大谷選手を上回る!?テンバガー(10倍株)のパフォーマンス

 早いもので2023年も残すところ後3カ月と少し。現行NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の一般NISAを使って投資をしている人は、そろそろ「あといくら投資できるか」が気になる頃合いだろう。

 年間で非課税投資できる上限額は、一般NISAが120万円、つみたてNISAが40万円。残った投資枠は翌年に繰り越せないため、投資資金に余裕があるなら年内に使い切るのがお勧めだ。

 今回は、株価が10倍以上上昇する「テンバガー(10倍株)」を期待できそうな5銘柄を紹介する。既にNISA口座で高配当銘柄や優待狙いの投資を行っていて、年間投資上限額まで数十万円ほど残っている人にぜひ読んでほしい。

「テンバガー」とは、もともとは米国の業界用語(相場スラング)の一つである。英語では「Ten-bagger」と表記するが、「bagger」とは野球の「塁打」を意味する。一試合で10塁打(例えるとホームラン×2本と二塁打など)の大活躍をした選手と同じくらいすさまじいパフォーマンスを残した銘柄のことだ。

 大リーグのエンゼルスで大活躍の大谷翔平選手が、今年記録した一試合の最多塁打は、6月28日(ホワイトソックス戦)の9塁打(ホームラン×2本と安打1本)。「株価10倍」がどれだけ難しい記録かがお分かりいただけたと思う。

じっくり狙うベし。日本のテンバガーはこんなにある!

 日本でも10年ほど前から注目されるようになったが、毎年1~2銘柄が「テンバガー」を達成している。2022年は、学校の卒業アルバム制作などを手掛けるマツモト(7901)と、スマホゲームアプリの開発を手掛けるバンク・オブ・イノベーション(4393)の2銘柄が年間での「テンバガー」を達成した。

 ただ、2銘柄ともに株価の上昇が急角度で、短期資金流入などを背景とした少々荒っぽい印象の「テンバガー」だ。

 一方、何年もかけて上昇した結果「テンバガー」を達成した銘柄も実は多い。業務スーパーを手掛ける神戸物産(3038)や、工具通販大手のMonotaRO(3064)、ゲーム大手のコーエーテクモホールディングス(3635)、アニメ製作の東映アニメーション(4816)、海運業大手の川崎汽船(9107)、半導体試験装置大手のアドバンテスト(6857)などが該当する。

 川崎汽船は、高配当利回り銘柄としてもおなじみだ。足元の株価は5,000円台で推移しているが、実は2020年4月ごろは200円台の低位銘柄だった。

 また、アドバンテストは2023年7月18日に2万2,375円の上場来高値をつけたが、2015年10月ごろはわずか800円台にすぎなかった。

 日本最大の時価総額を誇るトヨタ自動車(7203)だって、1974年12月31日時の株価は62.8円(Bloomberg参照)。2023年9月20日の上場来高値2,911.5円と比べると46.3倍上昇している。

 極端な表現をすると、株価は株式分割や増資などを経て変化している。つまり、今年1年間で「テンバガー」を狙える銘柄というのは数少ないが、長い目で見れば、多くの銘柄にその可能性があるということだ。

 さすがにトヨタ自動車のように49年投資を続けるというのは、現行NISAでは無理(一般NISAの非課税保有期間は5年、つみたてNISAは20年)だが、瞬間的なニュースに踊らされることなく、じっくり「テンバガー」を狙う戦略をとってみてはどうだろうか。

銘柄選び、三つのポイントは

 今回は下記3点を重要視して、東証プライム、東証スタンダード、東証グロースの3市場をスクリーニングした。

(1)市場価値がさほど高まっていない

→時価総額300億円から1,000億円

 時価総額が小さい銘柄はこれから成長していく余地がある、と考える。ただ、100億円ほどでは機関投資家が投資対象としないなどのデメリットが生じることから条件を設定した。

(2)しっかりとした業績成長

→売上高と経常利益がともに3期以上連続で、前期比15%増(今期予想含む)

 業績拡大が「継続」していることが重要だ。ある年だけ需要が急増し、前期比で倍の売上高や経常利益をたたき出しても、中長期的な株価上昇は期待しにくい。

(3)まだ投資家にさほど注目されていない

→PER(株価収益率)が30倍以下(今期予想)

 これから注目を集める、つまり「割安」という観点からPERを重要視している。(1)の時価総額とも似ているが、より分かりやすくPERを条件に用いた。

 なお、PERに着目する際は、同じ業種の平均PERを考慮する必要があるので注意したい。医薬品や精密機器、情報・通信業はPERが60倍前後と高めで、鉱業や鉄鋼、銀行業は10倍前後と総じて低い傾向がある。今回スクリーニングした銘柄にこの6業種は含まれていないが、PERで銘柄を選ぶ際は覚えておいてほしい。

