優待タダ取りはできない!?「つなぎ売り」なら低コスト・低リスクで優待がもらえる!」に続き、今回は「株価下落リスクを負わないで株主優待を獲得する方法」を解説します。

優待は欲しいが、株価下落リスクを負いたくない場合、「つなぎ売り」を使えばよい

「つなぎ売り」は、信用取引の一種です。以下の方法で、優待取りに使うことができます。

つなぎ売りを使った「優待取り」のやり方、イメージ図

 

 9月末に100株保有すると、魅力的な株主優待が得られる銘柄を「Y社」として、解説します。以下の2ステップで、優待取りが完結します。

ステップ1

 Y社100株の「買い」と、Y社100株の信用取引の「売り」を、両方とも行います。買ってから売っても、売ってから買っても、どちらでも問題ありません。同じ価格で行うのが理想です。

 9月末基準の優待を得るためには、9月25日(権利つき最終売買日)までに、ステップ1を行う必要があります。9月25日までに、ステップ1を行い、9月26日(権利落ち日)までポジションを持つと、9月末基準の優待を得る権利が確定します。

ステップ2

 優待の権利を得たら、速やかに(原則9月26日に)、現渡(げんわたし)で決済してください。現渡とは、保有するY社株100株を、信用で売建(うりたて)しているY社株100株の返済に充てることです。これで、「優待取り」は完結です。

 27日に現渡することも返済期限内なので可能ですが、貸株料を払う期間が長くなるので、忘れずに26日に現渡しましょう。

優待取り「つなぎ売り」にかかるコスト

 それでは、つなぎ売りで、優待を取るのにかかるコストを、優待が魅力の小売業「Y社」を例にとって説明します。「Y社」は、ヤマダ電機(9831)に極めて近い内容としていますが、完全に同じではありません。

 コストや税金の仕組みはとても複雑で、すべて理解していただくのは困難です。大まかなイメージだけ、つかんでいただけると幸甚です。

つなぎ売りを使った優待取りのメリットと、かかるコストの比較

前提条件

  • 9月14日(金)にY社100株を550円で買い(約定金額5万5,000円)
  • 同じ日に、Y社100株を550円で信用売り(約定金額5万5,000円)
  • 優待を得る権利が確定する9月26日(水)に、現渡(げんわたし)で決済
  • 100株保有で、9月末基準で2,000円相当(500円券4枚)のお買物優待券を得る権利が確定(株主に発送されるのは12月初―中旬)。税込みで合計1,000円以上の現金での買い物につき、500円券を1枚利用可。他の割引との併用は不可
  • 9月末基準の中間配当金は無し。配当金は、年1回、3月末基準のみ
  • 貸株料は、一般信用の料率で計算(制度信用では異なる数値となる)
  • 信用売りを現渡しで清算する際、配当落ち相当額の支払いが必要だが、Y社は中間配当金の支払い予定がないので、これは不要
 

 上記の例では、必ずかかるコストは264円ですから、お買い物優待券2,000円が得られるならば、十分にメリットがあります。

 ただし、これ以外にも、コストがかかる場合があります。大きなコストとなる可能性があるのは、「逆日歩(ぎゃくひぶ)」です。制度信用を使う場合に、かかる可能性があります。人気の優待銘柄では、優待メリットを上回る逆日歩を請求されることもあるので、注意を要します。事前には金額がわからず、事後的に決まった金額を請求されます。

 楽天証券が、「優待取りのつなぎ売り」のために用意している「一般信用・短期」を使えば、逆日歩は発生しません。制度信用ではなく、一般信用でつなぎ売りした方が、リスクが小さいと言えます。

 もう1つ、かかるコストは、配当金相当額(支払)と、配当金(受取)の差額です。つなぎ売りしたまま、配当金を得る権利が確定すると、信用売りしている100株に対して、配当金相当額を、支払う必要が生じます。一方、買って保有している100株では、配当金を得る権利が確定します。実際に受け取る配当金は、源泉税(約20%)分だけ少なくなります。この20%はコストとなる可能性があります。ここで例にあげて説明したY社の場合は、中間配当金が無いので、ここでかかるコストはありません。

 損益通算を使えるように手続きしていれば、このコスト(支払う配当金相当額と受け取る税引き後配当金の差額)は後から還付される可能性がありますが、そうでない場合は、そのままコストとなります(詳しい説明は、割愛)。

 

制度信用より一般信用を使った方が、リスクが小さい

 優待取りをするための「つなぎ売り」では、「制度信用」または「一般信用」のどちらか選択できます。「制度信用」は、取引所が提供する信用取引で、「一般信用」は、楽天証券が提供する信用取引です。

