中国株市場にも精通するテクニカルアナリスト土信田が語る、中国株市場の見通し

足元の中国株市場の状況ですが、お世辞にもパフォーマンスが良いとは言えません。

上海総合指数の中長期的な推移を辿ってみても、リーマン・ショック後に急落した同指数は、2008年11月に中国当局が打ち出した、いわゆる「4兆元」経済対策をきっかけに底を打ち、2009年7月に戻りのピークとなる3,400台をつけたものの、それ以降は上値を切り下げている格好です。その一方で、下値は2,000水準で安定しています。この水準まで下落すると、当局から景気・金融面で政策が出てくることが多く、サポートの目処として意識されているようです。

とはいえ、下値が確認されているにもかかわらず、また、PERなどの株価指標や配当利回りなどで割安感が指摘されているにもかかわらず、指数がなかなか浮上してきません。その理由としては、①不安材料が多いこと、②需給関係が良くないこと、③投資しづらい環境であることが挙げられます。

まず、①については、景気の減速懸念や不動産バブル、地方政府の債務、シャドーバンキング、労働人口減少と急速な高齢化などをキーワードに、日本でもよく報じられている通りです。②については、中国株式市場の売買が減少傾向となり、資金が集まりにくくなっている中で、多くのIPO予備軍が控えています。そして、③については金融システムの整備や規制緩和、構造改革などの進展が道半ばの段階にあります。

直近の中国当局による政策等の対応は、景気を加速させるというよりも景気を減速させないことが目的となっており、短期的には株式市場が上昇トレンドを描くことは難しいと想定されますが、中長期的な視点では、①~③の課題にきちんと対処し、クリアできるという前提に立つならば、低位安定している現状は投資の良いタイミングと捉えることができます。