AI向け需要は好調、半導体関連株の割高感は解消

 7月以降、世界の半導体関連株は調整が続いています。下落のきっかけは7月に米国が同盟国に対して対中半導体規制でさらに厳しいルールを検討中と警告したと報じられたことや、対中通商政策を強化したいトランプ氏の再選確率が高まったことなどが主な要因です。

 特に日本の半導体関連銘柄のパフォーマンスが低調で、日経平均株価を大きくアンダーパフォームしています。図1は日本の半導体株指数を予想EPS(1株当たり利益)と予想PER(株価収益率)に分解したものです。

 7月から8月にかけて予想PERが大きく低下しており、投資家の期待値が修正されたことが分かります。その結果、足元の予想PERは過去平均近辺にあり、割高感は解消されている状況です。

(注)予想EPSは起点を100として指数化、期間は取得可能な最長期間の2021年8月11日から2024年11月18日の日次
(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成

 半導体産業には好況と不況が循環するシリコンサイクルがあります。図2はSOX指数の騰落率と世界の半導体売上高の伸び率(ともに前年同月比)を示していますが、SOX指数は足元まで19カ月連続プラス圏で推移しています。プラスの期間はおよそ24~36カ月継続することから、現在はシリコンサイクルの中盤から後半に差し掛かっているとみられます。

※過去のパフォーマンスを示しており、将来の成果を保証するものではありません。
(注)期間は2009年1月から半導体売上高の伸び率は2024年9月まで、SOX指数の騰落率は2024年10月まで
(出所)世界半導体市場統計、BloombergよりGlobal X Japan作成

 10月に発表された半導体関連企業の決算では、先端半導体向け露光装置を手掛けるオランダのASMLは受注が事前予想を大幅に下振れたほか、マイコンを手掛けるルネサスエレクトロニクスも産業/インフラ/IoT(モノのインターネット)向けで計画を下振れるなど、一部で需要の弱さが顕在化しています。

 一方、AI半導体に対する需要の強さは健在です。ファウンドリ最大手の台湾TSMCは、2024年通期のAI関連売上高が前年比3倍となり、売上高の10%台半ばを占める見込みと発表しました。

 また、半導体テスト装置で世界トップクラスのシェアを誇るアドバンテストは、AI向け半導体の複雑化によりテスト時間と項目が増加し同社が恩恵を受ける流れに変更はなく、力強い需要が継続しているとの見方を示し、少なくとも2025年度上期まではAI関連のテスタ需要の強さが続くとしています。

 来年1月に就任するトランプ次期大統領の政策や半導体関連企業の決算発表を受けて株価が大きく上下する局面が想定されます。

 しかし、今後も社会のデジタル化に伴う半導体需要の拡大やAIの普及が需要を一段と押し上げ、世界の半導体市場は2030年に2023年比で倍の約1.1兆ドルまで拡大すると見込まれています*。そのため株価が下がった局面は中長期的な投資のエントリーポイントになると期待されます。

*ASML予想

半導体市場は大手企業が寡占

 改めて半導体業界について確認します。

 世界の半導体市場はサプライチェーン全体で大手企業による寡占が進んだ特殊な市場です。データの記録を行うメモリ半導体と、頭脳の役割を担うロジック半導体のシェアは、それぞれ上位5社で約90%、約56%も占めています。

 寡占が進んでいるのは半導体チップだけではありません。製造を担うファウンドリは上位4社で約82%、主要材料であるシリコンウエハは上位3社で約74%、製造に不可欠な製造装置は上位5社で約73%のシェアとなっています。半導体は製造プロセスの超微細化を背景に大規模な設備投資が必要な分野で、資金力のない新興企業が参入しづらいためです。

※四捨五入の関係で必ずしも100%にならないことがあります。
(注)半導体メモリ、ロジック半導体、ファウンドリは2021年時点、シリコンウエハは2020年時点、半導体製造装置は2022年時点の売上高シェア
(出所)Omdia「令和4年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子デバイス産業およびその関連産業における市場動向及び政策動向調査)(2023年3月)」、経済産業省商務情報政策局「半導体・デジタル産業戦略(令和5年6月)」、SiltronicおよびIHS Markit、Yole DéveloppementよりGlobal X Japan作成

 なお、日本企業は半導体の製造装置や部品、素材に強みを有しています。製造装置で約31%、部品・素材で約48%と高い競争力でシェアを獲得しており世界の半導体市場を支えています。

※四捨五入の関係で100%にならないことがあります
(注)2021年度売上高シェア実績
(出所)経済産業省商務情報政策局「半導体・デジタル産業戦略(令和5年6月)」よりGlobal X Japan作成

 つまり、大手企業による寡占が進んだ半導体業界では、高いレベルで競争を行う技術革新をリードする企業をよりすぐることで、半導体市場全体の成長を捉えることが可能だと考えられます。

半導体の新たな投資戦略、登場。

 2024年11月21日に上場したグローバルX 半導体・トップ10-日本株式 ETF(282A)は、日本の代表的な半導体関連10銘柄で構成される指数(Mirae Asset Japan Semiconductor Top 10 Index)への連動を目指すETF(上場投資信託)です。

 なお、東証にETFを上場する際、これまで15銘柄以上で構成することが求められていたため、今回の10銘柄構成は東証上場ETFで初めてとなります。

 対象指数では、半導体産業から20%以上収益をあげている日本企業のうち時価総額上位10銘柄を選定します。図5は構成全10銘柄で、製造装置で世界トップクラスの技術力を誇るアドバンテストや東京エレクトロン、シリコンウエハで世界シェア首位の信越化学工業、2位のSUMCOも組み入れられています。

※個別銘柄の推奨、今後の組入を示唆・保証するものではありません。
※最新の組入銘柄はウェブサイトをご確認ください
(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成、10月25日時点

 半導体関連株は1株当たりの株価が高い、値がさ株が多いのが特徴です。最低単元の100株投資した場合、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)成長投資枠の年間上限である240万円を超える銘柄もあります。当ETFの売買単位は1口で、1口あたりの基準価額は約1,000円となっているため、当ETFを活用すれば少額から半導体関連10銘柄に投資が可能です。

 図6は対象指数のパフォーマンス推移です。TOPIX(東証株価指数)を大きく上回って推移していますが、今後も世界の半導体市場は拡大が続く見通しであり、日本の代表的な10銘柄で市場の成長を捉えて中長期的にも高いパフォーマンスが期待されます。

 当ETFは10銘柄集中投資型のため構成銘柄の株価変動を受けやすく、短期的に値動きが大きくなりやすい点には注意が必要ですが、ETFはリアルタイムで取引できるので下がったら投資し上がったら売却するなど、機動的な売買にもご活用いただけるでしょう。また、運用管理費用は税込0.11%と低く、NISA成長投資枠での中長期的な投資にも活用できます。

※過去のパフォーマンスを示しており、将来の成果を示唆・保証するものではありません
(注)対象株価指数の算出開始日は2024年10月10日。算出開始日以前の指数に関する情報は全て指数算出会社がバックテストしたデータ。期間は2018年7月20日から2024年10月25日。起点を100として指数化(配当込み、日次)
(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成

 ETFの詳細について以下の動画で解説しています。ぜひご視聴ください。