 どちらを選ぶかで、かかるコストが異なります。優待を得るメリットよりも、優待取りにかかるコストが大きくならないように、注意する必要があります。

 結論から言うと、「制度信用」を使うよりも、「一般信用・短期」を使った方が、リスクが小さいと言えます。

制度信用

 取引所が提供する信用取引。取引所が選んだ銘柄で信用売買が可能。欠点は、売建している時に、「逆日歩(ぎゃくひぶ)」というコストが発生する可能性があることです。逆日歩が発生するか否か、発生する場合いくらか、事前に分かりません。

 逆日歩が発生すると、事後的に支払いを請求されます。運が悪いと、優待で得られるメリットを上回る、逆日歩の支払いが必要になります。

一般信用・短期

 株主優待獲得の「つなぎ売り」に活用できるように設計されている、返済期限14日の一般信用取引です。楽天証券が選んだ銘柄で、信用売りが可能です。逆日歩が発生しないのが、メリットです。売買手数料・貸株料などのコストがかかりますが、事前におおまかな金額がわかるので、優待取りをやるメリットとコストを事前に比較できます。

 制度信用のように、後から想定外のコスト(逆日歩)が発生することはありません。

 

一般信用・短期「つなぎ売り」を早くやるメリットとデメリット

 2018年9月末基準の優待を取るために必要な「つなぎ売り」のスケジュールを確認します。楽天証券で一般信用・短期「つなぎ売り」を行う場合です。

一般信用・短期「つなぎ売り」スケジュール:2018年9月末基準の優待取り

 

 優待取り(ステップ1)は、「株式現物の買い、信用取引の売りを、同じ株数ずつ、なるべく同じ価格で行う」ことです。ステップ1は、9月14日(金)から行うことができるようになります。そのための一般信用・短期の売り注文は、9月13日(木)の19時(午後7時)から、出すことができます。

 ステップ1は、初日(9月14日)にやらなくても、18日(火)・19日(水)・20日(木)・21日(金)・25日(火)に行うこともできます。25日が、最終日です。25日までにステップ1をやらないと、9月末基準の優待は得られません。

 早くやるのと、遅くやるのは、どちらが良いでしょうか?メリットと、デメリットは以下の通りです。

早く(初日・9月15日)ステップ1をやるメリット

 一般信用・短期で、売建が可能な株数には、限りがあります。楽天証券が用意した株数がすべて利用され、無くなってしまうと、つなぎ売りの注文が出せなくなります。人気の優待銘柄では、早めに売建の予約をした方が、つなぎ売りが実行できる可能性が高まります。13日の19時から、売建の予約が可能になります。

早くステップ1をやるデメリット

 売建してから、現渡で返済するまで、日数に応じて、貸株料の支払いが必要です。長く借りるほど、貸株料は高くなります。9月14日につなぎ売りして、9月26日に現渡する場合は、12日分(受渡ベースで9月20日から10月1日まで)の貸株料支払いが必要です。売建可能な最終日(9月25日)につなぎ売りして、9月26日に現渡する場合は、貸株料は4日分(受渡ベースで9月28日から10月1日まで)で済みます。

 貸株料は、年率で3.9%ですが、1日あたりでは、約0.01%です。先に例に挙げたA社で、約定金額5.5万円のつなぎ売りをする場合、1日あたり約6円です。12日分ならば70円、4日分ならば23円の貸株料支払いが必要になります。  

 結論としては、人気の優待銘柄は、貸株料(1日当たり約0.01%)を払う期間が長くなっても、早めにつなぎ売りをした方が良いと言えます。遅くなると、売建可能な株が無くなることが、あるからです。人気のない優待銘柄では、急いでつなぎ売りする必要はありません。ただし、利用可能な株が少ない場合は、早めにつなぎ売りした方がいいかもしれません。

 

一般信用・短期で売建可能な銘柄と、利用可能な株数を見る方法

 楽天証券HP、ログイン後の画面から、「国内株式」→「信用取引情報」→「一般信用売建銘柄」とクリックし、弁済期限「14日」を指定すると、9月末基準の優待取りで「一般信用・短期」の売建ができる銘柄が分かります。ただし、売建可能な株数は、9月13日(木)の19時までは「0株」となっています。13日(木)18時30分前後に、そこに、銘柄別の売建可能株数が、入ります。売建注文は、13日19時から入力可能になります。

 その後、売建注文を予約するお客様が増えると、売建可能株数は、減っていきます。ゼロになると、それ以上の売建注文は出せなくなります。

楽天証券HPで、利用可能な株数を見る方法

 

 上記は、2018年6月14日19時時点の一般信用・短期つなぎ売り可能銘柄を示しています。この時は、6月末基準の優待銘柄のつなぎ売り候補が示されています。この時は、46銘柄が、一般信用・短期で、つなぎ売り可能な銘柄でした。

つなぎ売りを行うにあたってのご注意

 

 

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