世界有数の金融立国・スイスのプライベートバンクはいかにして生まれたか?
伊藤 淳(株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル IFA)
スイスとプライベートバンク
今回は「スイスと金融の馴れ初め」と題し、スイスの歴史とその中心であるプライベートバンクについて書こうと思います。
国連が毎年発表している「世界幸福度ランキング」で常にトップを争うスイス。世界トップクラスの裕福な国スイスは、どのようにして出来上がったのか。
まずスイスというと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。美しい山々とエメラルドグリーンの湖、街を見渡せば高級時計の露店や、チーズをふんだんに使った郷土料理のレストランなどなど。
しかし、金融大国スイスを語る上で欠かせないのが「プライベートバンキング」の存在です。日本人にとってなじみの薄いプライベートバンキングとは一体どんなものなのでしょうか。
一般的には富裕層向けに「守秘義務」を重んじ、資産運用やコンサル業務を行っているイメージではありますが、実際細かいところでみると非常に多岐にわたるサービスを行っています。たとえば子供への教育支援や旅行の手配、医療機関の紹介など、お金に関するサービス以外にも多くのきめ細やかなサービスを行っています。
なぜスイスが世界一のプライベートバンキングになったのか
スイス「プライベートバンキング」の歴史は11世紀の十字軍までさかのぼります。それ以降ヨーロッパ各地で戦争が続く中、スイスは傭兵をビジネスとしていました。傭兵は現地で得た報酬のほかに略奪の金品類なども傭兵の収入元になっていたため、秘匿性の高い資産管理が重要だったとのことです。
そんなスイスがプライベートバンクとして地位を確立したのは、19世紀はじめにヨーロッパ諸国がスイスを永世中立国と認める条約が結ばれたことです。戦争の絶えないヨーロッパの地では「不可侵の国」というのは「資産保全に一番適している場所」というわけです。第二次世界大戦ではナチスから逃れるため、多くの資産がスイスに集まりました。スイスはヒトラーの資産を保全していたとか、裏でナチスに協力していたなどという噂もあり、プライベートバンクにブラックな印象が根付き始めたのはそこからとも言われています。(プライベートバンクは秘匿性が高く、噂話に対し肯不定しないためブラックなイメージを持つ人々もいると筆者は考えています。)