THE S&P 500 MARKET: 2020年11月
2020年のトップニュースである新型コロナウイルスは、11月の最終週まで注目の話題となり続け、「感染拡大vs.治療薬」というテーマが新たな関心を集めました。従来のMerger Monday(M&Aのニュースを受けて月曜日に相場が動くことが多い)はVaccine Mondayに取って代わられ、3週連続で月曜日にワクチン関連のニュースが発表され、16日にはS&P 500指数が初めて終値で3,600を突破して終値での最高値を更新しました(3,626.91)。
同日、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)も終値での最高値を更新しました(29,950.44)。市場の関心は新規感染者数および入院者数の最多記録更新や期待外れとなった経済指標よりも、ウイルス治療薬と経済成長率に集まりました。経済指標の中でも住宅市場は例外で、買い手の増加と売り手の不足により活況が続いていますが、対照的に石油は供給の増加と需要の減少という問題に直面しています。
その後、話題は新型コロナウイルスワクチンから、トランプ大統領の政権移行手続きの開始容認へと移りました。トランプ大統領は引き続き選挙結果に異議を唱えており、敗北宣言はしていませんが、バイデン次期大統領は閣僚や補佐官といった主要人事を発表し始めています(多くは上院での承認が必要です)。バイデン氏が発表した閣僚リストには馴染みの名前が並んでおり、米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のジャネット・イエレン氏が財務長官に指名されるなど、バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権時代の要職者が多く含まれています。
2021年1月5日の決選投票後も上院は引き続き共和党が支配するとみられ、ねじれ議会が続く見通しですが、「既知」と「従前」への回帰は予測可能性の向上につながるため、市場の反応は良好で、株式市場は過去最高値を更新しました。S&P 500指数は24日に3,635.41、27日に3,638.35を付け、年初来での最高値更新は26回目となりました。ダウ平均は史上初めて3万ドルの大台に乗り、終値での最高値を更新しました(30,046.24ドル、年初来で9回目)。S&P 500指数は11月に10.75%上昇し、11月の上昇率としては1928年以来の最高となりました(1928年11月は11.99%上昇しましたが、翌1929年は11月としては過去最低の13.37%の下落でした)。同指数は27日に付けた最高値から0.46%下落し、年初来で12.10%高の水準で月末を迎え、歴史的に最も好調な12月(過去72.8%の確率で上昇)に入りました。
12月の市場は、治療法確立か感染拡大か、あるいは(良きにつけ悪しきにつけ)従来型で予測可能性の高い政府への回帰か年末の利益確定かといった、さまざまな思惑が交錯する動きになると予想されます。