40代後半、働き盛りでFIREした理由

トウシル:ところで、ペリカンさんは2018年、40代後半の働き盛りで、会社を辞めて配当で生活する、いわゆるFIRE(Financial Independence[経済的自立], Retire Early[早期退職])をしていますよね、妻子あり、しかもお子さんは10代でFIREするには、とても勇気がいったのではないですか?

ペリカン:そう思われがちなんですが、実は大きな決断があってFIREしたわけじゃないんですよ。

 会社員時代は100人規模の中小企業のサラリーマンをしていて、役員に昇格し、会社も上場も目指そうとしているタイミングで、会社を退職したんです。

 上場を目指しているにもかかわらず、事業も今一つ伸びておらず、実は、経営陣の方向性と違和感も感じていて「いったんちょっと会社を離れてみようかな」と思って退職しただけなんです。

 しかし、しばらく休憩して、次に何をするかを考えようと思っていたら、コロナ禍で、世の中が一変してしまいました。

 ただ、時間ができたので、これまでサラリーマンの傍らやってきた株式投資に、ここでしっかり向き合ってみようと思ったんです。株価はひどいことになっていましたが、逆に下がったからこそ買える株もありました。

 ブログでは配当金や優待、収支などを包み隠さず公開しているのですが、配当以外にも、売却益があったり、ブログの収入もあったりして、なんとなく生活できていることに気が付いてしまったんですよ。持ち家だし、借金もないし、このままいけるんじゃないかな…と思って、再就職しなかっただけなんです。

トウシル:自然の流れに身を任せた「ナチュラルFIRE」なんですね…。

ペリカン:はい。一大決心もドラマもなくて申し訳ないんですが(笑)。

トウシル:いえいえ(笑)。最近、若い方でもするりとFIREしている方も増えてきており、「案外FIREって身近なのかも…」と思うことも多かったので、時代的にフィットした選択肢の一つなのではと思います。

ペリカン:会社員時代、役員まで上がったので、給与もそれなりにもらってはいたんです。ただ、当時でも年間数百万円の配当金が入ってきていたので「会社はいつでも辞められるな」とも思ってはいました。

 会社員でい続けることに縛りがなかったというか。さらに、投資を始めて25年間、「株って決して危ないものじゃない」ということを、長い時間かけて学べたことも大きかったです。

トウシル:しかし、実際にFIREするなりコロナショック突入で株価が下がり続ける状態なのに、怖くありませんでしたか?

ペリカン:何かあったらすぐ換金できる株は、私にとって現金に近い感覚なんです。「株を始めるなら、生活費の何カ月分かは残して余剰資金で投資をしよう」、という理論も一理あるんですが、私はほとんどフルスイングで株式投資しています。

 保有している銘柄も大企業が多いので、そうそう「何か」は起こらないし、起こったら売却して現金化すればいいだけの話だと思っています。

トウシル:インターネットが普及して、リアルタイムで株価が分かったり、クリック一つで指値ができるなど、株の売買が簡単になった、ということも大きいんでしょうね。

ペリカン:まさにそうですね。株=投機、という感覚はもう古いのでは、と思います。

トウシル:リスク回避は常に必要だけど、過剰な危機感は必要ないということですね。

ペリカン:はい。リスクから逃げることより、将来に向けての種を増やすということの方が大事だと思います。給与以外に資産をどれくらい持っているかで、将来の自分への期待値や、未来の景色は全く違ってくると思うんです。

トウシル:もしかしたら、仕事上で経験する「辛さ」も半減するかもしれませんね。

ペリカン:本当にそのとおりです。今、不正が話題になっている中古車業者も、給与はとても高額だったと聞きます。それだけの給与を得られるのはここだけだ、という意識があると、給与が高額であるがゆえに、上からの指示に従わざるを得なかった、ということも根底にあるのかなと…。

 だから、曲がったことをしないためにも、自分の力で得られる配当などの資産利益は、大きな意味を持つと思います。

トウシル:確かにそうですね。自分を支えてくれるもう一つの柱というか…。

ペリカン:別に高額でなくても、配当収入が数万円程度でも、心理的にだいぶ違うと思うんですよね。そして、仕事をがんばって、入金力を増やそうという意欲にもつながると思います。

トウシル:貯金でも安心はできますけれど、配当はもっと心強いですよね。

ペリカン:はい。毎年続けて入ってくるという安堵(あんど)感は大きいです。今でこそ、数字上でしかないけれど、私が株式投資を始めた時代は、郵便局へ配当を現金で受け取りに行っていました。数万円、数十万円と実際に現金を手にすると、次はもっと増やそうと思いますよ。

トウシル:自分に対する自信にもなりますね。

ペリカン:はい。今も私は別にぜいたくをしているわけではなく、FIRE前とFIRE後での生活レベルはほぼ変わっていません。ただ、株主優待をしているので、ちょっといいフルーツやおいしい肉を、買わずに楽しめる。

 ホテル系の優待もたくさん持っているので、優待券を使って高グレードのホテルに家族で泊まったりもできます。生活費は配当で、ぜいたくは優待で、というハイブリッド投資のおかげで、節約や我慢を家族に押し付けないで、楽しく暮らすことが可能です。

トウシル:若いころに、いろんな失敗や成功を重ねてたどり着いた投資スタイルですね。

ペリカン:はい。ただ、今後は、もっと攻めた投資戦略で、年間約500万円の配当を、1,000万円に持っていけたらいいなと考えています。家族さえ納得してくれれば「ノマド生活(時間と場所にとらわれない生き方)」もしてみたいですね。例えばこの取材も「実は今、ヨーロッパにいます」みたいな自由度があるともっと楽しいと思いませんか?

トウシル:わぁ、それは楽しいですね。資産力があればそれも可能ですよね。

ペリカン:はい。ぜいたくをしたいわけじゃなく、人生の自由度を広げていきたいと思います。そのために、今も、真剣に投資と向き合っているところです。

 自分で決めた投資ルールの一つに「配当の10年分の含み益が出たら売却して利益確定する」というのがあるんですが、今、10年分以上になっているのに売却していない銘柄がけっこうあるんです。

 投資歴の長い私でも経験したことのないインフレに突入しているから、株価がさらに上がる可能性を見越して、売らずに保有しています。コロナショック後、売らずに保有を続けたからこそ、今、含み益が激増していて、株式投資を始めた時のIPO(新規公開株)も大勝利でしたが、私にとっては「今」も大勝利タイムです。

トウシル:世界経済の波に揺られてきた、ペリカンさんならではの言葉ですね!

ペリカン:これから投資を始める人には、「ぜひ長く投資を続けてください」という言葉を贈りたいです。長く続けていると、いいことも必ずあります。途中で辞めるとそこまで積んできた経験もお金も生かせません。ぜひ、人生を投資で豊かにしてほしいですね。

トウシル:心に刻みたい名言ですね。本日はありがとうございました!

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