日本の人口減少は他国とは比べられないほど深刻

 感覚的に物事を捉える人は、「多くの先進国が人口減少問題に直面していて、韓国、ドイツ、イタリア、スペインも危機感を持っている。日本だけの問題ではない」とのんきに構えていますが、日本とそれらの国々とでは人口減少率がまったく異なります。2060年までに韓国は5%減、ドイツは11%減、イタリアとスペインは7%減にとどまり、42.5%も減る国は日本しかありません。一方で、65歳以上の人は45年間で2%増加します。

 ここで再び感覚的に物事を捉える人に登場してもらうと、きっとこう言うでしょう。「日本人は勤勉で優秀で技術力がある。だからなんとか乗り越えられる」。確かに怠惰で劣っていて技術力がなければ先進国になることはできませんが、勤勉で優秀で技術力があることと、日本が世界第3位の経済大国になったことには、それほどの因果関係は認められません。

日本の強みは勤勉さでも技術力でもなく人口の多さ

 日本の最大の強みは人口が多いことでした。先進国の人口を多い順に並べると、米国3億2,400万人、日本1億2,600万人、ドイツ8,200万人、英国6,600万人、フランス6,500万人となり、先進国の経済規模の順位は人口の多さと一致しています。日本の経済規模が英国の経済規模のほぼ2倍である最大の理由は人口が2倍も多いためです。その最大の理由が激減することが分かっているのですから、今までの考え方ややり方を全面的に変えない限り、日本経済は縮小していくことは明らかです。

 日本のGDP550兆円を生産年齢人口で割った1人当たりGDPは、2015年723万円。2060年には1,260万円に高めないと、日本経済は現在の水準を維持できず縮小してしまいます。つまり、給料が今より1.7倍に増えないと、経済は縮小するということです。

 私が参加している政府の委員会などで、この問題について専門家の方々と議論をすると、「日銀が金融緩和をすればいい」とか「インフレが日本を救う」という訳の分からないことを平気で言う人がいます。そうではなくて、最大のポイントは「賃金を上げることができるか否か」です。