時に乱高下を繰り返しながらも、大きく値上がりを続ける仮想通貨。最近は株式投資やFXよりもはるかに高い注目を集めているようです。

 そこで今回は、仮想通貨と株式投資を筆者の視点から比較してみようと思います。

 

仮想通貨のブームが到来!

 ビットコインを筆頭に、仮想通貨の価格高騰が止まりません。時折、仮想通貨にとってマイナスとなるニュースが出て急落しますが、ほとぼりが冷めると再び上昇に転じ、高値を更新しています。

 ビットコインの取引所であるマウントゴックスの破たんにより、沈静化すると思われていた仮想通貨市場ですが、現在はマウントゴックス破たん前よりはるかに大きなブームを迎えている感があります。

 Facebookを見ても、株式、FX、不動産よりも仮想通貨に関する広告が圧倒的に多い状況です。「仮想通貨取引で簡単に月収1,000万円!」といったようなマユツバものの広告も多数見かけます。

 こうしたことから、株式投資を中心に行っている個人投資家にとっても、仮想通貨への取引を真剣に考える人が増えているのではないかと思います。

 

仮想通貨の急速な値上がりは「チューリップ」と同じ?

 今年に入ってからの仮想通貨の値上がりは特に目を見張るものがありますが、仮想通貨の価格が上昇するメカニズムはどのようになっているのでしょうか? 

 これは株式とはまったく異なり、「チューリップ」に極めて近いと考えられます。

さまざまな投資商品の価格がなぜ上昇するかといえば、「それを買いたい人がたくさんいるから」です。この原理は投資商品だけでなく、肉や魚や野菜であっても同じです。

 しかし、仮想通貨と株式の大きな違いは、ついている価格に「価値の裏付けがあるかどうか」です。

 株式の場合、実態とかけ離れたバブルの状態になることももちろんありますが、基本は会社の業績や収益力、保有している財産などを基にした会社の「価値」に対して価格が形成されます。ですから、会社の価値に比べて株価が安くなれば、買いたい人が増えて株価が上昇する、というメカニズムとなります。

 しかし、仮想通貨の場合は違います。将来的にいろいろな場所で買い物もでき、決済手段としても幅広く使われるという期待はあるものの、そのこと自体が仮想通貨の価値を10倍にも100倍にも引き上げることにはつながりません。

 なぜ仮想通貨の価格が上昇するのかと言えば、単に「もっと上がる」と多くの人が思っているからです。これはまさにバブル的思考そのものです。買うから上がる、上がるから買う……そこに価格形成の根拠を見いだすことはできません。

17世紀に起きたオランダの「チューリップ・バブル」のときも、ほとんど価値のないチューリップの球根に対して買いが殺到し、とんでもない価格まで跳ね上がった後、バブルが崩壊しました。

 仮想通貨の価格が上昇するのも、仮想通貨の価値が高まったのではなく、単に買いたい人がたくさんいるからであることをよく認識しておいてください。

 仮想通貨で一攫千金……と考えている方は、過去のバブルについて学び、冷静になってみることをお勧めします。インターネットで「17世紀 オランダ チューリップバブル」と検索すれば、概要を知ることができます。

 

株式のバブルと仮想通貨のバブルの大きな違いとは

 株式のバブルと仮想通貨のバブルの大きな違いは、「適正価格」があるか、ないかです。株式の場合、業績や財政状態などから、「このくらいの株価が妥当だろう」という計算をすることができます。したがって、適正株価1,000円の銘柄がバブルにより3,000円まで上昇した後バブルが崩壊しても、おそらく1,000円前後で下げ止まることになります。

 しかし、仮想通貨の場合、あるべき適正な価値を計算することができません。そのため、ひとたびバブルが崩壊すると、どこまで値下がりするか予測がつかないのです。もしかしたら、買った価格の100分の1以下にまで値下がりしてしまうかもしれません。

 仮想通貨への投資を推奨する人の中には、足元の仮想通貨の価格急騰は「バブルではない、まだまだ驚くくらい上昇する」と言って勧誘をするケースも少なくありません。

 しかし、「バブルだ」「いや、バブルではない」という議論が起こること自体がバブルの状態なのです。適正価格が誰にもわからない中で価格だけがスルスルと上昇していくので、こうした議論が起こるのです。

 バブルは、ある日突然はじけます。私たちがバブルから身を守るためには、「適正価格が測定できないようなよくわからないものに多額の資金を投入しない」ことに尽きます。

 

少額の投資資金しかない場合は積極的に「夢」を追い求めるのもアリ?

 とはいうものの、仮想通貨の今後は未知数です。ここからさらに注目度が高まり、価格もこれまで以上に急騰する可能性ももちろんあります。

 個人的には株式投資で資産形成をする場合、少額の投資資金しかないならば多少無理してリスクを取ってでも、早めに1,000万円まで増やすのが望ましいと思っています。

 1,000万円あれば複数の銘柄に資金を分散させることも容易ですし、さまざまな投資の選択肢が広がってくるからです。

 ですから、たとえば投資資金が10万円、20万円しかなく、ゼロになっても再びすぐ貯めることができるのであれば、いっそのこと仮想通貨に投資資金の大部分を投下するのも選択肢としてはあり得ると思います。

 もちろんどうなるかは神のみぞ知るところであり、そこには常に自己責任が伴いますがうまくいけば資産を短期間で大きく増やすことが可能です。

 株式で短期間に10万円を1,000万円にするのは至難の業ですが、バブル状態の仮想通貨ならもしかしたら可能かもしれません。非常に高リスクであることは覚悟の上、その可能性に賭けて、積極的に「夢」を追い求めるのもひとつの方法です。

 

ある程度の運用資産をすでに持っているなら無理は禁物

 逆に、現時点で1,000万円以上の運用資産がある場合、それを大きく減らすことは致命傷になりかねません。ですから、価格の裏付けの乏しい仮想通貨に多額の資金を投下するのは非常にリスクが高い行為です。

 筆者なら、投資可能資金のうち、仮想通貨への投資に回すとしても最大でも3%ほどに留めます。そして、もしそれが10倍になれば、総投資資金の増加は「3%×10=30%」です。

 でも株式投資なら、相場環境がよければ1年で投資資金が2倍以上に増加することは決して珍しくありません。筆者は投資に対してかなり保守的なため、将来どうなるかわからないものに多額の資金をつぎ込むことができません。そのため、投資したものが10倍、20倍になったとしても投資可能資金のトータルで見ると、そんなに大きくは増えないのです。

 それなら、自身が得意な株式投資に投資資金を集中させたほうが、結果として資産をより大きく増やすことにつながるのではないかと思っています。

豊田商事事件、和牛商法、円天事件、未公開株詐欺……今までさまざまな投資がブームになり、そしていつの間にか消えていきました。

 でも、株式投資はいつまでも残り続けています。なぜなら、株式投資はやはりいつの時代でも投資の王道だからです。

 法規制により投資家の資産は保護されていますし、何より会社の成長とともに会社の価値も増加するため、他の投資に比べて利益を上げやすいです。長い目で見れば、着実に財産形成するには株式への投資が最も優れていると筆者は思っています。

 バブル状態の仮想通貨への投資にチャレンジしてみるのもいいですが、投資した資金がゼロになってもよい、という範囲内にとどめておくことを強くお勧めします。