ロシア絡みの減損で2022年上期に3億米ドル超の赤字見通し、航空市況の回復に期待
現地コード | 銘柄名 |
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02588 |
中銀航空租賃 (ビーオーシー・アビエーション) |
株価 | 情報種類 |
65.00HKD |
株価 企業情報 チャート |
中国銀行(03988)傘下の航空機リース大手、中銀航空租賃はこのほど、ロシア情勢に絡む多額の減損処理を理由に、2022年6月中間決算の業績警告を発した。ロシアの航空会社向けにリースしている機体17機について、帳簿価額8億360万米ドルをゼロに減額するのに伴い、中間期に3億1,000万-3億3,000万米ドルの純損失を計上する見込み。BOCIはこれを受け、減損を反映させる形で、2022年通期の利益見通しを下方修正した。ただ、減損の計上はあくまで一時要因であるとし、世界の航空業界の復調と航空機の供給過剰感の解消により、同社が向こう2年にわたって力強い利益成長局面に復帰すると予想。新型コロナ関連の規制緩和に伴う海外渡航の段階的な自由化で、世界航空市場の回復トレンドが2022年、2023年と続き、同社の追い風になるとした。目標株価を引き上げ、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。
EU(欧州連合)や米国、英国、シンガポール、その他一部諸国がロシア企業との取引関係に影響する対ロ制裁を課したことを受け、同社はロシアの航空会社との18機のリース契約を打ち切った。この18機の簿価は総額9億3,500万米ドル。同社の航空機資産全体の4.8%(簿価ベース)が影響を受ける形となった。このうち、現在もロシアに滞留している17機については、もはや回収困難であると判断。6月30日時点で簿価8億360万米ドル分をゼロに減額するとの決定に至った。現金担保2億2,290万米ドルを差し引くと、税引き前の正味評価損は5億8,070万米ドルになるという。
一方、世界の航空業況の回復は2022年下期以降も続く可能性が高い。国際航空運送協会(IATA)によれば、世界のRPK(有償旅客キロ:旅客輸送実績の指標)は2022年に前年比でほぼ倍増し、コロナ前の2019年の82%相当まで回復する見込み。渡航制限の緩和・解除や航空路線の運航再開に加え、コロナ禍での貯蓄の増加や低失業率が国内外の旅行需要を喚起する。IATAは2024年に世界のRPKがパンデミック前の水準を完全に回復すると予想。また、2022年の世界業界全体の純損失が97億米ドルに縮小する見通しを示している(2020年、2021年の純損失は1,380億米ドル、420億米ドル)。
BOCIは過去の例を踏まえ、「航空会社は業況が底を打つと、機体の買い替えサイクルを加速させる傾向にある」と指摘。世界的な航空機体の供給過剰感の緩和や同社の手堅いビジネスモデルを理由に、2023年には純利益が急回復するとみる。また、ロシアビジネスを取り巻く不透明感はこれでほぼ払拭(ふっしょく)されたと指摘。目標算出ベースを2022年予想PBR(株価純資産倍率)1.1倍から1.25倍に上方修正し、目標株価を引き上げた。1.25倍との数字はコロナ前の2019年の平均PBRに当たるという。一方、レーティング面の潜在リスク要因としては新型コロナウイルスの変異により、抗体をすり抜けやすく、より重篤化しやすい変異株が生まれる可能性を挙げている。