AIが変える世界
AI(人工知能)とは言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピューターに行わせる技術のことです。1956年に初めてAIという言葉が使われて以来、AIの能力は日進月歩で進化し徐々に人類に近づいてきました。
最近では大量のデータを処理する機械学習や、AIが自ら学習を進めるディープラーニング(深層学習)によって能力を高めた「生成AI」が登場するなど、飛躍的な進歩を遂げています。現在のペースで行くと今後10年程度でAIはあらゆる能力で人間を上回る可能性が高いと考えられています(図表1)。
AIという革新的なテクノロジーが普及する背景には、AIが多くの社会的課題の解決手段となるとの期待があります。社会的課題の例として人口動態を見てみると、世界規模では人口増加が続きますが先進地域では今後人口減少・高齢化の進展が予想されています。
AIは人間よりも効率的かつ正確に作業をこなせ、短時間で膨大な量のデータ処理が可能なため、労働力不足の解消や生産性の向上が期待されます。
また、AIが人間の創造性や感性を一部補うことができるようになってきているため、これまで考えられなかったような新しいサービスや商品を開発したり、気候変動問題などの地球規模の課題に対する解決策を生み出すことも期待されます。
AIは既に工場における機械やロボット、医療、金融分野などさまざまな場面で活用されており、コスト削減や生産性の向上、リスク予測および軽減、新たなビジネスやサービスの開発などを支えています。
図表2はAIによって生み出される世界のGDP(国内総生産)の予想ですが、AIの普及に伴い世界のGDPは2030年までの8年間で11.8兆ドルも増加すると予想されています。これは日本の年間GDPの約3年分に当たります。当初の成長は主に労働生産性の向上によるものですが、その後は徐々に消費者需要が増加することで拡大していくと考えられています。
AI普及で急増する電力需要、救世主は原子力発電
AIは私たちの生活を豊かにするテクノロジーですが、莫大(ばくだい)な電力を必要とします。代表的な生成AIである「ChatGPT」は、1回の利用でGoogle検索の10倍近く電力を消費します。
AIや仮想通貨のマイニングなどに必要なデータセンター向けの消費電力は、2022年の460 TWhから2026年に最大で1,050TWhまで拡大するといわれており、この電力増加規模はドイツ1カ国分に相当します。急増する電力需要を補う手段として注目されるのが原子力発電です。
ウランを燃料とする原子力発電はCO2などの温室効果ガスをほとんど排出しないクリーンなエネルギーであり、脱炭素社会の実現に向けて再評価されています。
2023年にUAE(アラブ首長国連邦)で開催されたCOP28(第28回国連気候変動枠組条約締約国会議)において、「2050年までに2020年比で世界全体の原子力発電容量を3倍にする」との共同宣言が採択されるなど、原子力発電をめぐる情勢に変化の兆しがあります(図表3)。
また、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化によって、エネルギー安全保障の観点からも原子力発電の評価が高まっています。
G7各国のロシアへの依存度を見ると、資源大国である米国とカナダを除き各国の一次エネルギーの自給率は低く、特にロシアと陸続きになっている欧州はロシアへの依存度が高いのが現実です(図表4)。原子力発電はロシアに依存しない有効な電力供給手段として期待されます。
現在稼働している原子炉は438基ありますが、建設中や計画中・提案中を合わせると将来的に現在の倍以上に増加する可能性があります。
特に巨大な人口を有する中国やインド、経済成長に伴ってエネルギー需要が急速に拡大する新興国で開発が進むとみられているほか、通常の原子炉より小型で出力を抑えたSMR(小型モジュール炉)など新しい技術の普及によって世界で開発が加速する可能性があります。
AIとウラン、それぞれをマルっと捉える投資
7月25日に2本のETF(上場投資信託)が東証に新規上場しました。先進国のAIおよびビッグデータ分析事業を行う企業に投資するグローバルX AI&ビッグデータ ETF【223A】と、世界のウラン採掘および原子力関連部品製造に携わる幅広い企業に投資するグローバルX ウラニウムビジネス ETF【224A】です。
AIに関連する産業は大きく三つに分けられます。開発に使われる半導体機器やデータセンターなどのハードウエア、AIサービスを提供するためのプラットフォームとなるクラウド、そしてAIを組み込んだソフトウエア・製品の三つです。AIの発展によってこれらに関連するさまざまな企業でビジネス機会の創出が期待されます。
AI&ビッグデータ ETF【223A】は、AI産業に関連する多様な業種から企業を選定することでAIビジネス全体を捉えることができ、市場拡大に伴って高いパフォーマンスが期待されます(図表5)。
一方、(1)生成AIの普及、(2)脱炭素社会の実現、(3)脱ロシア依存、を背景に原子力発電の利用が増加、その結果燃料であるウランの需要も増加しています。
これら三つの理由による需要増加に伴ってウランのスポット価格は上昇しており、ウラニウムビジネス ETF【224A】の対象株価指数もウランの動向に合わせて新たな上昇局面に入っていると考えられます(図表6)。
これら2本のETFの売買単位は1口、基準価額は約1,000円と少額から投資できるため、積立だけでなく複数銘柄との分散投資に活用できます。2本ともNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)成長投資枠の対象銘柄です。ETFの詳細について、以下の動画で解説しています。ぜひご視聴ください。