学生時代から海外に興味を持ち、渡米をきっかけに始めた米国株投資で資産1億円を達成した、米国株投資家・ともさん。NY市場が閉まった後、その日の米国市場の動きを毎日、約20分に端的にまとめてYouTubeで発信しています。今回は前編として、ともさんが投資を始めたきっかけや投資手法について伺いました。

▼ともさんプロフィール

米国株をメインとするアラフォーの専業投資家。社会人になってから、FXや日本株高配当銘柄から投資をスタート。自力で資金を貯めて退職し、米国留学。リーマン・ショックを米国で体験する。帰国後、本格的に投資を開始。米国勤務ができるところを探して再就職し、念願かなって渡米したことをきっかけに、米国株に完全シフト。13年の投資歴で資産1億円を達成し、専業投資家へ。現在は米国株投資情報満載のYouTubeチャンネルで、ほぼデイリーで情報発信している。登録者数は9万人超え。
YouTube:とも米国株投資チャンネル 
X:とも@米国株YouTuber(@tomosinvest

リーマン・ショックを米国で体験!

トウシル:毎朝約20分の、YouTubeの米国市況解説が「分かりやすい!」と評判です。米国株投資で見事、総資産1億円を突破したというともさんが、投資に目覚めた時期やきっかけを教えてください!

ともさん:大学卒業後、旅行会社に就職したのですが、3年間かけて留学費用を貯め、20代半ばで、米国留学していました。そのさなかにリーマン・ショックが起こったのが、「投資をしたい!」と思ったきっかけです。

米国での住宅バブルと同時に、サブプライム住宅ローンが普及。サブプライムローンとは、通常のローンが組めないような信用力の低い層でも、ほとんど無審査で組める住宅ローンで、貸し手は当初から返済不能に陥ることを予想して、担保にとった住宅を転売することで債権を回収する予定だった。しかし、住宅バブルが崩壊し、滞納額が一気に増加。差し押さえ件数も急増して住宅価格が大きく下落し、被った損失を挽回できなかったヘッジファンドが倒産。中でも、2008年9月15日、米国の大手投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が経営破綻したことをきっかけに、連鎖的に発生した世界金融危機を「リーマン・ショック」と称する。

トウシル:ともさんは歴史的な金融危機を、現地で目の当たりにしたんですね。世界的に株価が大暴落して、普通なら「投資は怖い。やめておこう…」と考えそうなのですが…。

ともさん:いや、逆に、「今、お金を持っていたら、普通なら高くて手が出せない銘柄も安く買える大チャンスなのに!」と思ったんです。ただ、米国にいたころは貧乏留学生だったので(笑)、指をくわえて見ているしかありませんでした。ですから、留学を終えて帰国してから、すぐに証券口座を開きました。

トウシル:それにしても、惨状を見た後で、それをチャンスと思えるなんて、スゴイ度胸です。留学は自分のお金で行かれたんですか?

ともさん:はい。大学卒業後は、旅行業界に就職し、とにかく留学するための3年間、節約しまくってお金を貯めました。飲み会も先輩がおごってくれる回にしか行かず(笑)、超節約生活で資金を貯めたんです。

トウシル:どうして留学しようと思ったんですか?

ともさん:高校生の時に、初めての海外旅行で欧州に行き、母の友人宅に滞在させてもらったのですが、大きな庭やプールがある家で、いつか自分も海外に住んでみたい!と思うようになったんです。そこから地道に英語を勉強し、夢をかなえるために3年間、とにかく資金を貯めました。

トウシル:夢のために努力されたんですね。それにしても、「リーマン・ショック=チャンス」と考えられたということは、それまでに投資の知識が少しはあった、ということでしょうか?

ともさん:両親が普通に投資をしていて、株券を見せてくれたり、投資自体は身近な環境で育ちました。また、留学先でできた友達って、やっぱり両親が裕福な家庭が多くて、彼らから事業や投資の話を聞いていたのも、投資に対する興味が募り、心理的なハードルが下がった理由です。

 特に、留学時代は、滞在費を少しでも浮かすために、台湾人の友達とルームシェアをしていたのですが、彼が投資に詳しくて、一緒に株価や為替のチャートを見たりしていました。

トウシル:家庭環境と、留学時代で、投資への意欲が募っていったんですね。留学から帰国後、まずは何から投資を始めたんですか?

ともさん:海外旅行が好きで、常に為替相場を見ていたこともあり、最初はFXから入りました。ですが、FXは、誰かが得をすれば、誰かが必ず損をする「ゼロサムゲーム」といわれる投資なので、とても難しいと感じました。また、FXをしていると、一時も気が抜けず、働いている最中も値動きが気になってしまう点も、「自分に合わないな」と感じた理由です。

 結局、FXでは、まずは手始めに、という感じの投資額だったので、損をしても数万円ほどで済みましたが、早々に撤退しました。

トウシル:FXは性格や環境が合わなかったのですね。FXの次に挑戦したのが米国株ですか?

