資産形成のために投資する場合、どんな資産が適しているのでしょうか。投資というと、一般的には株式、債券、不動産(REIT(リート:不動産投資信託))、金(ゴールド)などの貴金属、原油などのコモディティ、暗号資産といった資産、そして、これらを対象とした投資信託などがあります。

 今回は、筆者が考える資産形成に適している資産の種類についてご説明します。

資産形成に向いている「時間が味方してくれる資産」とは?

 資産形成は一般的に、結婚、マイホーム購入、子どもの教育費、老後資金といった将来のライフイベントなどに備えて資産を蓄積していくものです。ごく最近では一部の銀行で金利が上がり始めてはいるものの、これまでのゼロ金利・マイナス金利政策により、定期預金の金利であってもほぼ0%という状態が続いており、銀行にお金を預けてもお金が増えない状況といえます。そこで考えられるのが、リスクはあるものの、少しでも高いリターンが期待できる、株式などの資産に投資をしていくことです。

 資産にはさまざまなものがありますが、資産形成に向いている資産はどのようなものでしょうか。それは、価値を生み続ける資産が適切だと考えています。

出所:「新しいNISA かんたん最強のお金づくり」(横田健一著、河出書房新社)

 例えば、株式や不動産(REIT)は価値を生み続ける資産の代表例です。株式というのは、その企業が世の中に商品やサービスを提供し、その結果として売上を上げ、利益を生み出すことで、結果的に株主に利益が還元されます。また、不動産は人に貸すことによって家賃収入という形で収入が得られます。

 いずれも大きな価値を生み出すためには時間がかかります。家賃収入の例で考えると、1カ月貸しただけでは1カ月分の家賃しか入りませんが、5年、10年、20年と期間が長くなればなるほど、得られる家賃収入の総額が大きくなります。もちろん途中で退去されてしまうという空室リスクはありますが、それでも長期になればなるほど収入総額は大きくなっていくことが期待できます。

 このように価値を生み出し続ける資産であれば、時間とともに資産価値は右肩上がりに増加し続けるはずです。ただし、株価や不動産価格など、資産の価格(値段)は、価値と常に一致するわけではありません。長期的には価値が上がれば価格も上がっていくことになりますが、短期的には大きく下がってしまうことも考えられます。

 こういった価格変動リスクを受け入れて、しっかり長期的に保有を継続していくことが、資産形成では非常に大切です。

資産形成に向いていない「必ずしも時間が味方してくれない資産」とは?

 次に、筆者が資産形成には向いていないと考える、価値を生み出さない資産について考えてみましょう。金(ゴールド)などの貴金属、原油などのコモディティ、暗号資産などが代表的なものです。

 例えば、金の塊を1kg購入して、30年間保有し続けたとします。1kgの金が3kgに増えることはありませんから、価値は特に変わりません。しかし、金の価格は、需要と供給によって、上がったり下がったりしていきます。結果的に上がることもあれば、下がることもあるでしょう。グラフにすると、次のようなイメージになります。

出所:「新しいNISA かんたん最強のお金づくり」(横田健一著、河出書房新社)

 このような価値を生み出さない資産、つまり時間が必ずしも味方にならない資産は、長期で保有したとしても必ずしも報われるわけではないのです。投資すると、株式などと同様に、大きな価格変動リスクを取ることになるわけですが、それが報われるとは限りません。

 資産形成では、株式などの価値を生み続ける資産に投資していくことが大切なのです。

シンプルに、幅広く分散投資するのがおすすめ

 今回は、さまざまな資産がある中で、長期的な資産形成をしていく際に適切な資産はどのようなものかについてご説明しました。

 例えば、価値を生み出さない資産の例として取り上げた金(ゴールド)については、インフレ時には値上がりするのでインフレ対策として有効だという見方もあります。もちろんそういった一面はありますが、一般的に株式や不動産(REIT)もインフレ時には値上がりしていきますので、インフレに強い資産といわれています。

 こういった観点からも、資産形成では価値を生み出す資産である株式や不動産(REIT)といった資産に、シンプルに投資していくのが適切だと考えています。ただし、個別銘柄を選ぶのは大変ですから、低コストのインデックスファンドを活用して幅広く分散して投資していくのがおすすめです。