正解は:【1】と【5】

 優待廃止を発表する可能性が高いのは、【1】と【5】です。

【1】業績や財務が著しく悪化している企業

 業績や財務が著しく悪化している企業は、配当金の支払いをやめて「無配」に転落することがあります。そういう企業が株主優待を廃止するのは、当然です。

【5】「株主平等の原則」に反すると見なされる優待を提供している企業

 近年、業績も財務も好調なのに、突然、優待を廃止して驚かれる企業があります。そういう企業が、口をそろえて言うのが、「株主平等の原則に反するため」という廃止理由です。どういうことでしょうか?

 上場企業は、会社法の規定で「株主平等の原則」に従う義務を負っています。株主平等の原則とは、「自らの株主を、その保有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱わなければならない」とする原則です。

 ここで重要なのは、「保有する株式数に応じて」平等ということです。10人株主がいたとして、10人が1人ずつ平等に扱われるという意味ではありません。10人が保有する「100株当たり」の権利が平等でなければならないという意味です。

 普通株式1,000株保有する株主は、100株保有する株主よりも10倍の経済メリットを受けなければ、保有する株数に応じて平等、とは見なされません。配当金は、株主平等の原則に従っています。

 1株当たりの配当金が200円ならば、100株保有する株主は2万円の配当金を受け取る権利が得られますが、1,000株保有していればその10倍の20万円を受け取る権利が得られます。保有株数に応じて増減するので、株主平等の原則に従っています。

 ところが、株主優待はそうなっていません。株主優待制度は、小口投資家(主に個人株主家)に有利、大口投資家(主に機関投資家)に不利な内容です。そのため、機関投資家には、株主優待制度に反対しているところが多数あります。

 小口投資家を優遇する優待が全て、平等の原則に反すると見なされるわけではありません。自社製品やサービスを優待品として贈呈する企業は、株主平等の原則に違反していないと見なされる可能性が高いといえます。

 優待を実施している多くの日本企業は株主を潜在顧客と捉え、自社製品やサービスを優待品として提供しています。自社製品やサービスを知ってもらい販売促進につなげることも狙っています。販売促進に貢献すれば、全社の利益が拡大し全ての株主の利益につながるので問題ない、と解釈されています。

 優待を実施する企業に、小売りや食品、電鉄など消費・サービス産業が多く、自社製品やサービスを優待に提供する例が多いのは、そのためです。