に米国株式を投資対象として、過小評価されている株式に投資し、値上がり益及びインカム収益を追求します」とあり、シンプルな米国株式へのバリュー投資スタイルを取る投資信託です。

 J氏は、この投資信託を2011年10月に1億円買付けました。基準価額は7,000円ほどでした。「リーマン・ショックからちょうど3年が経ち、これから米国を中心に世界経済が回復に向かうとすれば、過去を見ても米国株式の上昇なくして世界経済の回復はないだろう。だとしたらシンプルに米国の大型割安株を中長期保有するのが有効だ」というのがJ氏の判断です。

 そして2015年の10月頃、中国経済の不安が話題になり、米国では9年半ぶりの利上げ開始を控えて市場が不安定な傾向へ。J氏はそこでいったん利益確定しました。実際、この年がほぼ頂点となって価格は緩やかに下落または横ばいへ。売却タイミングはバッチリで、基準価額は1万8,000円ほど。1.5億円の利益を得ました。

 過去の米国株の歴史を見る限り、長期の力強い上昇トレンドが失われる事態は考えにくく、米国株全体の上昇の動きと為替の動きをほぼダイレクトに反映する、という点から、J氏はこの投資信託を使いました。シンプルな仕組みで価格変動要因が掴みやすいため、売買のタイミングも検討しやすかったのです。

 J氏はその他にも、日本株式、インドネシア国債、オーストラリア株式、J‐REITなど、投資対象を一国の同一商品のみに絞った投資信託を活用しています。このようなシンプルな投資信託であれば、一見して分かりにくい価格変動要因やリスクを不必要に負うこともなく、仕組みがシンプルな分だけ比較的コストも控えたものもあり、また長期間運用されているロングセラー商品も多いようです。 

 中長期的な視点でこれらの商品を運用し、総額約1億円の利益を得ました。4年間で合計2.5億円の利益です。

真似できる!富裕層投資戦略

 J氏の投資の極意をまとめると、以下のようなものになります。

 

 

 富裕層の資産運用では分散ポートフォリオがよく話題になりますが、実際には金融機関から提案された商品の集合体になってしまったり、商品の組み合わせのバランスが悪かったりすることもあります。そもそも金融商品の種類や数がとても多く、どのような視点で選べばよいのか、入り口で悩むこともしばしばです。

 しかしJ氏のように、投資信託の価格変動の実態をできるだけ正確に把握しやすい商品を選択することが、投資信託を活用した資産防衛の第一歩といえます。雑音を取り払い、シンプルな視点でシンプルな商品を運用するJ氏の運用スタイルは、ぜひ真似したいものです。