1.最近の株式市場は妙に急いでいる
業績の伸びに比べて最近の株式市場の上昇ピッチが速いのはなぜなのか?
2023年半ばころから、米国株(S&P500種指数)も日本株(TOPIX、東証株価指数)も急ピッチの上昇が続いていますが、株価上昇の背景にあると考えられるEPS(1株当たり利益)の伸びに比べて、株価の上昇ピッチが急速です。
図表1に見られるように、2023年は株価上昇率がEPS成長率を大幅に上回り、2024年については2月下旬時点で早くも年間のEPS予想成長率相当をおおむね織り込んでいます。
また、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ社は2月24日に恒例の「株主への手紙」を公表し、その中で「米国内外の株式市場の高騰はカジノ的」と警鐘を鳴らし、「魅力的な新規投資機会は乏しい」としています。これほど急ピッチで上昇してきたのはなぜでしょうか?
2024年は11月に米大統領選挙を控えていますが、今回はさまざまな不透明要素を抱えているようです。
株式市場は不透明要素を嫌う傾向があるため、米大統領選挙が近づく前に今年の相場をやり切ってしまおう、つまり、年前半に行きつく水準まで買い切ってしまおうというような見えないチカラが働いているように感じます。全くの個人的な「勘」の域を出ませんが、そんな感じがしてなりません。では、その米大統領選挙を分析してみましょう。
[図表1] 米国株(S&P500)と日本株(TOPIX)の推移
2.共和党候補者はトランプ氏になりそうだが
共和党の大統領選候補者選びはトランプ前大統領が独走中
米大統領選挙は、米2大政党の民主党と共和党が、州ごとに開催される予備選挙や党員集会をへてそれぞれ大統領候補を選出し、11月の大統領選挙の一騎打ちを戦う構造になっています。足元は、それぞれの党の候補者を選ぶ段階ですが、民主党はバイデン現大統領でほぼ決まりのようですが、共和党はトランプ前大統領とヘイリー元国連大使の一騎打ち状態になっています。
共和党の候補者選びは1月15日のアイオワ州党員集会で始まりましたが、2月24日にはヘイリー氏が州知事を務めていたサウスカロライナ州で予備選挙が行われ、ヘイリー氏にとって地元と位置付けられる同州でもトランプ氏が圧勝し、ここまではトランプ氏が共和党候補者選出競争を独走している状況です。ただし、敗戦後もヘイリー氏は選挙活動の継続を宣言しました。
共和党の候補者選びは、強力な支持基盤を擁するトランプ氏が盤石の強さを発揮しており、早い段階で共和党の候補者に選出されることが濃厚となっています。この記事が公表される日には予備選挙の集中開催日であるスーパーチューズデー(3月5日)の結果が出ており、事実上、候補者が決定しているかもしれません。
ただし、トランプ氏は前回(2020年)の大統領選挙後に発生した支持者による議会襲撃事件など、さまざまな訴訟を抱えており、今後、法的に大統領選挙に出馬できない可能性があるようです。
しかし、仮にそのような事態に陥れば、予備選挙で勝利したにもかかわらず大統領選挙に立てないこととなるため、トランプ氏の支持者が米全土で再び暴動を起こし、全米で治安が悪化するリスクが高まるなど、先行きが非常に不透明となっています。
[図表2] 共和党の大統領選挙・候補者選びの状況
3.トランプ氏vsバイデン氏の支持率は僅差
2020年の大統領選時はバイデン氏優勢だったが、今回は拮抗(きっこう)しておりトランプ氏がやや優勢
図表3は民主党・バイデン氏と共和党・トランプ氏の支持率の推移です(2020年と2024年)。米政治サイトのRealClearPoliticsがさまざまなメディアによる世論調査などから集計した平均値を発表しています。
2020年はバイデン氏とトランプ氏の支持率にある程度の差があり、優勢だったバイデン氏が最終的に大統領選挙に勝利しましたが、それでも、その後に前述の議会襲撃など、政権移行や世論に影を落としました。2024年は両者の差が前回よりもはるかに僅差であり、しかも、今回はトランプ氏がやや優勢です。
このままトランプ氏が大統領に返り咲いた場合、関税大幅引き上げ、移民対策強化など、既に予想されている政策に加え、未知の政策も十分にありうるため、不透明感が強くなっています。
また、前述したように法的な理由でトランプ氏が大統領候補者に選出されなかった場合は不透明感がいっそう高まりかねません。一方、バイデン氏が勝利したとしても、今回はさらに差が僅差であるがゆえに、前回以上に抗議運動や暴動の起こるリスクが高いと思われます。
このように今回の米大統領選挙は不透明な要素が非常に多く、株式投資家は選挙の時期を避けようとしているように見え、今年は早い時期に稼いでしまおうとしているのではないかと考えています。
ただし、日本株について「バブルの再来?」などといったことが言われ始めていますが、私は「1980年代後半の日本株バブルや2000年ごろの米ハイテク株バブル」のような妥当水準の2倍以上もの水準に上昇したバブルとは全く次元が異なり、「バリュエーションが1~2割高いだけ」と見ており、米大統領選挙による不透明な空気に覆われたとしても大崩れするようなことはないと考えています。
[図表3] 民主党・バイデン氏と共和党・トランプ氏の支持率の推移
<関連銘柄>
NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信(証券コード:1306)
NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信(証券コード:1321)
NEXT FUNDS S&P500指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信(証券コード:2633)
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