 この三つのポイントでスクリーニングした8銘柄の中から、足元の決算状況を考慮した結果、下記の5銘柄を紹介する。

2023年NISA枠を使い切る!目指せ株価10倍の5銘柄

銘柄名 証券コード 業種 株価(円)
(9月27日終値)
コメ兵ホールディングス 2780 小売業 5,590
訪日外国人の需要が復活、前向きなリユース文化浸透も好材料に
霞ヶ関キャピタル 3498 不動産業 6,650
金利上昇にものともせず、不動産コンサルタント事業が拡大中
I-ne 4933 化学 2,869
ドラッグストアでは高価格帯ヘアケア商品の販売が好調
アイドマ・ホールディングス 7373 サービス業 2,152
労働人口減少でDX関連の営業支援サービスの引き合い強い
FPパートナー 7388 保険業 3,415
「金利のある時代」到来でマネードクターに相談殺到か?

コメ兵ホールディングス(2780)

 日本最大級の中古ブランド品リユース店「KOMEHYO」を全国展開している。中古の高級ブランドバックや時計などを買い取り販売する「ブランド・ファッション」事業と、中古タイヤを仕入れ販売する「タイヤ・ホイール」事業を手掛ける。収益の大半はブランド・ファッション事業が占める。新型コロナウイルスの感染収束を背景に、拡大する訪日外国人の需要を取り込む。

 リユース文化は日本にすっかり定着している。物価高による節約志向も追い風となり、中古品ニーズは増加傾向にある。中期経営計画では、2026年3月期まで堅調な増収・増益を見込んでおり、テンバガーへの期待感は高いと考える。

霞ヶ関キャピタル(3498)

 元々主力だった太陽光発電施設などの開発事業は縮小傾向にあり、ホテルや物流施設などを開発する不動産コンサルタント事業を主力に手掛ける。7月には、2023年8月期営業利益予想の上方修正を発表するなど業績は好調に推移している。

 不動産関連株にとって、金利上昇は借入金利の負担増加や不動産価格の下落につながるため、事業環境の逆風となりやすい。ところが、同社が4月に発表した資料には、昨年12月に日本銀行が長期金利の変動許容幅を拡大したことに関して「影響は限定的」と説明しており、安心材料といえる。

 仮に、早期の「金融緩和方針の転換」が株式市場の話題となり、不動産株全体が売られ、同社もつられて値下げした際は株価が下がった「押し目」を狙っていきたい。長い目で見ると、「金融緩和方針の転換」は、日本経済の正常化につながることから、同社にもプラスの材料と考える。

I-ne(4933)

 シャンプーや美容家電などを主力に手掛けており、「アイエヌイー」と読む。今後は主力事業の拡大を軸に、化粧品の新規事業も開拓し成長を目指す計画だ。2022年12月期の売上高は353億円。2025年12月期の売上高は550億円、営業利益率13%、2030年12月期には売上高1000億円、営業利益率15%という目標を掲げている。

 同社主力の植物由来シャンプー「BOTANIST(ボタニスト)」の価格は1,500円程度。国内ドラッグストア市場では1,000円以上の高価格帯シャンプーの販売が伸びており、ヘアケア事業は好調に推移している。安売り競争で売上を伸ばす戦略とは異なり、ブランド力で勝負し結果を出していることが同社の強みと言えよう。

アイドマ・ホールディングス(7373)

 中小企業向けに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した営業支援サービスを主力に手掛ける。最近は「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにすること」という意味合いを持つDXが一般的なビジネス用語として定着しており、同社が手掛ける事業の引き合いは非常に強い。

 とりわけ、人材不足を経営課題とし、DXのノウハウにも乏しい中小企業からのニーズが高い。労働人口の減少を成長の機会と捉えており、これからの日本経済にマッチした企業と言えよう。DXという高いテーマ性への期待感が先行した反動もあり、足元の株価は年初来安値圏で推移しているが、中長期的な目線では拾いどころと捉えたい。

FPパートナー(7388)

「マネードクター」のブランドで、ファイナンシャルプランナー(FP)が生命保険や資産運用の相談を受け付けるサービスを手掛けている。

 2024年には、日本の金融政策が転換する可能性が高まっている。今後、契約している住宅ローンの変動金利が上昇した場合、変動型から固定型への変更や、生命保険の見直しなどさまざまな相談が自然体で増加すると考える。

 同社は営業担当などの採用を強化しており、こうした需要増加への対応を着々と進めていると推測する。

 物価が上昇し、マンションの価格や株式が上昇するような環境は、20代から40代にとってほぼ初めての経験だ。今後到来する可能性が高まっている「金利のある時代」は、同社のビジネスチャンスが拡大するタイミングと言えよう。