TAVR施術の再開で下期に売り上げ回復へ、自社開発製品の早期承認も追い風

現地コード 銘柄名
02500

杭州啓明医療器械

(ビーナス・メドテック)

株価 情報種類

15.42HKD
(7/19現在)

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 新型コロナ感染の再燃により、中国におけるTAVR(経カテーテル大動脈弁置換術:大動脈弁狭窄症の治療法)の実施は2022年上期に大きく遅れた。ただ、保険適用対象への組み入れといった上海市の支援策もあり、BOCIは下期の実施状況の段階的な回復を見込む。杭州啓明医療器械が開発・生産する人工心臓弁を用いたTAVRに関しては、上期に1,850件、下期に2,950件と推移し、通期では経営陣が示した予想レンジの5,000-5,500件を下回る4,800件になるとみている。一方、TPVR(経カテーテル肺動脈弁留置術)用の自社開発製品「ビーナスP-バルブ」は7月、BOCIが予想した年末より数カ月早く、中国国家薬品監督管理局(NMPA)による承認を取得。2022年中に売り上げに貢献する見通しとなった。BOCIは粗利益率に関する想定値の引き下げと売上高販売費率の引き上げに伴い、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)方式に基づく目標株価を下方修正しながらも、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

 中国の全国介入心臓病論壇によれば、経大腿動脈(足の付け根の血管)からアプローチする方式のTAVRの実施件数は、1-5月に2,350件(経心尖アプローチを含めても2,610件)。このうち1,500件で、杭州啓明医療器械の製品を用いた。下期には段階的に病院の利用状況が回復する見込み。さらに上海市当局が6月15日付で、TAVRの消耗品を保険適用対象に組み込むという朗報もあった。ただ、地域ごとに医療資源や経済水準が異なることから、BOCIは短期的には、全国規模での保険適用は期待しにくいとの見方。また、散発的なコロナ感染や旅行規制の継続、さらには医師向けのオンライン・オフライン混合型研修の効率の低さなどを理由に、TAVRの実施は急ピッチというより、緩やかなペースで回復するとみている。

 一方、中国国内で7月に承認された「ビーナスP-バルブ」について、BOCIは2022年、2023年の販売見通しを80個(修正前はゼロ)、250個(同100個)に上方修正した。この製品の海外売上高については、経営陣が2021年決算の発表時に「2022年に800万米ドル」との見通しを発表済み。2022-2025年に年率平均100%の伸びを見込む。

 BOCIはTAVR製品の販売の遅れを反映させる形で、2022-2024年の予想売上高を下方修正したものの、国内での「ビーナスP-バルブ」の早期の貢献見通しがマイナス部分を一部相殺した。粗利益率に関しては、2022-2024年の予想値を80%から76.6-77.1%に引き下げたが、これはコスト高と海外売り上げの比重の拡大を織り込んだもの。同じく海外要因を反映させる形で、売上高販売費率に関する想定値を引き上げた。

 レーティング面での潜在リスク要因としては、新型コロナの感染再燃や、市場競争の激化、TAVR製品の販売回復の遅れ、新製品の研究開発プロセスの遅れなどの可能性を挙げている。