トウシル:著書には、
[1]1株当たり利益はどう推移しているのか
[2]増配率は上昇しているのか
[3]配当性向はどの水準にあるのか
という三つのポイントで増配実績を調べる、と書いてありました。

配当太郎:はい。公開されている企業のIR情報や証券会社のホームページなどでチェックできる数値のうち、この3点をチェックしています。

トウシル:例えばですが、実際にどのような順序でチェックをしているのか、実況して教えていただけませんか?

配当太郎:OKです! では例えば、楽天証券のサイトで、私が大事にしている銘柄の一つ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)を見てみましょう。

配当太郎:楽天証券には四季報の情報が掲載されているので、まずは四季報のページを見て、企業概要などをざっと見ます。だいたいどんな企業なのか、概要がつかめたら、企業のHPを別窓で開いておきます。

*以下、楽天証券のログイン後の画面となります。

配当太郎:次はもうすぐ業績財務へ飛んじゃいます。経常利益(通常の企業であれば営業利益)が成長しているか、配当金が増え続けているか、をざっと数年さかのぼりながら見ていきます。

 なるほど、この会社はおもしろそうだな、と思うと、先ほど開いておいた企業のHPへ飛んで、IR投資家情報、株主還元策、中期経営計画などを見ます。

 株主への還元姿勢などに納得がいって、もっと知りたい場合には、IRバンクや四季報の有料サイトへ飛んで、もっと前からの成長度合いを見ていきます。経営計画や企業指針などに納得がいったら、よし、買おう!と思って証券のサイトに戻り、株価を確かめて購入する、というような流れですね。

トウシル:アナリストの分析などは見ないんですか?

配当太郎:見ることは見ますが、それを投資の判断材料にはしません。あくまで情報収集程度です。SNSの情報も同様です。誰かの分析を参考にすると軸がぶれてしまいますので。

トウシル:あくまでもご自身の軸をもとに判断されているんですね。

配当太郎:はい。ただ、証券会社の口座はメジャーどころはほとんど開いています。それぞれ、見方や探し方において、自分に合う、合わないがあるので。さらに、今は各社、さまざまな新しいサービスを提供しているので、そこも見落とさず、賢く使い分けていくようにしています。

トウシル:「高配当銘柄だからといって、ランキングからは買わない」、と書籍に書いてあったのが印象的だったのですが、こうやって、実際に探し方を見せていただくと納得します。

配当太郎:そうなんです。高配当だからといって買うと、その時の瞬間風速でしかなかったりするので、失敗することもあると思います。私としては、ココなら信じられる、という増配銘柄を買い続けて、結果的に取得単価で見たら高配当利回りになってました、というのが一番理想的ですね。そうなると、株価もおそらく上がっているはず。樹木も成長しているし、果実もたくさん実っている状態になれると思います。

トウシル:今保有されている増配銘柄のうち、最も「愛してる」銘柄は何ですか?

配当太郎:好きなのは、先ほど挙げた三菱商事 (8058)三菱UFJFG(8306)KDDI(9433)、です。最も利益を連れてきてくれる、いわゆる「地盤銘柄」と私は呼んでいます。

トウシル:それぞれ、どういうところがお気に入りなのか、教えてください!

配当太郎:三菱UFJFGは、2008年の、リーマン・ブラザーズの破綻から1週間後というベストなタイミングで、モルガン・スタンレーへの巨額出資をし、持ち分法とはいえ、結果的にグループ傘下に組み込んだ、という判断力、行動力が一番スゴイと思っています。

 あれがあったからこそ、さまざまな金融ノウハウを手に入れて、グローバル展開の足掛かりをつかむことができた。他のメガバンクとは違った将来性を築くことができたと思って、高く評価し、信頼しています。

 三菱商事は、島国である日本にとって、なくてはならない企業。今後の日本でも必ず居場所を確保して活躍し続けると思っています。今から投資しておいて損はない企業の一つです。

 そしてKDDI。参入障壁が高い通信企業の中では業界2位ですが、NTTに比べると民間色が強いところに魅力を感じています。KDDIは20期以上の連続増配を実現していて、株主還元志向の強い企業の一つです。

トウシル:なるほど…。初心者にとっては株価も高く、なかなか手を出しにくいディフェンシブ銘柄だと思うのですが、まずは最初の「雪塊」を作って、コツコツと買いためていくことで恩恵にあずかれるかもしれませんね。

配当太郎:はい。最初は小さくても、まずはとにかく「買う」ということ、そしてそれを習慣化する、ということで配当生活への第一歩を踏み出すことができると思います。

トウシル:では最後に、トウシル読者へアドバイスをいただきたいのですが、まずは、まだ投資を始めていない方に向けたアドバイスをいただけますか?

配当太郎:少なくとも、配当収入を得たいのであれば、とにかく今すぐ始めたほうがいいと思います。小さくてもいいから、核になる塊をしっかり固めて、毎年毎年、可能な範囲の「年間配当収入」を目標に立てて、収入から投資に回せる額を増やしていくことを始めてほしいです。

 そして、市場の浮き沈みがあったとしても、最低10年は続けてください。「10年かぁ…」と思うかもしれないんですけど、1年ごとに「今年の配当収入」の目標を立てて、実現できるような銘柄に投資を続けていくと10年などあっという間です。そして、10年後には「あの時始めて、本当によかった!」と思うようになると思います。

トウシル:では次に、投資をしてはいるけれど、いまいち利益を上げられていない、という方へ、アドバイスをいただけますか?

配当太郎:今私は、増配投資が性に合っていると思っていますが、ここにたどり着くまでには、デイトレもスイングも優待も、それこそFXも経験しています。投機的にうまくいった投資もありましたが、それは単に市場の追い風があったから、というケースが多く、ストレスなく長く続けることができると思ったのが、最終的に「増配投資」だったんです。

 だから、今のやり方でうまく利益を上げられていない人は、とりあえずさまざまな投資を試してみて、「自分が何に喜びを感じるのか」を試してみるのがいいのではないかと思います。正解はそれぞれ人によって違います。

トウシル:毎年の目標を立てる時、ポートフォリオを見直したり、リバランスなどもするほうがいいんでしょうか?

配当太郎:うーん。私はあんまり…勧めないですね。私自身、銘柄の入れ替えはほとんどやらないんです。なぜかというと、ポートフォリオだの、リバランスだのは、機関投資家や数億円保有している富裕層の考えるべきことで、数百万円や1,000万円程度でやるべきことではないと思うんですよ。

 利益が膨らんでいるということは市場(機関投資家や個人投資家)に評価されているということなので、安易に売却してしまうと二度と気軽に買えない可能性があります。表面上の配当利回りだけに単焦点を当てて「より高い配当の銘柄を!」と入れ替えていくと、気が付くと手元には、稼いでくれない株ばかりが残っていることになりかねません。

 それよりは、どんと構えて、成長力がある、市況に影響されすぎない増配銘柄に淡々と投資を重ねていくことのほうをお勧めしたいですね。

トウシル:本当の意味での「長期目線」が分かってきたような気がします! 本日はありがとうございました!

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