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投資信託を使う資産運用の基本
山崎 元
山崎元の投資信託入門
楽天証券経済研究所の山崎元が投資信託についてやさしく解説

投資信託を使う資産運用の基本

2008/3/14
・運用の手順
・家計の分析
・リスク資産への投資額の決定
・リスク資産への投資配分の決定 ・個々の資産分類(アセット・クラス)毎の商品選択
・商品の購入場所の選定
・運用のモニタリングと(必要があれば)修正
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 投資信託で資産を運用することの主なメリットは、(1)少額の投資資金でも分散投資の行き届いたポートフォリオを、(2)自分で手間をかけずに運用でき、(3)分かりやすい形で管理できる(投資信託は毎日基準価額が発表されます)ことでしょう。他方、デメリットは、(1)投資信託のコスト(各種の手数料)と、場合によっては(2)商品が複雑であったり、運用上の無駄があったりすることです。

 運用に自分で手間をかけないことについては、これを退屈だと思う人もいるでしょうし、他方、大いに気楽だと思う人もいるでしょう。また、たとえば、国内株式については自分で個別に銘柄を選んで投資したいが、外国株式については手間やコストの問題もあり、投資信託で運用したいと思う人もいるだろうと思われます。

 自分で行う個別株の投資でも、投資信託に近い分散投資効果を実現することがある程度可能ですし、個々の銘柄を検討する楽しさがあることも事実ですが、少額でも手軽に分散投資効果が得られる投資手段として、投資信託の使い方を知っておくことは無駄にはなりません。また、勤務先の企業が確定拠出年金を導入しているような場合には、その投資選択肢として、投資信託の利用の仕方・選び方を知っておくことがぜひ非必要になります。

 

運用の手順

 投資信託を使うからといって、資産運用の基本的な手順は変わりません。作業手順を順番に挙げると、以下のようになります。

個人の資産運用の基本手順

(1)家計の分析
(2)リスク資産への投資額の決定
(3)リスク資産への投資配分の決定
(4)個々の資産分類(アセット・クラス)毎の商品選択
(5)商品の購入場所の選択
(6)運用のモニタリングと(必要があれば)修正

 個々の作業について補足する前に「よくある誤り」についてご注意申し上げます。それは、(3)→(4)→(5)であるべき手順が、往々にして逆になることです。つまり、最初にどこの金融機関で投資信託を買うかを決めていて、その金融機関の扱い商品の中からセールスマンの勧めなどを聞いて投資対象を選び、結果的に資産配分が決まるという順番なのですが、これはよくありません。

 こうなると、先ず、運用計画全体のバランスに目が届きにくくなりますし、金融機関のセールス行為に伴う、必ずしも買い手にとって有利ではない誘導の影響を受けやすくなります(たとえば、使える資金を全て投資させようとするなど)。また、「国内株式に投資するファンド」という具合に先に、投資対象を決めてあっても、販売金融機関一社の取扱商品の中に、そのカテゴリーでベストのファンドがあるとは限らないので、ファンド選択が最適なものでなくなる可能性が大きくなります。さらに、現在、投資信託は、全く同じ商品(同じ運用会社で、同じ名前の、完全に同じファンド)でも、どこの窓口で購入するかで実質的な手数料が違うことがよくあります。

 どのような投資にあっても通用する原則ですが、自分の投資は売り手の影響を受けることなく自分で決定することが大切です。

 以下、個々の手順に関してポイントを説明します。

 

(1)家計の分析

 家計の分析は、いかなる投資を行う場合でも重要な出発点です。主な目的は、リスクを取った投資を行うことが適切かどうか判断し、幾らまでならリスクを取ることができるかを決めるための情報収集になります。

 個々の家計の経済的な事情は、所得や貯蓄額が同じでも大きく異なる場合があるので、丁寧にチェックしてみましょう。この点については、最も豊富に情報を持っているのは自分自身なので、最終的には自分の責任で判断する覚悟が必要です。ファイナンシャル・プランナーなど専門的なアドバイザーを利用してもいいのですが、証券会社と証券仲介業の契約を結んでいるような、商品の購入先になる可能性のある相手は、アドバイスの内容が客観的でなくなる可能性が大きいので、なるべく避けるべきでしょう。

 

(2)リスク資産への投資額の決定

 次にリスク資産への投資額を決定します。より正確に言うと、取ることができるリスクの大きさ(の上限)の範囲内で、株式や外貨建て資産のような、リスク資産に幾ら投資するかを決めることになります。