ともさん:いえ。日本株の高配当投資を始めたんです。留学後は貯金ゼロの状態だったので、少しでも配当が入ってくれば、給料の足しになるかと思って。ただ、これも投資資金が少なかったので、本や雑誌で「10万円以下で買える銘柄」のような特集を見て、少しずつ買い始めました。

 最初のころはNTTドコモ(現在はNTT[日本電信電話:9432]によるTOBで完全子会社化)やみずほフィナンシャルグループ(8411)などを買ったのを覚えています。

 配当金が目的だったので、売買は繰り返さず、給料が入ってくるたびに地道に買い増ししていました。当時はチャートや決算もあまり見ておらず「もう少し株数が欲しいな」「10万円買ってあるから、あと30万円くらい追加で買ってみるか」など、深く考えずに、感覚で取引していましたね。

トウシル:貯金ゼロからスタートしたとなると、資金も最初は少額からスタートですね。

ともさん:はい。とにかく節約節約で、生活を切り詰めて資金をつくっていました。実家に住まわせてもらって家賃を節約したり、水筒を常に持ち歩きカフェ代や飲み物代を浮かしたり。ランチも、近くの安いスーパーで、サラダと春雨スープを買って500円以内に抑えるなどして、入金力をアップしていました。

仕事での渡米をきっかけに米国株投資へシフト

トウシル:日本株の高配当から、今の米国株投資に移行されたのは、どのタイミングからですか?

ともさん: 2014年に、留学から帰国後、再就職した勤務先で米国駐在することが決まり、渡米したタイミングです。渡米前から米国株を入念にチェックしていて、米国株の高配当銘柄は、日本の高配当銘柄よりも配当利回りが非常に高かったんです。

「これは日本株に投資するより魅力がある」と感じていました。渡米すると、住民票を抜くので基本は日本の証券口座を維持できません。ですから、念願かなって渡米が決まった後、渡米直前に日本株を全て売却しました。

トウシル:米国も高配当銘柄にすっぱり切り替えたんですか?

ともさん:渡米当時、米国の高配当株は、利回りが高くても株価自体は下がっていたので、いったんは米国株の高配当銘柄に資産を組み替えました。その後、S&P500種指数(S&P500)に連動するIVV iシェアーズ・コア S&P 500 ETFと、米国の成長株に組み替えました。

 ただ、FXの時と同じで、株価の上下を敏感に察知して短期で売買するのは、僕の性格に合っていないので、基本的には活発な売買はせず、中長期スタンスです。

トウシル:頻繁に売買はされない、とのことですが、ともさんの銘柄選びの基準をお聞かせください。

ともさん:三つあります。まず一つ目は業績。中でも売り上げ、EPS(1株当たり利益)、今後の成長を、決算のたびにしっかり見て確認します。

 二つ目はチャート。右肩上がりであることは基本なんですが、*50日移動平均線より上、**200日移動平均線で反転して上昇…など、短期と長期の指針がしっかり上を向いている形が理想です。

 他にもカップウィズハンドル(上昇した後にいったん落ち着き、その安値から再び前回の高値まで回復し、その後上昇する、株価上昇を示す信頼性の高いチャートパターンの一つ)が出現しているときも、大きな利益を得られる可能性があると判断して買うことがあります。

*50日移動平均線:過去50日間の株価の終値を合計して50で割って算出した数値を、チャート上につなげた線。比較的短期の株価動向を見ることができる。/**200日移動平均線:過去200日間の株価(終値)を合計して200で割って算出した数値を、チャート上につなげた線。50日移動平均線より長期視点での動向を追える。

トウシル:テクニカル面でしっかりと動向を追うのですね。三つ目はなんですか?

ともさん:三つ目は、僕をワクワクさせてくれるか、という点です。

トウシル:お! 急に違う目線が出てきましたね。ともさんは、どんな銘柄にワクワクするんですか?

ともさん:一言で言うと、成長性です。そもそも投資は、企業の成長を買うものなので、僕がワクワクするような、ロマンのある未来を描いている企業は買いたくなります。銘柄で言うと、やはり未来の車を作ろうとしているテスラ(TSLA)、AI分野で大きく成長しているエヌビディア(NVDA)などです。

トウシル:業績、チャート、ワクワクの中で優先順位が高いのはどれですか?

