米国株投資家として多方面で活躍する、たぱぞうさんインタビューの中編をお届けします。今回は、2023年の米国株市場を予想していただくとともに、私たちはどう立ち回るべきかを伺いました。
米国経済はまだまだ成長を続ける
──ここからは最近、米国株投資を始めた、あるいはこれから始めたいという読者に向けてアドバイスをお願いしたく思います。まず伺いたいのは、ここ数年、つみたてNISAなどで、米国株式インデックスファンドの積み立てを始める人が増えています。その人たちの中には「米国株市場が落ち込んでいるのに、このまま積み立てを続けて大丈夫だろうか」と不安に思っている人も少なくないようです。その点はどう思われますか。
たぱぞうさん 結論からいえば、今まで通り、積み立てを続けるべきでしょう。投資を辞めてしまうことは、勧められません。
──とはいえ、2022年はS&P500(S&P500種指数)をはじめ、NYダウ(ダウ工業株30種平均)、ナスダック総合指数(ナスダック)など、米国の株式指数はどれも下落しました。2023年はその動きに拍車がかかる可能性もあると思うのですが。
たぱぞうさん もちろん、ないとはいえません。2022年のS&P500の動きを見ると、2021年の年末には4,800ポイントまで上昇しましたが、現在は3,800ポイントと20%近く下落しています。
しかし、過去の歴史をたどると、2000年のITバブル崩壊や2008年のリーマンショックのときには、単年というわけではありませんが、50%近く下落しました。地合いによっては今後さらに25~30%下落してもおかしくありません。
──もしそうなったら、これまで積み立てた分が半分に減ってしまうのでは?
たぱぞうさん 日本からS&P500などに投資する場合は、為替の影響を受けます。今は円安/ドル高なので、それを加味すると、2022年は大きく資産を減らす可能性もあり得ました。今後も、警戒するに越したことはありません。
──それでも積み立てを続けるべきだと思われますか?
たぱぞうさん ITバブル崩壊やリーマンショックのときには50%近く下落したといいましたが、それは行き過ぎた値付けの修正という側面もありました。その後、経済の回復に歩調を合わせ適正な値付けになりました。コロナのときも同様です。行き過ぎた過熱は持続可能なマーケットの成長によくないのです。
結果的に、値は戻り、そこからさらに上昇を続け、過去最高値を更新しています。米国株市場は1年、2年という単位では上がったり下がったりしますが、20年、30年というスパンで考えると上昇し続けています。そして、それは今後も変わらないだろうと思います。
──米国経済が破綻することはありえないと思われますか?
たぱぞうさん 先進国では珍しく、今後も人口が増え続けると予想されていることなどを考慮すると、破綻を恐れすぎる必要はないと思っています。
──米国経済が破綻するということは、GAFAM、つまりアップルやアマゾン、マイクロソフトなども全滅するということですよね。それが近い将来に起こるとは、たしかに考えにくいですね。
たぱぞうさん そう思います。ハイパーインフレなどもそうですが、極端な意見にくみせず、淡々と投資を続けることです。
一喜一憂せず、粛々と積み立てを続けるべき
──2023年の話に戻りますが、今よりもさらに相場が荒れることはありうるのでしょうか。
たぱぞうさん 私個人の考えをいうと、今と同じような状況がしばらく続くのではないでしょうか。年が明けたら急によくなるということはないでしょうし、ある日を境に大暴落が起こるということも考えにくい。
──S&P500の値もしばらくは横ばいで推移すると思われますか?
たぱぞうさん 専門メディアなどの見解を見ると、強気筋は5,000ポイントを超える、弱気筋は3,000ポイントを下回ることもありうる、と見ているようです。
私は、そのちょうど中間、4,000ポイント前後が妥当なのではないかと見ています。ただ、リスクプレミアムが膨らみにくい環境なので、そこを加味するとアッパー4,000ということになりますね。
──大暴落はないと考える理由は何ですか?
