米労働市場減速、11、12月は0.50%利下げ期待高まる

 米国の8月雇用統計が6日に発表されましたが、強弱混合の内容でした。非農業部門雇用者数は前月比11.4万人の増加と市場予想を下回り、過去2カ月分も8.6万人と大きく下方修正されました。

 一方、失業率は4.2%に改善し、時間当たり賃金の伸びが前月の0.2%から0.4%に加速しました。ドル/円は1ドル=144円近辺から142円近辺の間を乱高下する相場となりました。

 雇用統計は今月のFOMCで0.50%の利下げが決定されるとの確信を強めるほどではありませんでした。しかし、労働市場の減速を示には十分な内容でした。そこにタカ派のウォラーFRB(米連邦準備制度理事会)理事が年内大幅利下げの可能性を否定しなかった発言も重なって、結局、米金利の低下とともに、1ドル=141円台後半の円高となりました。

 米8月雇用統計の発表直後、9月の0.50%利下げ期待は一時50%を超えましたが、その後、30%近辺に下がりました。しかし、11月、12月は労働市場の減速から0.50%の利下げ期待が増える結果となっています。つまり、これまでの年内1.0%利下げ期待だけではなく、1.25%利下げ期待も出始めているということです。

ECB理事会利下げなら、円高圧力強まる可能性も

 週明け9日の東京株式市場では、日経平均株価の前週末からの下落幅が米景気減速懸念と円高から一時1,000円超となりましたが、下落幅縮小とともに1ドル=143円台後半へと円安が進み、141~143円台を行き来する展開となり、来週のFOMC待ちとなっています。

 17~18日のFOMCまでには、米8月CPI(消費者物価指数)が11日に発表されます。この結果次第では利下げ幅拡大の思惑が強まる可能性があり、相場が動きそうです。CPIの前年同月比上昇率は前月(2.9%)を下回る予想となっており、ドル/円の上値を重たくしています。予想通りであれば、前月を下回っても相場は限定的な動きになりそうです。

 しかし、予想を下回った場合は、0.50%の利下げ期待が高まることも予想され、もう一段の円高が進むかもしれないため注意が必要です。逆に予想を上回っても、金融政策の焦点は物価より雇用に移っているため、9月利下げや今後の大幅利下げを後退させる要因にはならないと思われます。

 12日のECB(欧州中央銀行)理事会でも9月利下げ期待が高まっており、注目です。今後の方針としてハト派姿勢を強めるかどうかもポイントです。ユーロ圏の8月の物価は前年同月比2.2%上昇と前月の2.6%上昇から一段と鈍化し、3年ぶりの低水準です。

 ECBの利下げ時期が遅れると、物価目標の2%を下回るのではないかとの懸念も出始めています。さらにドイツ経済はマイナス圏であるため、ユーロ圏全体の経済を失速させないためにも、9月利下げに加えて年内の追加利下げ期待が高まることが予想されます。

 ECBが12日に利下げを決定すれば、これまでの米利下げ期待によるドル安ユーロ高からユーロ安、そしてユーロ安・円高地合いに変わると予想されます。そして、この対ユーロでの円高圧力が円高ドル安の後押しになる可能性があります。また、ECBのハト派姿勢が強まれば、円高ユーロ安圧力も強まるでしょう。

 さらにFRBが18日に利下げを決定し、追加利下げを示唆する内容であった場合は、一段とドル売り圧力が強まり、円高が進むことが予想されます。

 ただし、このシナリオは一般的な見方であり、この思惑が事前に市場に織り込まれる過程で相場が動くことも予想されるため注意が必要です。

 また、期待が大き過ぎれば、事前のポジションが大きくなり過ぎて、利下げ決定の事実が分かった段階で反対の動きをする場合があります(今回の場合、円高シナリオですから、利下げ決定後円安に動くということになります)。

 しかし、ポジション調整が一巡すれば、再びドル売り圧力、ユーロ売り圧力、円高圧力は続くと思われます。