ともさん:僕は業績から入ることが多いですね。いいチャートを見ると全部買いたくなってしまうので(笑)、チャートから入ることはありません。現在の業績が良く、未来にワクワクできる企業の中で、いいチャートがあれば買うといった順番です。

 また、僕は臆病な性格なので、値動きの激しい中小型株は買いません。たとえ株価が下がったとしても、また上昇の期待が持てる大型株の方が好きです。

トウシル:ワクワクはしたいけれど、不透明なリスクは避けて投資するスタイルなんですね。

ともさん:はい。一見、難しそうに見えるかもしれないけれど、米国株投資って、長期、分散の「王道」の投資手法でリターンが期待できると思っています。確かに米国にはワクワクする企業がたくさんあって、中小型株の中には、当たれば、100%や200%の利益が期待できる銘柄もあるかもしれません。

 ですが、僕はそのような中小型株に、何千万円単位で投資をする勇気はなく、10%や15%の成長が堅く見込める大型株に、しっかりと資金を投入していきたいと考えています。

トウシル:ともさんのお話を聞くと投資で失敗したことがないように思えるのですが、過去に大きな損失を出したことはありますか?

ともさん:もちろん失敗したこともありますよ。コロナショックの時、いろんな銘柄の株価が上がっていて、その中で、日本では禁止されている大麻関連のETF(上場投資信託)を買ったら翌日に30%近く値下がりしてしまったことがありました。

 複数の株式や債券の加重平均で変動するため、個別株よりも比較的値動きが安定しているはずのETFで、30%も下がったのは衝撃的でした。

 米国株は、日本株と違って、急激な値下がりを防ぐサーキットブレーカー(市場が短期間で大きく変動した際に、市場参加者をクールダウンさせる目的で、取引を一時停止させる措置)という制度もないので、「下がる時は本当にどこまでも下がるんだな…」と実感しました。

トウシル:なるほど…。損も経験した上で、今の投資スタイルに行き着いたんですね。

ともさん:はい。もう「王道」が安心だなと(笑)。

好きな銘柄は大型のハイテク株!

トウシル:ともさんの、現在の主力銘柄を教えてもらえますか?

ともさん:今は大型ハイテク関連の銘柄を6銘柄に絞って保有しています。その中でも、先ほど名前を挙げた、テスラとエヌビディアがそれぞれ17%ずつを占めていて、私の主力銘柄といえると思います。

トウシル:いずれも、先ほどおっしゃっていた「ワクワク銘柄」なんですね。

ともさん:はい。中でもテスラは、以前から大好きな大型株で、ロボタクシー「サイバーキャブ(Cybercab)」が発表され、「どんな製品が出てくるのだろう」とワクワクしながらチェックしています。

 僕が最初にテスラを買ったのはコロナ前の2020年ごろだったので、最近のEV需要の低下で株価が落ちても含み益があり、今でも手放さずに持っています。最近、株価もまた上がってきているので、ポートフォリオの中では稼ぎ頭ともいえますね。

 エヌビディアは、最もワクワクしている銘柄と言っても過言ではありません。AIによって半導体需要は高まっていますし、CEOのジェンスン・フアン氏の発言を聞いても、まだまだ伸びると期待させてくれます。前回の決算で新製品の遅れや成長率の低下もあって株価は下落しましたが、僕は心配していません。

 新製品の遅れが発表されても「実は早めに出荷できました」となれば大きく株価が上昇する可能性もありますし、もし本当に遅れて出荷されても2025年や2026年と、将来の成長を見て投資をしています。常に数年先の成長を図って、成長すると見込めた銘柄の株価が下がれば臆せず買っていく、というスタンスです。

革ジャンを着て登壇することが多いため、X上では「革ジャンCEO」と呼ばれているエヌビディアのCEO、ジェンスン・フアン氏。ともさんは、同社の決算書はもちろん、メディアでの公式発言もチェックして、動向を「ワクワクしながら」追っている。

トウシル:ともさんは比較的早くからエヌビディアの成長を見越して、ポートフォリオの主力になるまでコツコツ買われていたのですね。現在、エヌビディアは多くの投資家が注目していますが、ともさんが最初に買い始めた時は、今のような状態を想像できましたか?

ともさん:いえ、まったく想像できませんでした。おそらく昨今のAIブームは、誰も予想できなかったと思います。もともと僕は半導体データセンターとゲーミングの事業が伸びていたのでエヌビディアが気になっていたのですが、2023年1月にAIが発表されて、そこの上昇で、さらに買い増しをしました。

トウシル:今後、ともさんが注目している業界はありますか?

ともさん:今は原子力発電関連に注目しています。米国の電力が不足しているというニュースもあるので、原子力はこれから注目が高まっていくのではと考えています。

トウシル:逆に、懸念している業界はありますか?

ともさん:米国の景気悪化が懸念されているので、一般消費財はしばらく厳しい状況が続くとも考えています。中国経済が不景気という理由もあったのですが、今の中国は大規模支出をしようとしていて、反転も見え始めているので判断が難しいですね。

トウシル:後編では、ともさんが感じる米国経済の状況や、日本にいても米国株に壁を感じることなく投資できる方法などについて伺います!

後編「夢は50歳でFIREし、キャンピングカーで世界一周!米国株投資家・ともさんインタビュー[後編]」へ続く>>