たぱぞうさん 米国政府は、2022年3月以降、インフレを抑制するため、利上げ(政策金利を引き上げること)を繰り返しています。通常、利上げ幅は0.25%なのですが、6月からは4回連続で0.75%の利上げを実施しました。
それが株価下落の大きな要因となったのですが、ここに来てインフレへの取り組みが緩和されるのではないかという見方が広がっています。
実際、この12月にも利上げが行われましたが、今回の上げ幅は0.5%に縮小されました。すでに高値から2割あるいは3割調整していますから、今の水準から50%下落するような要素は少ないとみています。
──なるほど。
たぱぞうさん それと、米国企業の業績を見ると、懸念材料はあるものの大きく落ち込んでいるわけではありません。企業業績が極端に悪化しない限り、ここからさらに50%を超えるような大暴落に発展する可能性は少ないと思っています。
──2023年は企業業績も落ち込むのではないかという見方もありますよね。
たぱぞうさん いつの時代も楽観論、悲観論、両方あるものです。私は好転するにせよ、悪化するにせよ、私たちの生活に多大な影響を与えるような大きな異変が起こる可能性は薄いと考えています。
──いずれにしても、米国株式の積み立てを行っている人は、何が起こっても必要以上に慌てる必要はない。粛々と積み立てを続けるべきだということですね。
たぱぞうさん おっしゃる通りです。それに景気が悪化して株価が下落すれば、安値で仕入れるチャンスが広がります。ですから、タイミング投資を行っている人も、あまり悲観的にならず、前向きにとらえるべきでしょう。ただし、過度に今はポジションを取る局面ではないですね。
関わりのある人の心と財布を豊かにしたい
──たぱぞうさんご自身は、2023年をどう過ごしたいですか。何か目標のようなものはありますか。
たぱぞうさん 投資に関していうと、不動産投資のほうは保有物件を増やしたいという考えがあります。今も探しているのですが、なかなかいい物件が見つからず、難航しています。株式投資のほうは、今、保有している「iシェアーズ S&P 500米国株ETF」を買い増しするか売却するか、くらいですかね。
──個別株投資をするつもりはないのですか? その気になればアリババのように大きく稼ぐことも可能だと思いますが。
たぱぞうさん 勤め人を辞めて独立したとき、自分がすべきことは何だろうと真剣に考え、一つのテーマにたどり着きました。「自分と関わる人の心と財布を豊かにする」ということです。
投資ブログを通して、投資に関心を持つ多くの人たちと出会い、その人たちが幸せになるお手伝いとしたいと考えるようになりました。
そんなことからYouTubeやVoicyを始めたり、勉強会を開いたり、活動の幅を広げ始めたんです。あと、自分自身が新しいことに挑戦し続けたいという気持ちも大きいです。
そうしないと、毎日が停滞しますからね。せっかく独立した意味が薄れてしまうのです。人生二度なしとはそういうことだと私は思っています。
最近出版した「僕が子どもに教えている1億円のつくり方」でも、「今すぐたくさんのお金が必要なわけではないけれど、いずれお金は必要になる」ということや、「億万長者への近道は、時間をかけること」という僕の信念が伝わるような内容となっています。
お金との付き合い方を「知っている」ということと「知らない」ということの差はとても大きいんです。僕の子どもは今、小学校高学年なのですが、お金の大切さ、お金が増える仕組みについては後回しにせず、早いうちから教えていきたいと思っています。
そして、もう大人になってしまった人でも、けっして遅くはないですよね。そのお手伝いができるとうれしいですね。
──自分の投資も大事だけれど、YouTubeの動画を見てくれる人や勉強会に来てくれる人のために、もっと時間や労力を使いたいということですか?
たぱぞうさん はい。もちろん、個別株にも買ってみたい銘柄がありますし、日本株にも興味がないわけではありません。しかし、それらを本格的にやろうとしたら、それなりにリソースを注ぐ必要があります。片手間でできるほど甘くはありませんから。
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