 たとえば、同じく1年後に100万円まで損失を出しても大丈夫な場合でも、個別の株式一銘柄だけに投資する場合(最悪の場合、三分の一くらいになることがあり得るので、150万円くらいが上限でしょう)と、投資信託のように実質的に分散投資された商品に投資する場合とでは、投資できる額が異なります。後者の場合、1年間の損失額は最大で投資金額の3、4割程度なので、同じ100万円の許容損失額に対して、250万円から300万円投資することができます。

 よく、「無くなってもいいお金で投資しなさい」と言う人がいますが、多くの場合、文字通り無くなってもいいお金以上の金額に投資することが可能です。必ずしも投資可能な金額の上限一杯まで投資しなければならない、というものではないのですが、取ってもいいリスクの上限を小さく見積もりすぎると、運用の効率が悪くなります。

 

(3)リスク資産への投資配分の決定

 資産配分は、プロのファンドマネジャーや年金基金でも悩む資産運用の難所の一つですが、あまり投資金額が大きくない個人投資家の場合(せいぜい数億円くらいまでの場合)、リスク資産部分の投資は、国内株式と外国株式を中心に考えていいでしょう。

 外国債券は、一単位の投資金額が大きいので、有効な分散投資が難しく、基本的に業者間の店頭取引であるため取引価格の妥当性に自信を持てない場合が多いことから、個人投資家が投資する対象には適していません。また、投資信託の形で外国債券に投資しようとすると、期待リターンに対して手数料(特に信託報酬)が高いファンドが多く、適当な投資対象を見つけることが困難です。

 特に為替リスクを取るファンドの場合は、外国株式への投資で為替リスクを取ることを考えると、トータルで過大な為替リスクを持つことになりやすいので、外国株式への投資を優先する方がいいでしょう(為替ヘッジを効果的に行う場合この限りではないが、個人投資家には難しくて、面倒な場合が多いでしょう)。

 外国株式については、一カ国の株式市場だけに大きな金額を投じると、リスクが大きくなりすぎる場合が多いので、数カ国以上の株式に投資するように商品を選ぶといいでしょう。一般的には、特定の国の株式の有望性によほどの確信があるのでなければ、外国株式への投資にあっては、数カ国以上の株式に投資するか、「iShares MSCI-KOKUSAI」(日本を除いた先進国22カ国の株式が含まれる指数に投資する海外上場のETFです)など、複数の国の株式への投資をベンチマークとするファンドに投資すると良いでしょう。

 結局、個人投資家の場合、リスク資産としては、内外の株式に投資するといいでしょう。国内株と外国株の投資配分比率が問題ですが、日本株と外国株が円ベースでは同じリターンだと仮定して、過去34年のデータでリスクを計算し、最もリスクが小さくなる組み合わせは日本株が4割、外国株が6割でした。この場合、ベンチマークとして使用したのは日本株はTOPIX(東証株価指数)、外国株はMSCI-KOKUSAIで、機関投資家の年金運用などで一般に使われている株価指数です。(計算方法は「山崎元のホンネの投資教室」「ETFを使った個人資産運用~簡便法~」などをご参照ください)。

 為替のヘッジができる前提条件で世界の株式への分散投資を考えると、通常は日本株の比率はもっと低くなりますが、為替ヘッジをしないという前提条件だと、われわれの将来の支出は円建てなので、前記の条件で日本株への投資比率は4割程度になります。

 もちろん、この比率は、投資家の相場観を含む計算の前提条件によって変化しますし、好みを反映しても構いません。

 

(4)個々の資産分類(アセット・クラス)毎の商品選択

 個々のアセット・クラス、たとえば「国内株式」に対応するファンドを選ぶポイントは、(A)中身が明快で投資に無駄がないか(常に100%近くを一つの資産クラスないしその一部に投資しているファンドがいい)、(B)手数料コストは小さいか、(C)残高がごく少なく償還されそうだといったネガティブな特殊事情はないか、という三点です。随分単純だと思われるかも知れませんが、むしろ、これらの三点以外の余計なことに気を取られると運用効率を下げかねないので、注意が必要です。

 たとえば、過去の運用成績は基本的に将来の運用成績とは無関係です。ファンドが掲げる運用方針と、実際の運用プロセスの一致を確認するため、といった目的以上に使えるものではありません。

 また、将来の運用成績が相対的にいいアクティブ・ファンドを事前に選ぶことは、一般投資家にも、投資信託の販売会社、あるいは投資信託の評価機関といったプロにも不可能なので、運用力の評価について外部の情報を頼ることは無意味なのです。

