※本記事は2018年取材し公開したものです。
売った値段よりも高い値段では買わない。下がるまで待つ
今こそ株主優待名人と呼ばれる桐谷広人さんですが、将棋の棋士として活躍していたバブルの時代は上昇相場を追い風にして、信用取引によって利益を得たものの、その後の大暴落に巻き込まれてかなりの財産を失い、株主優待品のお米と豆腐で食いつないだりという山あり谷あり、七転び八起きの株式投資人生を過ごしてきました。
「そこから得た教訓は、優待株を買って長く保有すれば毎日が平穏に暮らせるということです。現在は株主優待銘柄を1単元ずつ800銘柄ほど保有しています。株価が上がっても下がっても気にしません。なぜなら売るつもりがないからです」
普通の投資家は株価が大きく上昇すると、売って利益を確定したくなるもの。もし売ったとき、桐谷さんならどうしますか?
「優待品が気に入って保有した銘柄なので買い戻しますが、売った値段よりも高い値段では買いません。値下がりをするのを待ちますね。それとは逆に買った値段よりも株価が下がったときは売らずに保有し続けます。毎年株主優待品が受け取れるので、株価の動きはあまり気になりません」
たとえば王将フードサービス(東1・9936)は、株価が4,200~4,300円(1単元では42万~43万円)で売って利益を確定しました。その後、1単元で40万円まで下がったら買い戻すつもりだったのですが……。
「売った後も株価は上昇を続けて5,000円を超えてしまい、買い戻すことができませんでした。売らないほうが良かったかな」
桐谷さんが株価よりも気にしているのは「優待内容の変更」です。こんな2つの例を教えてくれました。
宅配寿司「銀のさら」のライドオンエクスプレスホールディングス(東1・6082)は2016年11月、優待券5,000円分を2,500円に、魚沼産コシヒカリ5kgを2kgに変更しました。株主が増えた結果、 優待の原資となる販売促進費が増えて営業利益を減少させたことが理由でした。そのためか、株価は下落。
ブックオフコーポレーション(東1・3313)は2017年1月、優待内容を拡充する発表をしました。買い物券1,000円分を2,000円分に増すといううれしい内容でしたが、同じ日に業績不振を理由に配当予想を25円から10円に下げました。1単元で計算すると、買い物券は1,000分増えたものの、配当は1,500円減ってしまいました。業績に問題があるせいか、やはり株価は下落。
桐谷さんは800銘柄も保有しているので「すべての株価や会社の発表内容、業績をチェックすることはできない」そうですが、名人を目指す個人投資家はやはり保有銘柄の優待内容の変更、業績、株価の動きは定期的にチェックしたいもの。