米国の金利低下時に気をつけたい投資2:短期間の外貨預金や米ドル建債券への投資
2022年以降は日米金利差が大きく拡大することによって、為替も1ドル=110円台から160円台まで円安へと急速に動きました。米国株式や外貨建て資産へ投資をしていた人にとっては、それだけで円安によって資産が大きく評価益が出たことでしょう。
円安ということで比較すると、私たちが保有する円建て資産の価値が下がったとも言えますが、投資において評価益が出ていることに変わりはありません。
この日米金利差の拡大によって、円安と債券価格の下落が起きました。つまり、米国が利下げをすることで、今度は円高と債券価格の上昇が見込まれます。ただし、債券価格は満期の短い短期債では金利の影響はほとんどなく、長期債ほど金利変動によって価格も大きく動きます。
外貨預金の場合は、受取利息と為替変動を考えれば良いのですが、外貨建て債券への投資をする場合は、受取利息と為替変動に加えて、債券価格の値動きを考える必要があります。
なお、相場はすでに利下げを織り込んでおり、参考指標とされる米国国債10年物の利回りはすでに下がってきています。このような状態では、現状利率が高い外貨預金や短期の米ドル建債券への投資は、もらえる利息や運用利回り以上に為替が円高に動くことで評価損となることが懸念されます。単純に高い金利がもらえれば良いと考えてはいけません。
米国の金利低下時に気をつけたい投資3:積立投資の銘柄や金額の変更
米国市場という巨大なマーケットにおける政策金利の変化という金融政策の結果、株式・債券といった私たちが投資する上で代表的な資産や為替が大きく変動することになります。日本人にはなじみが薄くなっていますが、米国の利下げや利上げという出来事は否が応でも私たちの生活に大きな影響を与えます。
特に株式相場や為替の動き方がこれまでとは異なる様子をみせる可能性も十分にあり、それはこれまで順調に積立投資で資産形成をしていた投資家へさまざまな影響を与えます。
投資家は相場の変化に対して柔軟に対応することによって、より良い成果を出そうと画策したり、これまでとは違う値動きに不安になって投資に消極的になったりすることが考えられます。
もし、皆さんが相場の変化を捉える投資を目指しているなら、その投資行動は当然のことですが、積立投資で相場のトレンドに関係なく淡々と投資をすることを目指しているなら、相場の変化に対応しようとすること自体が間違っている可能性があります。
特に気をつけたいことは、安易に投資対象の銘柄を変更したり追加したり、金額を相場の変化に合わせて増やしたり減らしたりすることです。
積立投資において大切なことは、相場変動にとらわれずに淡々と機械的に毎月同じ金額を積み上げていくことです。もちろんきちんとした意図をもって追加投資をすることには問題ありませんが、積立投資とは別の投資を考えて管理したほうが良いでしょう。
投資判断を適切に行うには精神的な安定が必要
慌てないためには「投資知識」を増やして「投資経験」を積むこと
過去の相場からは学ぶことがたくさんあります。特に相場が大きく動いた際にどんなことで失敗したり、損失を被ったりした話はぜひ知っておきたいものです。過去と現在では世界の経済情勢や投資の考え方など違う点もたくさんありますが、案外、失敗事例では同じようなことを繰り返しています。
大きな失敗をしてしまう代表的な例は、相場の上昇が続き、投資がうまくいっているからと多大な金額を投資しているときに、株式や為替の急落が起きてしまうことです。投資がうまくいっている時にはどれだけリスク(投資資産の価格変動)の高い投資をしていても、自分にとって過大な金額を投資していても問題はなく、むしろ資産がどんどん増えていきます。
しかし、それはある日、相場が反転した時に終わりを迎えます。適切な投資とは、自分に合ったリスクと金額の範囲内で行うことです。相場が急変したから対応するのではなく、相場が急変しても落ち着いて対応できるように投資をすることが何よりも重要です。
■著者・西崎努氏の著書『やってはいけない資産運用 金融機関のカモにならない60歳からの資産防衛術』(アスコム刊)、『老後資産の一番安全な運用方法 シニア投資入門』(アスコム刊)が大好評発売中です!
【要チェック】
楽天証券「トウシルの公式YouTubeチャンネル」では、同筆者が執筆した「やってはいけない資産形成」のコラムを動画で視聴できます。
また、リーファス社の公式YouTubeチャンネル『ニーサ教授のお金と投資の実践講座』では、同コラムの他にも動画でお金と投資の知識を学ぶことができます。