 加えて、一点注意を申し上げておくと、債券と株式、あるいは外貨建て資産など、複数の資産クラスに投資する「バランス・ファンド」(近年「資産分散型」という呼び方もある)は、いつ何に幾ら投資しているかの把握が難しく、また、個々の資産クラスに別々に投資するよりも手数料が割高になりがちなので、個人投資家の投資に適した商品はほとんど存在しません。

 バランス・ファンドでは「プロが資産配分(アセット・アロケーション)を行います」と謳うことが多いのですが、資産配分においてプロが有効なスキルを持っているか否かという点に関しては、残念ながら否定的な研究結果や意見が多く、プロのアセット・アロケーション・スキルに対して過大な期待を持たない方がいいでしょう。

 また、投資信託の売り手側は強調しないことが多いのですが、手数料の影響は非常に大きいと考えるべきです。特に、信託報酬は、運用期間の全てにわたってパフォーマンスにマイナスの影響を与えるので、多くの場合、商品選択の際の最重要の比較項目です。

 加えて、動かし難い傾向性として、一つには「アクティブ・ファンドの平均はベンチマークに負けていることが多く」、もう一つには「相対的にパフォーマンスの良いアクティブ・ファンドを事前に選ぶことはできない」ということが言えます。インデックス・ファンドの方が、手数料(特に信託報酬)が低いことを考えると、個々のアセット・クラスそのもの、ないしは重要な部品(外国株式における個別国の株価指数に連動するインデックス・ファンドのようなもの)となるようなインデックス・ファンドが、有力な商品候補となる場合が多いでしょう。現時点では、内外の株式共に、ETF(上場型投資信託)の信託報酬の安さが圧倒的なメリットを持っているようです。

 投資単位(ETFはある程度まとまった金額で売り買いされる)や売買の手数料なども総合的に勘案して、最も有利なファンドを選択しましょう。

 

(5)商品の購入場所の選定

 前述のように、現在、投資信託は、全く同じ商品でも、購入窓口によって実質的な手数料が異なる場合がしばしばあります。家電製品を買う場合に、「どこで買うのが有利か」をネットなどで調べるような考え方で、実質的な手数料の安い購入場所はどこなのかは、ファンドを購入する前に必ず調べておきたいポイントです。

 

(6)運用のモニタリングと(必要があれば)修正

 もともとの投資配分が適切であれば、投資信託で投資する場合、価格の変化が安定しているので、個別株で投資する場合よりも、運用期間中に手を加える必要性が発生する頻度は小さいでしょう。しかし、投資したファンドの価値がどのように変動しているかは、時に重要な情報となることがあるのでなるべく頻繁に見ておきたいところです(たとえばベンチマークの動きと不自然に乖離していないか等を見ておきましょう)。

 また、たとえば、国内株式と外国株式の運用パフォーマンスが大きく異なった場合などに、資産配分のバランスが大きく歪むことがあります。細かな変動に神経質になる必要はありませんが、年に一度程度は、資産配分が適切かどうか、前提条件も含めてチェックしておくといいでしょう。

 自分の投資について、時々どうなっているのかを把握することは必要ですが、基本的には、一度バランスの良いポートフォリオを作ってしまうと、これを調整しなければならないような事態はそう頻繁には発生しません。将来、お金が必要になるか、あるいは投資対象としている株式市場の株価水準が明らかに分かるほど割高になるなど特別な環境変化がない限り、一度買ったファンドは、じっと持っていることが適切な運用になることが多いでしょう。関心を持ってチェックはするけれども、結果的には長期投資になる、といったイメージを持って投資するといいでしょう。

 

(補足)楽しみとしてのアクティブ・ファンド投資について

 投資家に可能な判断と、投資家の損得を厳密に考えると、信託報酬に大きな差がある現在、手数料が相対的に高いアクティブ・ファンドに投資することは、経済合理的とは言い難いことは否めません。

 しかし、運用者の投資哲学やファンドのコンセプトなどに共感して、多少手数料が高くてもアクティブ・ファンドに投資することを、「楽しみ」の一つとして肯定できる場合もあるでしょう。どの程度の手数料差を許容するかは、投資家個人の価値判断によるものなので、一概に決めることはできませんが、あくまでも「楽しみ」にコストを払っているのだという認識があれば、アクティブ・ファンドに投資することも構わないでしょう。

 今後、手数料が安いアクティブ・ファンドが多数登場するようになった場合には、現在よりも多くの人が、低廉なコストで、アクティブ・ファンドへの投資を楽しむことができるようになるでしょう。

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