ディフェンシブ性に優れた製薬大手、新規製品や海外事業が新たな成長エンジンに

現地コード 銘柄名
02196

上海復星医薬集団

(シャンハイ・フォサン・ファーマスーティカル)

株価 情報種類

31.80HKD
(7/5現在)

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 BOCIは上海復星医薬の目標株価を大きく引き下げながらも、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。同社がライセンスイン(他社からの開発権の導入)した新型コロナウイルスのmRNAワクチン「BNT162b2」 (日本で言うファイザー製ワクチン)については依然、中国国内で承認が得られるか未知数だが、同じくライセンスインしたCAR-T療法(がん免疫療法の一種)の「イエスカルタ」(Yescarta)の普及や濾胞性リンパ腫(FL)への適応症拡大による販売増、コロナ治療薬Paxlovidとモルヌピラビルのジェネリック薬による中期的な売り上げ貢献など、新製品による業績上振れの可能性があるとみる。また、同社の製薬ビジネスは長期の安定的な利益成長が期待できると指摘。世界市場の混乱が続く中、同社はディフェンシブ性で際立った存在だとしている。

 中国有数の製薬大手である同社は幅広い治療領域で豊富な研究開発パイプラインを持つバイオファーマへの転身を進めている。BOCIは新規製品や海外ビジネスに重点をシフトする中での同社製薬部門の安定的な増収を予想。傘下の上海復宏漢霖生物技術(02696)の差別化製品であるPD-1阻害薬Serpulinaや、海外子会社Gland Pharma、Sisram Medicalなどの売り上げ増が寄与するとみる。一方、中国国内の集中調達制度によるジェネリックやバイオシミラー(後発品・後続品)への影響は限定的であり、その影響はすでに株価にほぼ織り込まれたとみている。

 イエスカルタは5月末現在、約50種を数える民間の医療保険プランや32種の「恵民保」(少額の負担で加入可能な保険商品)プランの適用対象となっている。BOCIはCAR-T療法をカバーする保険の加入者でのイエスカルタが普及するとみて、2022年の売上高が大きく上向く可能性を指摘している。

 新型コロナワクチン「BNT162b2」に関しては、中国国内で認可が得られるか不明だが、BOCIはコロナ治療薬の製造業務が2023年の売り上げ成長を後押しするとの見方。中期的に成長エンジンになるとみている。

 BOCIは「BNT162b2」の国内承認を取り巻く不確実性を理由に、2022-2024年の予想売上高を0-4%減額修正した。また短中期的な資金調達市場の冷え込みを反映させる形で、2022年の投資損失見通しを増額し、これに伴い予想純利益を下方修正した。

 現在株価の2023年予想PER(株価収益率)は13倍と、製薬銘柄の平均である同20倍を下回る水準。BOCIはSOTP(サムオブザパーツ)方式に基づく目標株価を大幅に引き下げながらも、株価の先行きに対して強気見通しを据え置いた。

 レーティング面の潜在リスク要因としては、新製品販売が予想を下回る可能性や、主要製品候補の治験の失敗、中国国内での「BNT162b2」の商用化の失敗、経営陣の入れ替え、金融投資の損失計上などの可能性を挙げている。