長期視点ではさらなる価格上昇が起き得る

 短中期視点で、米国の利下げをきっかけに「株高・金(ゴールド)高」が起き得ると述べました。歴史的な高水準であるものの、ワクワク感・ドキドキ感を糧に、リスクに配慮しつつ短期的な価格上昇を狙うのも一計なのかもしれません。

 では中長期・超長期視点では、どうでしょうか。筆者はSNSとESGの負の面がもたらしている世界分断・民主主義の行き詰まりを背景とした、中央銀行の金(ゴールド)保有高増加、および見えないジレンマへの警戒感を背景とした上昇圧力が継続し、上昇すると考えています。

図:2010年ごろ以降の世界情勢と各種コモディティ(国際商品)価格上昇の背景

出所:筆者作成

 ESGは2010年ごろから、投資先を選別するツールとして積極的に用いられ始めました。そして確かに、温暖化ガスの排出削減や労働環境の改善など、大きな成果は上げました。ですが、普及が急速・一方的であったため、社会にひずみや分断を生み出しました。「ESG投資がもたらす光と影」と例えられることもあります。

 2023年には、世界のESG投資信託から過去最大の資金流出があった、温室効果ガス排出の正味ゼロを目指す保険業界の国際加盟団体がピーク時から半減した、気候変動関連の株主提案・賛成率が過去10年で最低になった、米国の運用大手のCEOが「ESGという言葉は使わない」と発言した、などESGを否定する動きが強まりました(大手メディアより)。

 また、SNSは、2010年代に起きた北アフリカ・中東地域における民主化の波「アラブの春」や、2016年の英国のEU(欧州連合)離脱を問う国民投票、同年のトランプ氏が勝利した米大統領選挙などに、深く関わったといわれています。

 SNSが増幅させた「大衆の渦」によって、アラブの春では複数の国で武力行使による政権転覆が起きました。また、2016年の国の行く末を左右する複数の大規模な選挙で、民主主義の根幹を揺るがす、思わぬ結果が出ました。SNSは、特定のグループを強く批判する攻撃的なポピュリズム(大衆迎合)を増幅させて民主主義を脅かす装置、ともいえます。

 このような、2010年以降続いている世界全体の社会・市場の大きな変化の流れを受け、特に新興国を中心とした各国の中央銀行による金(ゴールド)の買いが続いています。

 以前の「中央銀行が金(ゴールド)に注目する理由」で述べたとおり、長期的な価値保全・インフレヘッジ、危機時のパフォーマンス、効果的なポートフォリオの分散化などが主な理由で中央銀行は金(ゴールド)の保有高を増やしています。

図:中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移

出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料を基に筆者作成

 金(ゴールド)相場は足元、歴史的な高水準で推移しています。ですが、長期視点で見れば、まだまだ、上昇する可能性があると考えます。

 とかく金(ゴールド)は、「興奮」に関わるキーワードを当てはめられる傾向がありますが、長期視点でも価格上昇が想定できる状況だからこそ、冷静に社会不安などをきっかけとした「危機管理」という動機からスポットライトを当てることが重要であると、考えます。

[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

長期:

純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)

純金積立・スポット購入

投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天ポイントで購入可能。以下はNISA対応)

ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド
ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)

中期:

関連ETF(NISA対応)

SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
純プラチナ上場信託(プラチナの果実)(1541)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)

短期:

商品先物

国内商品先物
海外商品先物

CFD

金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム